取手通信・医学情報社 山本 嗣信 (やまもと つぐのぶ)

医学情報社編集顧問
フリージャーナリスト

不可思議な文子と島田の関係 3)

2017年01月30日 22時51分46秒 | 創作欄
食事のあと、文子は自身の生い立ちなどについて話したが、近年の数年間、つまり4年間の女子大学時代のことについては空白のままにしておいた。
気付いたたら電車の終電の時刻は過ぎていたのだ。
「私のアパートに来ない。明日は土曜日だし、今夜は徹夜で語りあかしましょうね」と文子は言った。
思わぬ展開になったものだ。
ハチ公前の通りでタクシーに乗ろうとするが、タクシーの大半がすでに客を乗せていた。
二人の間に割り込むようにして、水商売らし女が客らしい男ともつれるようにタクシーに乗り込んだ。
「私、水商売にも興味があるの。でも、水商売は27、8歳になっても出来るとおもうの。若い女性がするののじゃないえわね」
文子は、夜の女たちに冷やかな視線を投げ掛けた。
大きな瞳が細くなって、その時の文子が意地の悪い女にも映じた。
文子の薄化粧の横顔は、車のライトに青白く浮かびあがって見えた。
島田は、その横顔を見て、「いつかこの人のために立ち上がれないほどの苦しみを味わうのではないだろうか」と不吉な予感に襲われた。
文子はタクシーに乗ると全く無口ととなり、背筋を伸ばすように座り前方を見据えるようにしていた。
「島田さん、私は、貴方がどんな人か知らないの。もし、どんな人か知ってしまったら、私は貴方から離れていくと思うの」
島田は文子の言葉が理解し難く沈黙した。
「これも何かの縁でしょ。だからいいわね。お友達でいてね。良いお友だちで」文子は島田の心を確認するように、島田の横顔を凝視した。
島田は「お友達なのか」と文子からキッパリとした口調で諭されたような思いがした。
「・・・・」
「どうして、黙っているの?」
「友達でいましょう」
「ああ、私の気持ち分かってくれたのね。貴方のこと、信頼していいわけね」文子は表情を和らげながら、島田の手を握り締めた。
島田はその手を握り返した。
「貴方だから聞くの。西田さんと私、似合うと思う」
「西田さん?先輩の西田さんのこと」
「そう、西田さんと私、正直に言ってみて」
島田は、文子の横顔を流し目で見た。
文子は西田への思いを深いために息に込めた。
「西田さんとは、一番親しいけれど、君のそんの質問にどう答えればいいのだろう」
「彼が欲しているものを、私は持っているの」
文子の言うことは、あまりにも唐突であり、具体的に何を文子が言いたいのか理解ができなかった。
こんな時の処し方を島田は実際知らなかった。
女性と交際したことがない島田には、戸惑うばかりであった。
文子が西田良に思慕を抱いているらしいことは理解できた。
「西田さんは、どんな人なの?」
「彼は話題が豊富で、ジョークもうまい。好青年だと思う」
「そうなの。いつか3人で食事をしましょう。美味しいお寿司が食べたいな」
「それはいい。西田さんは寿司が好きんです」
「私と同じね」文子は相好を崩した。
文子のアパートは、井の頭線の駒場駅に近かった。
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