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今月のエッセイ(2017年3月)

   山を望む
 草津市コミュニティー事業団の広報誌「コミュニティーくさつ」のコラム「徒然草津(つれづれくさつ)」の筆者、Kさんは「草津の空は広い」と言います。私は草津の前には東京や大阪に住んでいましたのでKさんの言葉には全く同感です。
 東京でも足を伸ばせば奥多摩や場所によっては富士山も見えましたし、大阪では生駒山、遠くは六甲の峰々が望めましたが、そのつもりでないと見えないものです。
 草津では毎日が比叡山とのお付き合いです。起きて最初に目に入るのが比叡山ならば寝る前にちょっと見るのも比叡山。毎日見るのは天気予報をしてくれるからです。全体がはっきり見えれば文句なしに晴、雨が降りそうな時には輪郭がぼやけたり、姿を隠したりします。雨が止みそうな日には山麓を隠すように薄い雲が横にたなびいていますが、その上から山肌が薄い雲から透けてきて姿を見せ、やがて雨が止みます。比叡山気象台の役目は昼だけではありません。山頂に近い灯りがはっきり見える夜の次の日は晴、見えない夜はもちろん天気が崩れるサインです。 
冬の寒い日には木の梢にだけ雪が積もるのか、薄らとした雪景色になりますが、寒さの強い朝には真っ白。わが家の庭にも雪が積もります。春や夏にはびわ湖の高い湿度のためかぼんやりと見える日もありますが、夕焼けの日は山の上の空には黄金色の雲がたなびき、そこに真っ赤なあるいは赤紫の雲が流れ、お日様はしずしずと山の向こうに落ち、その荘厳な夕焼けを見送って一日は終わります。そして、明け方の空には消えそうな月。秋、山肌の色が黄色くまたは赤くなるので山の木のどれかが紅葉しているのが分かります。
比叡山から北に連なっているのが比良山とよばれる山波です。滋賀県には昔から「近江八景」と呼ばれる名所がありますが、その一つに「比良の暮雪」があります。春になっても山頂付近に雪が残っている比良を遠くから眺めた風景ですが、春のお彼岸にスキー場で営業ができるほどの雪がある年もあれば、山頂に白いものがやっと認められるような年もあります。
関西では奈良の「お水取り」が終わると春がくるといいますが、滋賀では3月26日の「比良八講(ひらのはっこう)」が済むと、本格的な春がやってくると言われています。これを「比良八講荒れじまい」と呼びます。この日はなぜか雪がちらついたり、強い風が吹いたりしますが、みな口々に「比良八講」だから仕方ないかなどと言って襟を立てたり首をすくめたり。「比良八講」とは、比良山から取った水を修験者や延暦寺の僧侶らが湖面に注ぎ、 物故者の供養や湖上安全を祈願する法要を言います。
私の家の近くには川が流れていて、その堤にはびわ湖まで二キロほどのサイクリングロードが走っています。びわ湖に向かうと、左には比叡山や比良山系、右にはその形が美しいので「近江富士」と呼ばれる三上山が見えます。標高は432mといいますが、山頂が丸っこい姿が可愛い山です。山麓にはこの山をご神体とする神社、御上神社があり、お正月には初日の出を見る人がたくさん登るということです。遠くから帰ってきてこの山を見ると何となくほっとするというか、口元が緩むのを感じるのですから我ながらおかしいのです。サイクリングロードを先に進むと、冬だけですが、伊吹山、さらに北のほうで白く光っている白山を望むことができます。
そうそう、南を望むと近所の家や遠くのマンションに遮られていて全体を見渡せませんが湖南アルプスといわれている山々が目に入ります。花崗岩が露出する山肌、仏教遺跡などがある絶好のハイキングコースになっているそうですが、私は行ったことがありません。
勤め人の常とし何回もの転居を繰り返してきましたが、草津に住んで三十余年。広い空、びわ湖をとりかこむ穏やかな姿の山々。そして毎日眺める比叡山。今夜は山の灯りがはっきりと見えます。明日はお天気が良さそうです。
2017年3月
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