取手通信・医学情報社 山本 嗣信 (やまもと つぐのぶ)

医学情報社編集顧問
フリージャーナリスト

「疑似恋愛」

2017年07月08日 11時28分02秒 | 未来予測研究会の掲示板
恋愛経験が少なかった元水信夫は、ある時期、フィリピンパブにはまった。
初めはアルバイト先のぱFAK通信社から、徒歩約5分の蔵前駅に近い地下一階の「ワクワク」。
元水を呼びとめたのは、真っ赤なボティコンスーツのエミリーだった。
「どこへ、行くの?」と背後から声をかけられた。
相手は地下から客引きに現れたのだ。
相手の要望は元水の好みではなかったが、誘いに応じた。
「指名いいね。1000円だよ」階段を先に下る女は振り返る。
店は想いのほか広く、ステージで歌手が歌っていた。
なかなか上手い。
「わたし、エミリーだよ。あなたは?」
「元水」
「ゲンスイ?変わった名前だね」
競輪仲間の宮坂虎之助が「ゲンスイ」と呼びかけるので、アルバイト原稿のペンネームとしたのだ。
宮坂曰く「山本元帥を連想させる」そうなのだ。
実は利根輪太郎の父親が山本元帥に容貌が似ていた。
オシボリとブラディー、氷のセットを運んで来たアグネスが元帥の好みであった。
エミリーは敏感に察知して、「アグネス、私1人でいいよ」言うのでアグネスは元水の脇に座るのを止めた。
店には既に5組の客が居た。
元水が座る向かいの客は、タガログでカラオケを歌い出した。
「あの人。タガログ語、本当に上手ね」エミリーは舞台を注視していた。
エミリーは、元水の指をマッサージしながら言った。
「わたし、あなたのカベットになるよ」
「カベット?」
「愛人ね」
「愛人か、それもいいね」
エミリーの同室に暮らすジョナは、エミリーの招きで元水の脇に座る。
「ワクワク」のビル2階と3階に10数人ホステスたちが暮らしていた。
ジョナはエミリーと同じダンサーであった。
ショータイムとなり、エミリーたち6人のダンサーが派手な身ぶりで踊った。
ジョナの腰の動きが一番セクシーであった。
「パガコ アコイ パバリック」
「何?」
「パガコ 約束、あなた、また来るね」
エミリーは元水の指を自らの太ももに導いた。
さらに、元水の指をとらえ直して、指きりゲンマンをした。
「フィリピン式、ゲンマンはこれ」
ジョナが元水の手を握手のようにとった。
そして、2度、3度力強く上下に振った。
エミリーは再度、念を押すように「パガコ アコイ ババリック」と言って微笑む。
「店、明日休みだよ。ゲンスイ、デート私とするね?」
「いいけど」
翌日の午後3時に、蔵前駅で待ち合わせをして、元水はエミリーと浅草へ向かった。
ジーパン姿で赤いティーシャツを着たエミリーは、フィリピンの田舎娘そのもので、厚化粧を落としており、浅黒い顔立ちとなっていた。
声量豊かな高音で「慕情」を英語で歌っていた歌手のアグネスの舞台姿。
スペイン系のアグネスのエキゾチックの顔立ちが脳裡に浮かんだ。
今日のデートはあくまで「疑似恋愛」。
それなら、エミリー相手よりアグネスの方が好ましかったのだ。
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 7月6日(木)のつぶやき | トップ | 7月8日(土)のつぶやき »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL