goo

【214】キャベツの修道院・無知亡米・十字群

 主食がポップコーン【99】へと一変したことで痛手を受けた米穀量販店は、米【25】の輝きを失うという取り返しのつかない無知亡米を自覚するため、米から光を表す斜印を一筆ずつ切り捨て、十字を標榜するに至った(一説には〈米〉が光輝として讃えられる一方、肛門の皺として蔑まれていたためだとも言われている)。これが俗に言うキリステ教の成り立ちである。米穀量販店は十字群を名乗って布教を始め(このとき、米を量り売りするための記数法を十神法に統一した)、十二面の全域を十字路で結んでグリッド状に構成すると、組織を再編成して区画の維持を目的とする区役所【106】をおいた。いまや世界中に十字が遍在するようになり、円を無数に含んでなにごとも丸く収めようとする不定形な海は上陸の企てを諦めた。誰もが象徴であるトンボの化石、つまり十字架を身につけていた。小さな螺子を締める時にも十字が顕現した。
その一方で、神のおわす十字の中心を求める僧侶【10】たちは、大がかりな十字群厭世を行って世俗を離れ、地下洞窟【4】やキャベツの修道院に身を潜めることとなった。紙面【32】の境界に自生するキャベツの修道院は、葉を何層にも重ねて結球する巨大な植物である。僧侶たちの質素かつ豊富な食糧として、また外敵から庇護してくれる住居として活用されており、祈りを受けると淡黄色の十字の花を無数に咲かせる。修道院の周囲では、大僧正たちが鉱脈に頭部をめり込ませ、食糧不足によるパニック状態から人々を救済するために、パン【27】を尻からひりだす聖餐の儀式に努めている。
僧院から供されるのはパンばかりではない。体重十トンを超える偉大なる大僧正ともなれば、大勢の僧侶を使って肥大した下半身に塩を擦り込ませ、煙でいぶして燻製にすると、生きながらにスライスした御身を皆に分け与えてくれるのだ。

リンク元
【204】彼女たちは激戦の中に散っていった【106】区役所・分化大革命【99】ポップコーン【三○】空間が赤く滲んできた・名も知らぬお隣りさん【19】虫垂

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 【213】下水道... 【215】蟻を配偶 »