広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

おじいちゃんのスマホ

2015年08月02日 | ショートショート



スマホの呼び出し音。お祖父ちゃんからだ。
「お、タカシか?スマン、スマン。スマホいじってたら、どこがどうなったやら・・・掛けちまった」
「え~爺ちゃん、また間違いかよ」
ボクは思わず苦笑する。
スマホってあるんだよね、操作してたらミスって電話掛けちゃうっての。
それが毎度毎度なのだ、お祖父ちゃんの場合。
「いやだからスマン、スマン。まあええ。タカシ、栄養のあるもん、ちゃんと食うとるか?」
「心配ないって。生活費かかんないように自炊してんだぜ、ここんとこ」
「えらいのうタカシは。で、盆には帰ってこれんのか?」
「無理かなあ。卒論の準備もあるし、バイトも入れてるし」
帰りたくても帰れないよ、お祖父ちゃん。
「大変じゃのう。暑いから無理するんじゃないぞ。宅配で野菜でも送ってやろうか?今年はスイカが豊作でのう」
そうか。去年の夏も暑くてスイカがよく育ったっけ。
「気持ちだけでいいよ」
「甘いぞ、今年のスイカは」
ひとしきり話して電話を切った。そして『おじいちゃんと電話』アプリも終了する。
ほどなくして、今度は父から電話が掛かってきた。
「何回か電話したんだぞ、えらく長電話じゃないか。彼女でもできたか?」
「そんなんじゃないよ。お祖父ちゃんと話してたんだ」
「・・・オマエ、暑さで変になったか?祖父ちゃんは死んじゃったろうが、昨年の秋」
「わかってるさ。アプリなんだよ。コレ使うとお祖父ちゃんと電話で話せるんだ」
「アプリ?スマホ?それでお祖父ちゃんの霊を呼び寄せるのか?」
ボクは思わず吹いた。
「説明してもわかんないだろうけどさ、Siriみたいな音声会話機能と、お祖父ちゃんの会話音声記録との融合なんだ」
「うむ、わからん」
「だろ?まあ、つまりは、あたかもその人と話しているかのように話せる、そんだけのものなんだけどさ」
「う~む、わからん」
「で、父さん、何か用事なの?」
「ああ、ソレソレ。オマエ、盆には帰ってこれんのか?」
またそれ。笑いながらもなんか切なくなった。
「帰ってこいってタカシ。祖父ちゃんの畑のスイカ、今年も甘いぞお。ちょっと母さんと変わるから・・・」
母さんまで電話に出たら、泣いちゃうじゃないか。
「イヤ、いいって。またかけるから」
「暑いから無理しちゃダメだぞ」
「わかってる、わかってるって。じゃあね」
ボクは電話を切った。
そして『親子で電話』アプリも閉じた。
     


(最後まで読んでいただいてありがとうございます。バナーをクリックしていただくと虎犇が喜びます)     


ジャンル:
小説
コメント (4)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 宅配便 | トップ | 幽霊トンネル »
最近の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
アプリ (雫石鉄也)
2015-08-03 14:01:04
そして「ボク」というアプリを閉じた。

「このアプリもあきたな」
「セカイ」というアプリを閉じた。
世界は終わった。
雫石鉄也さんへ (矢菱虎犇)
2015-08-03 18:41:23
お久しぶりです。
なんとなくまた書き始めてみました。

>そして「ボク」というアプリを閉じた。
こういう、ラッキョウの皮を剥くみたいなお話は、皮の剥き加減がなかなかムズかしいっす~
復活? (りんさん)
2015-08-05 17:03:26
3作も続けてアップするなんて、もしや完全復活ですか。
どれも矢菱さんらしくて面白かったです。

これは何だか切なくなるようなラストですね。
アプリはどこまで進化するのか。
私は全然ついていけてません^^
りんさんへ (矢菱虎犇)
2015-08-05 20:19:09
コメント、あざーすっ(笑)
タネ明かししますと、
映画の供給が滞って、ちょっと暇ができたもので・・・
でも数日前にジュラシクワールドやらテド2やら届いたので、また映画三昧に戻ります(爆)
申し訳ないっ

コメントを投稿

ショートショート」カテゴリの最新記事