取手通信・医学情報社 山本 嗣信 (やまもと つぐのぶ)

医学情報社編集顧問
フリージャーナリスト

祈りが大切

2016年10月19日 05時48分26秒 | 創作欄
「利根君、君には羅針盤はあるの?」2杯目の吟醸酒を飲み干したあと東剛志は利根輪太郎に問いかけた。
「羅針盤ですか」輪太郎は答えに窮した。
居酒屋の喧騒が耳から離れていくように感じられた。
競輪ファンの多くが、酒を飲みながら愚痴をぶちまけている。
「本当に、取れないな。負けるばかりだ」自分の不甲斐なさや車券の対象とした競輪選手の敗退を諦め切れない口振りである。
「難しいな。競輪は」想定外のことも起こり得る。
「あそこで、イン粘りをするとはな」番手選手有利の競輪であるが、内側で粘る戦法もある。
外側で競り合うか内側で競り合うかの展開であるが、断然内側の選手が有利である。
東剛志は「競輪は記憶がものを言う」と指摘した。
人間関係にも左右される点では、競輪は個人競技ではない。
東北・北海道ライン、北関東ライン、南関東ライン、中部ライン、近畿・北陸ライン、中国・四国ライン、九州ラインで争われる。
そのラインを分断することもある。
それが想定外の展開である。
「必勝パターンが不可欠、羅針盤とも言えるね。それから祈りが大切だね」
「祈りですか?」東剛志は心外なことを口にした。
「そう。祈りだ。勝負の女神が微笑むように祈ることだ。祈ると見えてくることがある」
東剛志は笑みを浮かべて3杯目の吟醸酒を飲んでいた。
冗談にも聞こえた。
利根輪太郎は3杯目の生ビールを飲んでいた。
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