とんもの日記

いつか どこかの 本当のはなし

蛤の開く瞬間

2012-03-03 18:04:04 | 日々のこと
ひな祭りのお祝いをする。
たくあん男のご両親をお招きして。

小さな人は朝ご飯を終えるとすぐに
一番気に入りのワンピースに着替えて
お洒落をしていた。

今日のメニュー。
海鮮ちらし寿司。
酢飯の上に海苔をひき、サーモン、鮪、鯛の
お刺身を乗せ、イクラとシソで飾ったもの。
結び三つ葉を入れた蛤の吸い物。
ブロッコリーとスナップエンドウ、アボカド
のサラダ。
それから里芋のフリット。
お寿司の時は、不思議と揚げ物も食べたく
なる。

ひな祭りのちらし寿司と言えば、きっと
田麩や椎茸を甘く炊いたの、それから
茹でた海老なんかが一般的なのかもしれない。
けれど我が家は海鮮ちらしが好きなので、
ちらし寿司と言えば、もっぱら海鮮だ。


さて、蛤の様子をみにゆく。
朝から砂出しをしていた。
ちらと覗くと、時々泡をぷくぅと出しながら
みなぼぉーっと気を抜いているご様子。
よしよし。
もう少し後では口や身体をすっかり出して
リラックスしている蛤も。

小さな人に
「ほら、この蛤さん、貝から身体を出してるよ」
と見せてあげる。
すると蛤は一瞬で小さな人の心を掴んだ。

蛤を吸い物にすると言ったら、
「はまぐりさんと おともだちに なりたかったのに」
と小さな人、号泣。
「食べないで腐って臭くなった蛤さんと、
 美味しく食べて綺麗に洗って臭くない蛤さんと
 どっちがいい」
と尋ねると、
「おいしくたべて くさくない はまぐりさん」と
小さな人は小さな声で答える。

蛤を鍋に入れる時、小さな人は隅の方に隠れて
泣くのを堪えていた。

食べ終えて、綺麗に洗ってあげたら、小さな人
はとても喜んでいた。
貝殻はぴかぴかと光って綺麗。


ところで、蛤。
食べるのはひな祭りの時ぐらい。
とっておきの食べ物のひとつだ。
2年前のひな祭りの時、小さな子供の拳くらいの
蛤を吸い物にした。小振りのステーキ1枚ほど
のお値段だった。
けれどそれは期待を裏切らない劇的な旨さだった。
それ以来、子供の拳ほどでななくても、
蛤は中の大くらいのを選ぶようしている。

蛤はその貝が開く瞬間も、なんだか心迫る
ものがある。
大きいからか豪快なのだ。
「ぼふっ」という音が聴こえてきそう。
その様子からは
「今なにか、とても目出たい出来事が
起こったのだ」という気分にさせてくれる。

私はそんな気分になりたくて、いつも
蛤の開く瞬間をじっと待つ。
片時も鍋の側を離れずに。
今日も「ぼふっ、ぼふっ」と蛤は次々に
開いた。
なんとも目出たい光景だった。


小さな人のおひな祭り、楽しく終える。
お祝い事は沢山の人で祝うのが
いいですね。
皆に祝ってもらって、喜びがぐっと
膨らんだ。

一日中晴れて、清々しいひな祭り。
時々窓を開けっ放しにしていたら、
すっかり春がやってきたよう。

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