
ライム氏は最後に僕の健康診断結果を開くと、見る見る顔を曇らせた。
「一年間で7キロ増?」
二人の男と三人の女が僕の体を一瞥した。
「え、ええ、ちょっと肥っちゃいました」
「肝臓の数値もひどい・・・飲み過ぎですな。尿酸値も高い。血圧も!」
男の一人が舌打ちをした。もう一人の男は無関心を装う。
おいおい、僕はそんなに悪いことでもしたのか?
「確かにちょっといい加減でした。でも、1ヶ月も節制すれば元の健康体です」
「お腹を出して」
僕はライム氏に言われるままに服をたくし上げた。一年前に割れていた腹筋は脂肪に覆い隠されている。
「前髪を上げて」
生え際が後退し、額が広くなっている。
背を向けた女たちが肩を小刻みに震わせて笑いを噛み殺している。
何たる屈辱!
「ちょっとお待ちを。上の者と相談してまいります」
僕たち六名は部屋に残された。
一年前にも僕たちはこの部屋にいた。容姿と健康に自信がある者を新聞広告で求人していたのだ。僕たち六名が採用された。僕たちに求められたのは、渡された薬を毎日飲み続けること。それだけで生活に困らないだけの報酬が支給された。しかも一年後の成果に対してご褒美まで約束されていた。
たぶん、新薬を承認申請するための臨床試験ってヤツ。
生活に困らない生活というのが僕にとって落とし穴だった。ついつい飲み過ぎ、食べ過ぎてしまった。
ライム氏が戻ってきた。
「残念ながら不採用です。あなたは人間失格となりました」
「そんな!すぐに健康体に戻します。だから僕も採用して!僕にもご褒美を!」
「上の決定です。お引き取りください」
健康診断結果がよくなかっただけで、全否定、人間失格呼ばわりはひどい、ひどすぎる・・・
意気消沈した僕は部屋を後にした。
五人の美男美女の冷やかな、勝ち誇った視線を痛いほど背中に感じながら。
僕が部屋を立ち去って五分後、屋上から円盤が飛び立った。
五万光年の彼方、プロキシア星の地方博物館。
「館長、ここには、なぜ地球人標本が凹一体しかないんだ?地球人はその生殖システムから凸凹一対なのでは?」
「あいすみません。凸標本が一体、不適格でしたので、入荷待ちです」
(最後まで読んでいただいてありがとうございます。バナーをクリックしていただくと虎犇が喜びます)









こういう数学的なものがありますよね。
今回のお話なんて特に数字がたくさん出てくるじゃないですか。
>一年間で7キロ増
>二人の男と三人の女
>1ヶ月も節制すれば
>五人の美男美女
>五分後
>五万光年の彼方
>凸凹一対
まだあるんですけど、こんな感じに・・・・・・。
前、ラジオドラマで放送された、文章塾投稿の作品も、数学的なものでした。
矢菱さんは、こういう数字が得意なんじゃないかなあと思うんです。
作品に説得力や、厚みが出るのに一役かってますもんね。
具体的な数字を挙げるという手法は、
ボクの書くヤツにはない特徴なので、
勉強になります。
もし、無意識に書いてるんだとしたら、
分析能力が発達してるんでしょうね。
いいなあ。
と、今日は矢菱さんを
勝手に分析してみました(笑)
実は日曜日にブラウン管モニタが使えなくなった知人に、僕のモニタを差し上げたのです。
オスカー・ワイルドの幸福な王子にでもなったつもりでしょうか・・・
おかげで、小型ノートの画面がちっちゃくて画像表示も合わせてミニミニで、さっぱり大きさの感じがつかめなくなってしまいました。
画像なおしてみましたが、今度は小さすぎるかも・・・
数字へのこだわり・・・そうかもしれませんね。とにかくこだわりが強すぎる人間であることは確かなんですよ〜
ある時期は、描写する物全部、色を書かないと安心できなくなったり、数をきちんと書かないといられなくなったり・・・
一種の脅迫神経症でしょうか・・・
危うく宇宙人にキャトルミューティングされそうな
話ですねぇ・・・
キャトルミューティングといえば昔は馬や牛が惨殺されたり、
人間でもせいぜい何かの記憶がある程度ですが、
今は何かのチップを埋め込まれるらしいですね・・・
いやぁ・・・標本は嫌ですね
ホルマリンの中で一生なんて・・・
キャトルミューティングって、牧場の牛が切り裂かれて内臓だけごっそり持って行かれたりする、アレですね。
僕はホルマリン漬けは苦手なので、ツボ漬けカルビくらいにしてほしいです。野菜やら果物とタレに漬け込まれて、肉が柔らかくなって美味いんです。
太っていたから助かったんです。
最近、健康診断結果が戻ってきたんですが、「要精密検査」だったのは僕自身なんです。
肝臓の値がよくないのも僕です。
尿酸値が高いのも僕です。
おまけに胃にポプリ・・・もとい、ポリープまで。
その腹いせに、こんなお話を書いてみる、無邪気な虎ちゃんです。