田園酔狂曲

二人三脚の想い出と共に!!

ハモ物語~デビュー戦

2017-10-07 17:22:18 | 田園ものがたり
ずっと以前、栄通りと銀座通りの交差する角に、小さな薬局が在りました。
その隣に、昔の田園があったのです。
入り口のショーケースには、エビフライなんかの蝋細工の模型が並んでいます。
そこが、ヒゲが二代目として働き始めた場所です。
          
田園の看板の向こうに、民生堂薬局の看板も少し見えます。
夏場の生ビール祭りとやらで、提灯が下げてあります。
オヤジの趣味ですから、文句も言えません。 (笑)
和服の女性は、カァちゃんです。

或る日、ぶらりと鶴屋地下の魚屋をのぞいた所、目を疑う値付けに出会いました。
“ 300円!? ” 
少し小ぶりの鱧ですが、触ってみるとビンビンに活かってます。
ヒゲは、恐る恐るおばちゃんに訊ねます。「コレって、100グラムが300円?」
おばちゃん 「 いにゃ、いにゃ、 一本が300円たい。 」
 安い!!
ヒゲは、3本分の900円を払い、小躍りして店に帰ります。

すぐに料理に掛かるのですが、何しろ独りでするから、けっこう大変です。
やっとこさ終了すると、もう夜の営業時間帯。
やがて2Fから、『ハモの落とし』の注文が来ました。

暫くして、2Fのお客様が1Fカウンターに来て、こう言いました。
「 ハモの落としを造った板前に、お目にかかりたい。 」
暖簾で仕切られた奥の厨房にいたヒゲは、困ったちゃん? 恥ずかしーい!
でも、しょうがありません。
カウンターに顔を出した時です。
「 あっ、あっ、あああ ・・・ 」 客が、どもり始めました。
無理もありません。
その時のヒゲは、無精ヒゲで髪はぼうぼう。
白衣は、返り血が飛んでます。
朝から深夜まで働き詰めで、身の回りを気遣うなんて全くゼロ。
ルンペン雰囲気そのままです。
くだんの客が期待していたであろう、真っ白い白衣に白い帽子の割烹板前のイメージとは
真逆のいでたちでしたから。

どもりの溶けた客 「 貴方が、今日のハモを造られたのですか? 」
ヒゲ  「 あ? ハイ 」
客  「 いや驚きました。 熊本で、あれ程のハモを頂けるとは思いもしませんでした。
     どちらで、修業されたのですか? 」
ヒゲ  「 はあ、暫く京都に居りましたが ・・・ 」
客  「 あっ、なるほど、そうでしょうネ 」
こうして、ヒゲの赤っ恥のご対面は終わりました。

しかし、この事件(?)のおかげで、現在のヒゲ・スタイルになったのです。
身だしなみの心得の芽生えが生まれ、ポイントを、鼻ヒゲに!

客の話しを聞いていた従業員も、それまでは胡散臭い二代目と軽蔑の目だったのが、
「 ヘェ〜 」 と感心する様になったのです。
あの、おしゃべりもろくに出来ない二代目に、以外な技術が有るみたいだと。

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コメント (2)
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