25日(日).わが家に来てから今日で998日目を迎え,トランプ米大統領が,解任した連邦捜査局(FBI)のコミー前長官との会話の録音テープの存在を示唆していたことに関し,コミー氏が真実を語るようにするためだったと主張した(要するにテープは存在しなかった)というニュースを見て感想を述べるモコタロです
ありもしないテープをあるかのように語る まさにトランプ得意のフェイクだ!
土・日は料理は作りません これは昨日,息子が昼食に作ってくれた涼麺です 見た目はちょっと微妙ですが,とても美味しかったです
9月11日(月)午後7時から紀尾井ホールで開かれる「五重奏のカレイドスコープ」公演のチケットを取りました プログラムは①ライヒャ「変奏曲」,②ベートーヴェン「ピアノと管楽のための五重奏曲」,③レーガー「クラリネット五重奏曲」です 目当てはベートーヴェンです 出演はピアノ=上原彩子,クラリネット=鈴木豊人,オーボエ=蠣崎耕三,ファゴット=福士マリ子ほかです
昨夕,ミューザ川崎シンフォニーホールで東京交響楽団第651回定期演奏会を聴きました プログラムは①ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲,②ハイドン(偽作)「ホルン協奏曲第2番ニ長調」,③モーツアルト「ホルン協奏曲第2番変ホ長調K.417」,④ブラームス「交響曲第1番ハ短調」です ②③のホルン独奏はフェリックス・クリーザ―,指揮は秋山和慶です
オケは東響のいつもの並びで,左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスという編成.コンマスはグレブ・二キティンです
1曲目はウェーバーの歌劇「オベロン」序曲です プログラム冊子の解説によると,この曲は1824年にロンドンのコヴェントガーデン歌劇場から英語による新作オペラの依頼を受けて作曲されたそうです.ちっとも知りませんでした 1826年4月にウェーバー自身の指揮で初演して大成功を納めたのに,その2カ月後に結核によりロンドンで客死(享年39歳)したとのことです 天才は早死にしますね.モーツアルトは35歳だったし
ロマンスグレイの秋山和慶氏が指揮台に上がり,演奏が開始されます この曲を聴いて最初に思ったのは「弦が柔らかいな」ということです.まさに秋山サウンドです 私は秋山和慶,ユベール・スダーン,ジョナサン・ノットと3代にわたる音楽監督の東響定期会員ですが,秋山氏の指揮で聴く音楽は格別です 音楽の流れが自然なので,流れとともに呼吸が出来る演奏なのです 特に古典派と古典派を受け継ぐロマン派のブラームスなどは最高です 誤解のないように付言しておきますが,秋山和慶氏はシェーンベルクの歌劇「モーゼとアロン」の演奏でクラシック界の話題を喚起したように”現代音楽”においても名立たる指揮者なのです
2曲目はハイドン「ホルン協奏曲第2番ニ長調」です この作品は1781年頃に作曲された曲ですが,ハイドンの作曲と言い切れない偽作のようです
オケは管楽器が引き上げ,弦楽奏者のみ26人の編成となります.指揮台の隣にホルンの演奏台が設置され,その上にホルンが支柱に固定されます 何事か?と思っていると,生まれつき両腕のない演奏者フェリックス・クリーザーが登場します 4歳の時にホルンを始め,17歳でハノーヴァー芸術大学に入学したとのことです
クリーザーは椅子に座り,靴を脱いで裸足になります.右足で支柱を押さえ,左足を挙げてホルン近くの台座に載せ,踵を固定することによって左足指でホルンのバルブを操作します(上のチラシの写真を参照)
この曲は第1楽章「アレグロ・モデラート」,第2楽章「アダージョ」,第3楽章「アレグロ」から成ります 第1楽章は速めのテンポということもあって,ミスタッチ(ミス・フット・タッチ?)がありますが,音楽の流れは維持します 特筆すべきはカデンツァです.ホルンだけの聴かせどころは外しません 第2楽章「アダージョ」は余裕さえ感じさせます.第3楽章は再び速めのテンポに移りますが,見事にクリアします はっきり言って「見事なフットワーク」です 私だったら足を挙げた段階で足がツッています 全楽章聴いて思うのは「ハイドンらしさがない.やっぱり偽作だろう」ということです
3曲目はモーツアルト「ホルン協奏曲第2番変ホ長調K.417」です この曲は他の3曲のホルン協奏曲と同様,ロイトゲープというホルンの名手のために書いた作品です 1783年の作曲ですからモーツアルト27歳の時の作品です.この曲は第1楽章「アレグロ・マエストーソ」,第2楽章「アンダンテ」,第3楽章「ロンド」から成ります
弦楽器陣に加え,ホルンとオーボエが各2人加わります.秋山氏のタクトで第1楽章が開始されます.東響は軽快です
クリーザ―の実力が発揮されたのは明らかにモーツアルトの方です.速いパッセージでもほとんどミスタッチ(ミス・フット・タッチ?)がありません と言うよりも,音楽的に優れています.それを可能にしているのは秋山和慶氏のサポートです ソリストに対する”忖度”と言っても良いでしょう
演奏後,再び靴を履いて立ち上がって会場に一礼,後ろを振り返って一礼,再度前を向いて一礼するクリーザ―の顔は誇らしげです 秋山氏も二キティン氏も本当は握手して健闘を讃えたいところでしょうが,物理的にできません それを見ている観衆の一人としてももどかしい思いがあります 精一杯の拍手を送りました
左足の5本の指だけでのホルンの演奏を聞いたのは生まれて初めてですが,「どんな障碍をもって生まれても,出来ないことは何もない」ということを目の前の演奏で示してくれました 私は,「盲目の天才ピアニスト」とかいうセールストーク(本人のせいではないにしても)による演奏家のコンサートに行くことはまずないのですが,クリーザ―についてはプロの演奏家として認めざるを得ません
プログラム後半はブラームス「交響曲第1番ハ短調」です よく知られているように,この曲は構想から完成まで20年以上の年月を必要としました.その理由は,目の前にベートーヴェンの9曲の山が,いや,山脈が聳え立っていたからです この9曲を超える曲を書かなければ意味がない,とブラームスは考えていたのでしょう それだけに,冒頭のティンパニの連打で開始されるハ短調(ベートーヴェンの第5番”運命”と同じ調性)の交響曲は会心の出来だったに違いありません
この曲は第1楽章「ウン・ポーコ・ソステヌート」,第2楽章「アンダンテ・ソステヌート」,第3楽章「ウン・ポーコ・アレグレット・エ・グラツィオーソ」,第4楽章「アダージョ~アレグロ・ノン・トロッポ,マ・コン・ブリオ」から成ります
第1楽章ではオーボエ首席の荒木奏美,フルート首席の相澤政宏の演奏が光っていました 第2楽章ではコンマスのグレヴ・二キティンのソロと荒木奏美のオーボエが味わいのある演奏を聴かせてくれました
この曲では,第4楽章の序奏におけるアルペンホルンの旋律が聴きどころの一つですが,メインのホルンに続いて演奏される相澤政広のフルートが素晴らしかった 薄ら曇ったアルプスの空が晴れ渡るような爽やかな演奏でした
全体を通して言えるのは,秋山和慶氏の音楽作りは,作為のない自然の流れを感じさせる演奏だということです 最後の一音が鳴り終わった後のブラボーと拍手の嵐は,長年培ってきた秋山和慶+東響サウンドに対する賞賛のそれだったと思います