
映画の世界に没頭していたはずが、ふと我に返ってしまうことがある。
地元では上映してなくて、ずいぶん離れた町の映画館まで出かけたことをふと思い出す。
いずれ映画は終わり、長い時間をかけて家に帰る現実に溜め息をついてしまう。
映画の世界が現実ではないってことも寂しい。
帰る道のりこそが現実だということもつらい。
それが相乗効果で襲いかかって気を滅入らせるのだ。
遥か現実をはなれたこの場所で。
そのシネマコンプレックスの客は、僕ひとりだった。
小さいながらも小綺麗な館内、座席は中央やや前、視野いっぱいをスクリーンが占める、特等席だ。
何度も見た大好きな作品がもう終盤。拷問の直前にテロリストのリーダーによって情報省から救出されたところ。
ハッピーエンドから絶望のエンディングへと奈落の底に突き落とされる、悪夢のジェットコースターにようこそ!
映画館の後ろのドアを開ける軋んだ音。
館内を覗いた劇場支配人は僕をすぐに見つけて階段通路を小走りに降りる。
客席には僕ひとり。いつも座るのは特等席と決まっているから。
正装にチョビ髭、神経質そうな支配人は、今、母親の葬儀シーンに登場している案内人にそっくり。
横の通路まで来ると肩をすくめて僕に合図した。
「お楽しみを邪魔するんだから、きっと急用だろうな」
支配人はうなずき、右手で自分のジャケットの左胸を叩いた。
指示どおり、僕は自分の左胸の内ポケットを探る。そしてリモコンを取り出す。
停止ボタンを押すと、スクリーンに映し出されていた、若返った母親の微笑みが停止する。
映画の時間はお終いだ。
もう一度リモコンのボタンを押すと、スクリーンそのものが消えた。また押すと、僕の前の座席が消える。
右左に向けてボタンを押して、横の座席を全て消す。振り返って後ろの座席も。
そこはありふれた小会議室に過ぎなかった。ブラインドが下ろされた部屋の、真ん中やや前に、1脚のパイプ椅子。それに腰掛けた僕、その横に支配人。三次元映像と音響で作られた仮想シネマコンプレックスは消滅した。
僕はリモコンを支配人に向けた。
額に汗をかいた支配人が制止する。
「もし、もし消えてなくなるのが、このわたしじゃなく、あなただとしたら?」
僕は支配人の赤らんだ目とじっと見つめ合った。やがて支配人はニヤリと笑った。
「現実ってのは、つらいものなんだよ」
僕はリモコンを押した。
・・・すべてが闇。
♪Brasil♪meu Brasil brasileiro♪
サンバ・ブラジルの鼻唄だけ。














怖すぎ〜〜〜〜〜
私の中で勝手に後篇
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闇の中
手さぐりでドアを探し
冷たい空気の中へでて
家路を急いだ・・・・・・・
わたしだけね。
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すんません
オチから遡って文を書いて、始めも書き進めて、結局中程で貫通する、トンネル工事みたいに書いていくことが多いんです。
今回最後の文は、リモコンを押して支配人が消えてしまって終わりでした。
でも、書き終わってから、もっと怖いオチにしてしまいました。
そこのところを見事に補ってくださったわけです。
すごいなぁ!!
ボクはそんな未来世紀のブラジルが
好きなんですけど、その件に関しては
つまり、未来世紀ブラジル好きってこと
では、いつも意気投合してますよね!
あの映画のどこがそんなに好きなんでしょう?
ボクは、やはり
官僚的な閉塞感からの解放と絶望
ですねえ。
ところで、今回はそのシンメトリックな
お話ですね。
未来世紀ブラジルを観る、未来世紀ブラジルみたいな。
やっぱハッピーエンドはしらじらしくて
苦手ですね。
ギリアム自身は、1984を自分の爆発的なイメージで再構築するつもりだったのが明らかなんですけど・・・。
そのへんを映画を見る行為とシンメトリーにしちゃった訳なんですけど・・・
実は実は、どうでもいい種明かし。
僕自身とシンメトリーなんですよ〜
ギリアムの公開中の映画、Dr.パルナサスの鏡、僕の田舎町にはまだ来ないんで、1時間以上かけて明日、公開している町に行って見ようと思ってるんです。
エエッ
書き出しの部分、そのまんまやないか〜い!
そうなんです。そのまんまです(笑)
今回は「未来世紀ブラジル」ですか。
私も大好きな映画です。
また観たくなりました。
矢菱虎犇さんのは
闇の中の鼻唄のサンバがとても哀しくて良かったです。
僕は今日やっとDr.パルナサスの鏡を見て、今さっき帰ってきたところなんですよ。
イメージ豊かな世界にワクワクしました。
でもなんだか『バロン』と重なる部分が多くて、もっと違った世界がみたいなぁ〜なんて欲張りな感想を持ってしまいました。
未来世紀ブラジル、僕はデラックスエディションはもちろん、アメリカのクライテリオン社が発売した、幻の『愛は全てに勝つ』バージョンも手に入れちゃったくらい好きです。『バトル・オブ・ブラジル』の本も繰り返し読んで・・・
僕の友だちは、暗くてよくわからない、眠くて途中で見るのやめたって言うんですけど・・・
大傑作なのにね〜!