
「ミキちゃん、だめですよ。おかあさまの口紅使っちゃあ」
鏡台を見ていたミキちゃんがふりかえりました。
ミキちゃんのお口の周りは真っ赤っか、おかあさまは思わず吹き出しました。
「おませさんね!でもそれじゃあ変ですよ。いらっしゃいな」
居間のテーブルには新聞紙が敷かれ、花のお手入れの途中です。
「まあ、きれいなお花」
椅子にちょこんと座ったミキちゃんはお花にみとれました。
おかあさまは美紀ちゃんの口紅をティッシュでていねいに拭きとります。
「これはね、パンジーというお花よ。きれいでしょう?来年の五月まで咲き続けるわ」
新聞紙の上に、大きな、きれいなお花がたくさんもぎとられて並べられています。
「どうしてお花をつんでしまうの?」
「これはね、花柄摘みと言ってね、咲き終わったお花を、花の柄の根元からちょっきん切りとるのよ。こうすると、古い花に養分がとられず、新しい花が次々咲くのよ」
「きれいに咲いたのにかわいそう」
「ミキちゃんはやさしいのね。でも、そのままにしておくと、種を作るのに養分が使われて新しいお花が咲かなくなるの。枯れたお花から病気がつくこともあるのよ」
「ふうん」
「ミキちゃん、ミキちゃんもまだお花を咲かせるには早すぎるの。今は、いっぱいお勉強して、たくさん遊んで、すくすく育ってほしいの。そうすれば大人になったとき、ずっとすてきなミキちゃんになれるはずよ。だから、口紅はまだですよ」
「おかあさま、ごめんなさい」
おかあさまはやさしくミキちゃんを抱きしめました。
翌日、おかあさまは鏡台の前にお座りになってお化粧をされていました。
「おかあさま、とってもきれい」
「ミキちゃん、ありがとう。でも、年をとると小じわやたるみが気になっちゃって」
「おかあさま、だ〜いすき。ずっとずっとだ〜いすき!」
「あらあら、ミキちゃんたら!」
ミキちゃんはおかあさまのおくびをうしろからだきしめました。そして、
ちょっきん。














ボクは楳図かずおが大好きなので
こういうお話を読ませてもらうと、
パッと楳図ホラーの絵が浮かぶんです。
ですから、すごくイメージしやすかったです。
イメージしやすいと、お話自体が短くても
頭の中で「間」を埋めていくことができるから
じっくり読んだ気分に浸れませね。
>ちょっきん。
っていう文字がひらがななのが雰囲気あります。
ジャンル分けするとすれば
矢菱ゴシックホラー部門ですね。
・・・なんて、こわい話の本道に戻りたい衝動に駆られたのです。
それで、こういう、ちょっと大正から昭和初期の童話雑誌のにおいのするような文体で、前半のハートウォーミングから一転して一気にブラックにもっていくお話を考えてみました。
書いた本人が言うのはなんですけど、文字として読むのは平気ですけど、絶対に映像化したくない種類の文章だと思います。
アメリカで受けそうな話、と思いました(笑
子供って怖いですよ。
純粋だからこそ恐ろしいものってあると思います。
よく、猟奇的殺人犯が精神的に幼かったり、
小説に登場する殺人犯が子供みたいな話し方をするのって
素なんでしょうね。
いい意味でも悪い意味でもピュアなんですよね。
僕は、今回のパンジーはショートショートによくあるブラックユーモアというのを正攻法で描くことを目標に書きました。成功したかな?
♪パンジーはママの味〜♪