明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1391)大飯原発の再稼働に反対して(本日23日、おおい町でお話しします)

2017年06月23日 08時30分00秒 | 明日に向けて(130...

守田です。(20170623 08:30) 

本日23日におおい町でお話します。「新規制基準と避難計画の学習会」というタイトルで、今回も後藤政志さんとご一緒します。
おもに後藤さんが新規制基準についてお話しされ、僕が避難計画について篠山の例も交えてお話しします。直前のお知らせで申し訳ありません。
 
今回、おおい町を尋ねるにあたって、おおい町公式チャンネル「まいどまいどジャーナル」における大飯原発再稼働に向けた番組を拝聴しました。
企画がおおい町、協力が関西電力(株)大飯発電所。6分強から10分弱の8本の番組によって成り立っています。アドレスを記しておきます。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLrDRLVMfsBGi12DrK_tTHBCwJDAdgB4Dz
 
全編、じっくりと観させていだきました。各回のタイトルをならべておきます。
第1回 原子力規制委員会と新規制基準
第2回 大飯発電所のいま
第3回 自然災害に備える
第4回 事故の進展防止対策
第5回 事故の拡大防止対策
第6回 事故時対応能力の向上
第7回 運転員たちのいま
第8回 大飯発電所からのメッセージ
 
これを観るにあたって一番、注目していたことがありました。新規制基準のもと、「もし過酷事故が起こっても放射能放出量を福島原発事故の100分の1以下になるような対策を施している」と言われている点です。
新規制基準は、過酷事故が起こりうることを前提にしたものです。いまは「重大事故」と言葉の入れ替えがなされていますが、この後の対応が求められています。
もちろん過酷事故を起こさないための対応のレベルアップも求められていますが、それでも放射能の閉じ込めに失敗することがあると考え、対策を施すとされていることに大きな特徴があるわけです。
 
今回の「まいどまいどジャーナル」を観るにあたっても、この点がどのように施されているかをまずは虚心坦懐に観てみようと思いました。どう対応することで、放射能の放出量を100分の1以下に抑えるとしているのかをです。
もっとも前提的に僕は「そんなこと、科学的にできるわけがないのではないか」と考えています。なぜってこの事態は格納容器が壊れないように講じたさまざまな装置が突破された事態なのだからです。
もうそうなったらどこがどう壊れるかも予想不能なはず。予想できるなら始めから壊れないような対策もうてるはずです。実際、福島原発事故でも格納容器のどこがどのように、かついかにして壊れたのか、まだ調査すらもできていないのです。
にもかかわらず、閉じ込めようとして閉じ込められなくなった放射能の放出量を100分の1にすることなどできるのでしょうか。そんな芸当のような対応などあるはずがないのです。
 
この点に僕がこだわる大きな理由は、この「放射能の放出量を福島原発事故の100分の1へ」というあまりにありえない想定が、原子力規制委員会によるこの間の避難計画の見直しに直結しているからです。
規制委員会は当初打ち出した「原子力災害対策指針」の中で、原発から半径5キロ圏内は放射能の放出が起こる前に逃げ、半径30キロ圏内では屋内退避するが、場合によっては避難が必要なので準備が必要だとし、市町村に対策を命じました。
ところが昨年暮れぐらいから「避難の準備は5キロ圏内で良い」「30キロ圏内な屋内退避すべきでむやみに避難させるべきではない」と言い出したのです。
いわく「準備が不十分な避難は、多くの犠牲者を出すなどの極めて深刻な結果につながる」からだそうです。それなら十分な準備をすべきなのに「避難しなくて良い」と結論付けているのはあまりの暴論です。これらは以下で主張されています。
 
原子力災害対策指針と新規制基準
https://www.nsr.go.jp/data/000172848.pdf
 
さて、これらを踏まえて、いったい大飯原発において「重大事故がおきても、福島原発事故の放射能放出量の100分の1以下に抑える」対策がどのようになされているのかを観てみました。
どうだったのかというと、驚くべきことに、「もしものときの放射能の放出を100分の1以下にする対策」等、何一つうたわれていませんでした。
もちろん大飯発電所が何の事故対策の上乗せもしていないというのではありません。さまざまに「多重防護」が施されたことがうたわれています。
 
例えば「第4回 事故の進展防止対策」では、福島原発事故時の電源喪失を踏まえ、重大事故時に原子炉を冷やすための対策がたくさん述べられています。
総じて電源を多重化、多様化しする。送電線を複数回路にしてひとつがダメでも第2、第3の電源が得られるようにしたとされて以下の対策が並べられています。
発電所に備えているバックアップ電源の容量を1400Ahから2400Ahに増量。
外部から電気を受け取るラインも増やして強化した上、新たなバックアップ電源を配備。冷却水を必要としない空冷式非常用発電装置を1号機あたり2台、合計4台配備。
さらに電源車を1号機あたり2台、全体の予備1台、合計5台配備。これらの運転用の燃料のため、地下燃料タンクを設置。連続7日間稼働可能に。
その上、それでも電源が得られなくなることもありうると考え、次の三つの対策を重ねているそうです。海水を取水する手段の多様化、炉心の直接冷却手段の多様化、蒸気発生器による冷却手段の多様化です。
 
この三点の詳細については省略しますが、これまでみてきてわかることは、重大事故に対して「あれがだめならこれ、これがだめなら次の手を」という場当たり的な対策の重ね合わせが行われている点です。
しかしこれらはもともとのシステムの中に組込まれていないことに大きな弱点があります。とくに原子炉建屋の外においてある電源車などが、がれきの散乱も予想される緊急時に想定どおりに動けるのかなど、幾らでも疑問が湧いてきます。
だからこそ幾重にも対策が重ねられているのでしょうが、どこまでいっても緊急時に本当にうまく作動するのか確信のもてないものばかりなのです。
 
ただそれとともに重要なのは、これらはあくまでも電源喪失の際に、電源を復活させ、あるいは冷却機能を復活させて、原子炉を冷やすための対策であって、それに失敗し、放射能が飛び出すのを防げなくなった時の対策ではないことです。
ようするに「放射能が飛び出してしまう場合がありうる」といっているのに、肝心のその対策、しかもそのときに「放出量を福島原発事故よりも大幅に抑える」とする対策は、これら8本の中で何一つ説明されていないのです。
これでは原子力規制委員会のうたいだした「5キロ圏内だけ避難」「5キロ圏外は屋内退避。むやみに避難しない」などという指示の何の根拠も説明されたことにはなりません。
 
この点を踏まえて、今回、おおい町では二つの点を強調してきたいと思います。
一つに再稼働は重大事故が起きることを前提にしたものであまりに危険であるということです。しかもその際に、「放射能放出量を低減する」対策等何も説明されていません。このため再稼働をさせないことこそが安全を確保するもっとも大切な道です。
二つにそれでも再稼働が強行されてしまうことを見据えて、災害対策を重ねる必要があるということです。もちろんおおい町は高浜原発にも近いですからその事故にも備える必要がある。その際の核心は「とっとと逃げる」ことです。
講演ではこの二つ目のことを主に展開しますが、ここではその前提としての「5キロ圏外は避難等するな」という原子力規制委員会の新たな方針に見合った対策が、何も説明されていないことをおさえました。
 
以下、講演の案内です。
 
「新規制基準と避難計画の学習会」

午後7時から9時まで

きのこの森 ふるさと交流センター会議室にて
主催は「後藤政志さんのお話を聞く会」


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明日に向けて(1390)書評『制定しよう 放射能汚染防止法』-1(6月25日は岡山市へ)

2017年06月09日 23時30分00秒 | 明日に向けて(130...
守田です(20170609 23:30) 
 
またしてもとんでもない被曝事故が起こりました。6日に起こった日本原子力開発研究機構大洗研究開発センターでのプルトニウム239の被曝事故です。
しかも1人の男性職員は肺に2万2千ベクレルもの被曝を受けたと計測されました。ここから全身に36万ベクレルものプルトニウム239が取り込まれたと推測されています。
ここから論じるべきことはたくさんありますが、一つの大きな課題はこの国の放射性物質の管理があまりにも杜撰になっていることです。
なぜなのか、何を正すべきなのかと考えた時に、考えるべきなのは、そもそも福島第一原発の事故以降、膨大に漏れ出した放射性物質のまともな管理がなされてきていないことです。

この事態を捉え返し、是正していくベき道を探るために、この間、友人たちとともに京都市内で「放射性廃棄物拡散問題学習研究会」を開催してきました。
8回に及ぶ会合の中で、放射性物質がそもそも法的にいかに扱われてきたのかについても学んできましたが、前回(5月28日)にはこうした事態の抜本的な解決に向けた「放射能汚染防止法」制定に向けた動きを取り上げました。
これは6月25日に岡山市で「『放射能汚染防止法』を制定しようHKB47 市民勉強会 IN岡山2017」が開催されることも意識してのものです。
僕自身、この企画で「放射能汚染防止法制定を目指す戦略」と題されたパネルディスカッションにも参加させていただきます。
今回は5月28日の学習研究会で取り上げた、この法律の制定運動を起こされていて、岡山でのディスカッションにも参加される山本行雄弁護士の著書を取り上げます。

本のタイトルはずばり『制定しよう 放射能汚染防止法』。星雲社から発行されています。
この本を読みだしてすぐに「なるほど」と思わされるのは、原発の再稼働に向けて当然にも問われてしかるべき汚染対策が抜けていないか?一億人が勘違いしていないか?と山本弁護士が指摘されていることです。
原発の再稼働に向けて問われて来たのは一つに「安全審査」です。国は原子力規制委員会を設け、同委員会が設定した「新規性基準」を安全審査の柱としています。
これまでも繰り返し述べて来たように、新規制基準は「過酷事故」が起こりうることを前提にしたもので、到底、認められるものではありませんし、規制委員会自身が再稼働への許認可にあたって「新規性基準への適合性を見ているだけで安全だとは申し上げない」とすら述べています。
しかしそれでも100歩譲って言えば、この新規性基準は安全審査を巡る論議の一つの場となっているとは言えます。
 
次に問題になるのは防災訓練=避難の準備です。これに向けても原子力規制委員会が「原子力災害対策指針」というひな形を出し、原発から30キロ県内の自治体に避難計画の作成が義務づけられました。
しかし作られはするけれども、誰も審査せず、責任があいまいになっていると同時に、多くの計画があまりに実効性に乏しく、机上の空論にとどまっています。
僕自身はこの点を踏まえて、原発から30キロ圏外の篠山市で、市民の方達とともに独自の発想に基づく対策を積み重ねて安定ヨウ素剤の事前配布などを実現してきました。
「原子力防災で絶対安全を確保できる道などない。せめて少しでも被曝を避ける減災の観点で望むしかない。その場合、最も有効なのは事故の際にとっとと逃げる準備を重ねることだ」と言うのが篠山市の基本方針です。
しかし多くの自治体は依然、空論にとどまっており、さまざまな問題が山積していますが、あえてここでも100歩譲って言えば、防災訓練=避難計画もまた人々の論議の対象にはなってきています。
 
ところがもう一つがすっぽりと抜け落ちている。それが放射能汚染対策なのです。このことを山本さんは「一億人の勘違い」と述べられている。少し引用します。
「総理大臣が原子力防災会議の議長として、過酷事故を想定した防災訓練を行っているのです。事故を想定するなら被害を想定するのが当然です。
 総理大臣を筆頭に、防災訓練をすれば、その後の汚染等ないかのように振る舞っています。
 なぜ「被害」は想定しないのだろうか。なぜ被害を想定した法律を整備し対策を立てないのだろうか、法整備も無く対策も無いのに再稼働してよいのだろうか、当然すぎる疑問です。」
「総理大臣を筆頭とする幼稚な勘違い‥大多数の人々も疑問に思わない‥一億総勘違い状態ではないでしょうか」(同書p16)
 
素晴しい卓見です!目から鱗が落ちる思いがしたのは僕だけでしょうか。
確かに安全対策も防災対策も、不十分極まるものでしかないにしろ、まだしも論議があることに対して、三つ目にくるべき「公害対策」については論議の場すら定まっていません。
どうしてこうなってしまっているのか。日本には公害を取り締まるための法律として「環境基本法」があります。1960〜70年代ぐらいに「公害国会」と言われるほど、議会で公害対策が熱く論議された時期があって、民衆の熱意のもとに公害を防止する法律が次々とできたのです。
ところがこのときできた全ての法律に「放射性物質については原子力基本法その他の法律の定めるところによる」と書かれてしまったのでした。
そしてその「原子力基本法」では具体的な規制など書かれませんでした。このため原子力施設からの放射能汚染について法的な空白が生まれてしまったのでした。
 
山本さんはそこで「環境基本法」と「原子力基本法」の抜本的な違いを指摘しています。前者は「公害国会」などで作られた旧「公害対策基本法」を受け継いだもので、産業活動がもたらした公害被害から、人や環境を守るため、産業を規制するものとして生まれました。
「原子力基本法」は日本が国策として原発を導入した際に、原子力の利用による産業振興を図る目的で作られたもので、もともと規制法ではありません。山本さんはこれを「国民の力で作った法律と国策で作った法律」と指摘しています。
このため日本には放射性物質による公害を法的に規制してこれませんでしたが、福島原発事故以降、とても大きな変化が起きました。2012年6月27日に環境基本法13条の放射性物質適用除外規定が削除されたのです。
 
この意義はとてつもなく大きい。このことで国は、公害原因物質として位置づけられた放射性物質に対し、環境基本法が要求する義務や責任を果たさなければならなくなったのですから。
にも関わらず、国は、官僚達は、この作業をさぼっている。ならば民衆運動でこの作業をやらせよう。すでに法的に義務づけられている放射能公害への対処を国にやらせようというのが「放射能汚染防止法」制定運動の基本的な主旨なのです。
山本さんはこのことには世界的な意義すらあることも高らかに指摘されています。
 
「福島第一原発事故を契機に、日本では、法制度の欠陥が露呈し、国会は、その抜本的見直しを決めました。これは、事故によって偶然発生した課題ではありません。原発導入以来、無いかのように扱われ、背後に押しやられ、潜在化してきた課題が、事故を契機に一挙に表面化したに過ぎません。
 放射能汚染に体する法の欠落という課題は、世界共通の課題です。それが日本で先行して現実化しました。地球上で最も危険な、プレートのひしめき合う地震列島に54基もの原発を建設し、一度に三基もの原子炉をメルトダウンさせたからです。
 世界に先行して深刻な放射能汚染問題に直面した日本が、世界にさきかげて法整備に取り組まなければならなくなったのは当然のことなのです。
 この法整備問題は、回避しようともしてもできない歴史の必然だったのです。」(同書p27)
 
続く
 
*****
 

「放射能汚染防止法」を制定しよう HKB47市民勉強会IN岡山2017

https://www.facebook.com/events/1344613755575421/?acontext=%7B%22ref%22%3A%2223%22%2C%22action_history%22%3A%22null%22%7D

 

大沼淳一氏講演会

「ばら撒かれる放射能の実態と危険性」

2017年6月25日(日)

14:00~18:00(開場13:30)

会場:岡山コンベンションセンター 407会議室(定員80名)

参加費:1000円(福島原発事故由来の避難・移住者の方は無料)

講師:大沼淳一氏(原子力市民委員会)

主催:「放射能汚染防止法」を制定する岡山の会

【プログラム】

14:00~14:30 報告会
「原発事故対策に関する自治体への「質問書」提出」
杉原宏喜氏(「おのみち-測定依頼所-」)

14:30~16:00 大沼淳一氏講演
「ばら撒かれる放射能の実態と危険性」

(休憩)

16:15~18:00 パネルディスカッション
「放射能汚染防止法制定を目指す戦略」

大沼淳一氏(原子力市民委員会)
山本行雄氏(弁護士)
満田夏花氏(FoE Japan)
守田敏也氏(フリーライター)
佐藤典子氏(「放射能汚染防止法」を制定する札幌市民の会)

18 :00~質疑応答
○「伊方原発運転差止広島裁判」原告団ご挨拶
○「ふくしまいせしまの会」上野正美さんご挨拶

18:30~20:00 交流会(会場で自由交流)

【資料】
「制定しよう 放射能汚染防止法」(山本行雄、星雲社)
「核廃棄物管理・処分政策のあり方」(原子力市民委員会)

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記事明日に向けて(1389)高浜原発3号機の再稼働はまったく愚かで許しがたい暴挙だ!

2017年06月06日 17時00分00秒 | 明日に向けて(130...

守田です。(20170606 17:00)


本日、6日午後2時に関西電力は高浜原発3号機の原子炉を起動しました。「問題がなければ」7日午前2時頃に臨界に達し、9日午後2時ごろからプルサーマル発電による送電を開始するとされています。
まったく愚かで許しがたい暴挙です。強く抗議します!
これに対して、福井・関西・中部・佐賀・首都圏の16団体の連名で抗議声明が発せられました。僕はどこにも属していませんが、とても共感するのでここに転載させていただきます。
 
あらじめ重要なポイントを書いておくと、今回の再稼働は新規制基準にも違反している疑いが濃厚です。
関電は今年の1月20日に高浜原発のサイトでクレーン倒壊事故を起こしているのですが、その後の調査で、なんと現にあるクレーンの倒壊しうる範囲に、3・4号機の重大事故対処用の可搬型設備(電源車等)が多数設置されていることが明らかになったのです。
「重大事故」発生という緊急事態に対応するための非常用設備が、強風や地震で生じうるクレーン倒壊でもう使えなくなってしまう可能性がある場におかれているのです。こんなことでは「重大事故」の備えがなされているなどとはとても言えません。
新規制基準(設置許可基準規則)43条3項5号では、電源車等は地震や自然現象等の影響を受けないように配置するよう定めており、これは明確な違反です!即刻、4号機も3号機も止めるべきです!
 
僕はそもそも新規性基準は「重大事故発生」を前提としたものであるがゆえに、それを満たしていようとも再稼働は絶対に認められないと考えていますが、しかし今回の再稼働はその新規性基準すら満たさずに強行されています。
その点でも抗議の声を強めなくてはなりません。
以下、16団体の声明を転載します。ぜひ拡散してください。

*****

拡散歓迎
 
抗 議 声 明  2017年6月6日

高浜原発3号機の原子炉起動を糾弾する
関西電力は高浜原発3・4号機の再稼働を即刻中止せよ
地震でクレーンが倒壊する範囲に電源車等を配置するのは基準違反

 関西電力は本日(6月6日)、またも多くの反対の声を踏みにじり、高浜原発3号機の原子炉起動を強行した。5月17日の4号機起動に続く暴挙である。私たちはこれに強く抗議する。

 今年1月20日に関電が引き起こしたクレーン倒壊事故は解決していないどころか、さらに深刻な問題を提起している。1・2号機の設備に被害が及ぶだけでなく、クレーンが倒壊する範囲内に3・4号機の重大事故対処用の可搬型設備(電源車等)が多数設置されている。そこに地震でクレーンが倒れ掛かった場合の影響評価は国にいっさい報告されず、それゆえ審査はなされていない。
規制庁は、クレーン倒壊は審査の対象外だと述べている(5月25日の福島みずほ議員へのレク)。しかし、新規制基準(設置許可基準規則)43条3項5号では、電源車等は地震や自然現象等の影響を受けないように配置するよう定めている。電源車や放水砲、タンクローリー等をクレーンが倒壊するような範囲に保管するのは、明らかにこの基準に違反している。自らの基準も踏みにじって再稼働を進めている。

 私たちが行ってきた、京都府30km圏内自治体等への申入れや、京都府7市町地域協議会幹事会では、関電の安全管理全体に対して厳しい批判の声があがっている。さらに、福井県知事と高浜町長の了承だけで再稼働が進むことを批判し、同意権を求めている。住民説明会等で事故や再稼働について関電は直接住民に説明すべきだと述べている。しかし関電は、重大なクレーン問題についても住民に説明さえしていない。

 福島原発事故はいまだ終息しておらず、多くの被害者が困難な避難生活を余儀なくされている。それにも関わらず、関西電力は福島原発事故の悲惨な実態と教訓を省みることなく原子炉をまたも起動した。
 高浜原発でひとたび大事故が起これば、福井の住民はもとより、放射能は北からの風にのって関西全域に及び、30km圏内の京都府北部は「帰還困難区域」並みに汚染される。琵琶湖も汚染され、関西住民1,400万人に甚大な被害が及ぶことになる。とりわけ子どもたちへの影響ははかり知れず、避難弱者の避難はほとんど不可能となる。汚染水対策もないまま、若狭湾一体の漁業にも深刻な被害が及ぶ。このような壊滅的な被害を食い止めるためには、再稼働を中止するしか道はない。しかし関電は、福島の悲惨な被害から発せられる「原発さえなければ」という無念の声を聞こうともしない。

 島﨑邦彦前規制委員は、4月24日の大飯原発差し止め控訴審(名古屋高裁金沢支部)で「入倉・三宅式は過小評価。大飯原発の再稼働を許可してはならない」と証言した。高浜原発の基準地震動もまた入倉・三宅式で計算されたものであり、過小評価のままだ。実際に地震が起これば、はかり知れないほどに深刻な被害が生じる恐れがある。

 プルサーマル炉の3号機にもアレバ社のMOX燃料(プルトニウム燃料)が装荷されている。しかし、ウラン燃料用の原子炉で異質で危険なプルトニウムを燃やすのは無謀だ。さらに、品質管理データは非公開のままだ。関電は以前に、英国BNFL社で製造されたMOX燃料にデータ不正があることを知りながら、市民がそれを暴くまで隠し続けていた。未だ、隠したことを認めず、詫びていない。それにも関わらず、原子力規制委員会もフランスの原子力規制機関も品質データをチェックすることもしない。

 使用済MOX燃料の処分方法はなく、厄介な核のゴミを高浜原発に超長期に保管することになるが、高浜町の住民に説明することさえしていない。また使用済燃料全般を運び出す見込みもなく、使用済燃料プールは満杯に近づいている。京都府や府北部の自治体は「中間貯蔵」受け入れに明確に反対している。行き場のない核のゴミをこれ以上増やすなど、無責任極まりない。

 私たちは、高浜3号機の原子炉起動に抗議するとともに、直ちに3・4号機の再稼働を中止するよう強く求める。

2017年6月6日 (16団体)
原発設置反対小浜市民の会/ ふるさとを守る高浜・おおいの会/ 原発なしで暮らしたい宮津の会/ グリーン・アクション/ 防災を考える京田辺市民の会/ 避難計画を案ずる関西連絡会/ 美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会/ 脱原発へ!関電株主行動の会/ おおい原発止めよう裁判の会/ 子どもたちに未来をわたしたい・大阪の会/ 脱原発はりまアクション/ 脱原発わかやま/  核のごみキャンペーン・中部/ 玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会/ 国際環境NGO FoE Japan/ 原子力規制を監視する市民の会

連絡先
グリーン・アクション:京都市左京区田中関田町22-75-103 電話:075-701-7223 FAX:075-702-1952
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会:大阪市北区西天満4-3-3星光ビル3階 電話:06-6367-6580  FAX:06-6367-6581
原子力規制を監視する市民の会:東京都新宿区下宮比町3-12-302  電話:03-5225-7213 FAX: 03-5225-7214
 
*****
 
声明の転載はここまでです。
高浜4号機に続く3号機の再稼働強行という事態の中で、原発問題に関するお話を木曜日と土曜日に行います。
木曜日は福島からの避難者、齊藤夕香さんとの1時間の対談を通じて、土曜日は1時間半をいただいての講演を通じてです。
以下に案内を記しますので、ぜひお越し下さい!

知ってほしいな福島と避難・めっちゃ気になる再稼働
齊藤夕香+守田敏也対談
主催 京都ファーマーズマーケット
日時 6月8日午前11時から12時
場所 京都市左京区田中高原町5 カフェプリンツさんのお庭

*** 

原発事故から6年
-原発再稼働で市民の命と生活は守れるか?
6/10・フリーライター守田敏也さんの「原発事故取材最前線」

■6月10日(土)14:00~16:30(13:30開場)
■ラボール京都  第1会議室
■参加費:500円
■主催:小山田春樹と京都市民ネットワーク

<ご案内>
福島第1原発の事故から6年余。今なお続く深刻な放射能汚染。故郷に帰れない被災者の苦悩は続いています。
しかし、電力各社は何事も無かったかのように原発再稼働へ向けて動き出し、安倍政権は原発の海外輸出まで行っています。
京都府のお隣の福井県では、高浜、大飯原発などの再稼働準備が着々と進んでいます。 
もし福井の原発で事故が起きたら、私たち京都市民の生命と環境を守ることは出来るのでしょうか?

小山田春樹と京都市民ネットワークの講演会企画第2弾は、原発問題です。
フリーライター守田敏也さんを招き、原発取材の最新情報をお話ししていただき、安心安全なまちづくりを討論します。
 
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明日に向けて(1388)書評『福島甲状腺がんの被ばく発症』(宗川吉汪著 文理閣)

2017年06月05日 12時00分00秒 | 明日に向けて(130...

守田です。(20170605 12:00)

福島で広がる甲状腺がんが、福島第一原発事故で発せられた放射能による被曝によって増えていることを力強く実証した本が出版されました。
今回の記事の表題にも示したようにタイトルは『福島甲状腺がんの被ばく発症』。日本科学者会議に属する宗川吉汪さんの執筆のよるもので文理閣から上梓されています。
実は宗川さんが書かれた本としてはこれが2冊目になります。初めてこの課題を扱った書のタイトルは『福島原発事故と小児甲状腺がん―福島の小児甲状腺がんの原因は原発事故だ』でした。
宗川さんの他、大倉弘之さん、尾崎望さんとの共著で、発行は本の泉社です。この書のことも踏まえつつ、宗川さんの新著についてご紹介したいと思います。

福島では事故当時0歳から18歳だった「こども」を対象に大掛かりな甲状腺の検査が行われてきました。司ってきたのは福島県です。
この検査の特徴は、「先行検査」と「本格検査」の二段階が行われたことです。
なぜそうしたのかと言えば、小児甲状腺がんは、これまで10歳以下では100万人に1人の発症率と言われるきわめてまれな病気でした。
このため国内では大規模調査がなされたことがないので、まずは放射能の影響が現れない段階の検査を「先行検査」として行い、その後に「本格検査」を行って原発事故の影響を調べるとされたのです。

またもう一つの特徴は検査が三つの地域に分けて行われたことでした。
最初の検査は最も放射線被曝量の多かった福島県の浜通りを始めとした13市町村で行われ、続いて福島県内では中程度の被曝量だった中通りを中心とする12市町村で、最後に残りの34市町村という具合に進みました。
34市町村には会津地方とともにいわき市や相馬市など浜通りの南端、北端の市なども入っていました。

検査を行った福島県は「チェルノブイリ原発事故の経験から事故で発生した放射能を原因とする甲状腺がんの発症は5年以上経ってからなので福島でも少なくとも数年は発症はありえない」ことを前提としました。
結果は第20回「県民健康調査」検討委員会(2015年8月31日)で発表され、第23回検討委員会(2016年6月6日)で追補版が公表されました。
後者によれば検査を受けたのは36万7672人。このうち細胞診で甲状腺がん(悪性ないし悪性疑い)と診断されたのは116人(女子77人、男子39人)。平均年齢は17.3±2.7歳でした。
この116人のうち102人が手術を受け、良性結節(がんではない)1人、乳頭がん100人、低分化がん1人という結果でした。

100万人に1人と言われてきた病気が37万人弱に100人以上も現れたわけですが、福島県はこれらを被ばく影響によるものとは認めませんでした。
多く発見されたのはこれまでにない大規模で徹底した調査が行われため、「スクリーニング効果」のためだと言いました。
これに対しては、多くの人々が「そんなことはない」と主張し、数学的解析などを行い、先行調査でも被ばく影響が認められることを指摘しています。筆者もそう考えています。

宗川さんの見解のユニークさは、この議論には関わっていないことです。
先行調査の結果を「原発事故による影響が現れる前の状態が現れたもの」という見解をひとたび受け入れ、「本格調査」との間の差異を分析し、その結果、福島原発事故の影響があることを証明する方法を採ったのです。
しかもそれほど難しい数学的解析を使わずとも、十分に被ばく影響を見て取ることができる点を導き出しているのも本書の特徴の一つです。

このため多くの方に、まずは本書を手にとって、宗川さんの論述に従いつつ、簡単な計算もしながら被ばく影響がどのように現れているのかをつかんでいただきたいと思います。
そうすると自分で被ばく影響の有無を吟味することができます。統計計算式を一つ使用することが必要ですが、あとは誰もが自分で簡単に検証できるように論述してあります。この点の工夫も素晴しいです。
 
ぜひご自分で読むことでこの証明を体感していただきたいのですが、そのためにあらかじめ解説を加えておきたい点があります。第6章の「罹患率の比較」についてです。
病気の発症を調べるためには「有病率と罹患率」の違いを知っておく必要があります。前者ではある時点での患者数を調べるのですが、これはインフルエンザの流行などを調べる時などに効力を発揮します。
後者はある一定の期間にその病がどれだけの割合で起こっているのかを調べるもので、甲状腺がんの社会調査ではこちらが重要になります。

このため観察期間が重要になるのですが、「先行調査」がどれだけの期間を調査対象としたのかというと、福島原発事故による影響が出る前の全期間となりますから、調査を受けた人のその時の年齢と等しくなります。
このため例えば10歳で発症した人は10年間に発症したと数えられますが、先行調査は2013年3月まで行われていて、0歳から18歳だったものの中で1歳大きくなったものがいると考えられるので発症時の最大年齢は19歳になり、最大は19年間ということになります。
調査対象は調査の時に0歳から最大で19歳だった「子ども」たちなので、それぞれの年齢の人口が同じと仮定すると平均では9.5年の間の発症と考えることができます。

ところが本書ではこの発症期間を8歳から19歳までとし平均で6.5年としています。実はここが前著と本書の差異、計算の緻密化がなされたところでもあります。
どうしてなのかというと、福島県の調査で、事故時に7歳以下だった子どもにがんの発症がまったくみられていないため、それを反映させたて、0歳から7歳までを調査期間から省く判断を行ったのです。
このため前著では平均9.5年とされた期間が本書では平均6.5年とされています。
 
「本格調査」の方はどうでしょうか。この調査の期間は先行調査が終わってから本格調査がなされたときまでですから比較的短めです。
3つの地域間で多少の違いがあり、最初の13市町村では2.75年、あとの12市町村と34市町村では2年でした。このことを踏まえて、統計計算にかけると95%の信頼性で3つの地域の年間の罹患率がはじき出されてきます。
重要なのは、もし放射線被曝の影響がみられないのなら、先行調査と本格調査で出される患者率の数値は、ほぼ重ならなくてはならないということです。

ところが線量の高い目の13市町村では、先行調査で10万人中7.5〜13.5人に対して、本格調査では22.0〜47.2人とまったく重ならない値が出ました。
線量が福島県内では中ぐらいの12市町村では、先行調査で9.0〜11.7人に対して、本格調査では18.9〜30.5人とやはり重ならない値です。
線量が低めの34市町村では、先行調査で6.9〜10.0人、本格調査で8.9〜20.2人とわずかに重なるもののほとんどはやはり重ならない結果となっています。

これらから宗川さんは以下のように結論しています。
「甲状腺がんの発症に原発事故が影響していることを明瞭に示しています。しかも罹患率の上昇は高線量地域で最も高く、中線量地域、低線量地域の順でした」と。(p34)
福島県の提示した方法に沿って評価してみてもこの結論が出てくるのです。もはや否定しようのない事実であることを宗川さんは見事に証明されています。

さて宗川さんによる福島の甲状腺がんの多発が原発事故由来であることの証明はここまででつきるのですが、この先で宗川さんはさらに大胆な発言をされています。
一つには国際原子力ムラによっていまなお、被ばく発症の否認が行われていることへの批判ですが、宗川さんはさらに進んで二つ目に、核災害の本質はヒバクにあり、そのヒバクを否定する「放射能安全神話」を打ち破るべきことを力説しています。そこでは、さながら宗川さんによる福島の甲状腺がんが被ばくによるものであることの証明が、本書のこの最終部分の主張を導き出すための論理的手順であったかと思わせるような力強い言葉が並んでいます。

おそらくは読者を驚かせるであろうことは、ここで宗川さんが、国際原子力ムラのみならず、他ならぬ脱原発運動の中でも福島の甲状腺がんの発症に関しての軽視や無視があることを怒りを込めて論じられていることです。
宗川さんが指摘しているのは京都市で2016年3月に行われた「バイバイ原発きょうと」集会の呼びかけ文に宗川さんが「福島の小児甲状腺がん多発の原因が原発事故であることは明らかです」という文言の挿入を提案したところ否定されてしまったことです。理由は「機が熟してない」とのこと。これを宗川さんは「はっきりしていない、間違っているかもしれない、小児甲状腺がんの多発は原発事故とは無関係かもしれない」ということだと捉えています。
しかし小児甲状腺がんすら「起こらない」のならば、「原発事故など恐るるに足りず」になってしまうとは言えないか。「私たちは原発事故で放出される放射能ががんを含めたさまざまな病気を引き起こす恐れがあるからこそ、原発に反対しているのではないでしょうか」(p54)と宗川さんは指摘されています。

さらに宗川さんは同じく2016年3月6日に福島県二本松市で開催された「原発ゼロをめざして今、福島から―あの日から5年」というテーマのシンポジウムについても批判的に取り上げています。
全国革新懇と福島革新懇が主催したものですが、その記録集を紐解くと「驚くべきことに、小児甲状腺がんについて、主催者あいさつ、地元あいさつ、4人のシンポジストの報告、3人の福島現地からの報告のいずれでも一言触れられていませんでした」と言うのです。その上で宗川さんはこう述べられています。「“放射能安全神話”にとらわれてヒバクから目をそらしたい脱原発運動は、結局は、福島の被害者や原発ゼロを願う多くの国民の願いから遊離してしまうと危惧します」。(p57)

まったくもってその通りです。ヒバクと向き合わない限り、なぜ原発をなくさなければならないのか、根本の論理が揺らいでしまいます。
放射能は人を傷つけ、さまざまな病を引き起こすが故に危険なのです。その点で私たちは甲状腺がんの発症にとどまらず、いま起こっているであろうさまざまな被害をきちんと把握し、何よりも傷ついた被害者を守り、政府に保障させなければなりません。いや福島原発事故で飛び出して来ている放射能からのこれ以上のヒバクをなんとしても止めなくてはならないし、いわんや次なる原発事故など絶対に起こさせないようにしなくてはならない。まさに放射能が危険なものだからです。

読者のみなさんは、本書の最後に出てくるこの宗川さんの熱いメッセージを読まれて、それでもう一度、福島の甲状腺がヒバク由来であることを、明快かつ簡潔に証明された前半部の主張に立ち戻っていただきたいと思います。
本書が原発ゼロを目指し、平和で豊かな世を目指すすべてのみなさんの中で十二分に活用されんことを願って止みません。

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明日に向けて(1387)原子力災害対策は災害対策全般から解き明かすと分かりやすい!(5日に草津市でお話しします)

2017年06月04日 23時30分00秒 | 明日に向けて(130...

守田です。(20170604 23:30) 

明日(5日)に滋賀県草津市でお話しします。くらしとせいじカフェ主催の「原発と被曝@議員さん向け勉強会」にてです。
前回(1386)でこの草津の勉強会に向けて「被曝の危険性は原爆から解き明かして行くと分かりやすい!」という記事を書きました。今回は後半部分、原子力災害対策をいかに進めるのかの要点をまとめておきたいと思います。
 
この間、関西電力が高浜原発4号機の再稼働を強行しました。さらに6日に3号機も動かそうとしています。大変な暴挙です。
再稼働強行について、何が一番に批判されるべきでしょうか。ポイントは原子力規制委員会が「重大事故を発生しうると考えてあらかじめ対策をとっておく」と言っていることにあります。とんでもないことです。
規制委員会が一昨年夏に、高浜原発再稼働に向けて高浜町などで行った説明会では次のように語られています。
「(古い)規制基準は核燃料が溶けてしまったり、放射性物質が大量に外に漏れるような重大事故を発生させないことを重視し、重大事故の起きた後の対応が十分にできていなかった。」このため「重大事故が発生しうると考え、あらかじめ可能な限り対策をとっておくべきというのが教訓だ」と。
 
完全な居直りです。問題は「重大事故を発生させないことを重視し」ながら「その発生を未然に防ぐことができなかったこと」にあるのです。しかもチェルノブイリ原発事故があったときに、日本の原発推進派は「あんな事故は絶対に日本では起きない」と言い張ったのでした。それが国民や住民との約束だったわけですから、それが破れ、重大事故を未然に防げなかった点で、もう原子力政策は閉ざすべきなのです。
ところが言うに事欠いて「重大事故が起きないと言って来たのが間違いだった」「これからは重大事故にも備える」と言い出したのです。暴挙以外のなんでしょうか。
 
しかも言葉の入れ替えも行われています。もともと「重大事故」とは「過酷事故=シビアアクシデント」のことを指していました。過酷事故とは設計上の想定を突破されてしまった事故のこと、設計士さんお手上げの事故で、プラントとして破産をつきつけられた事故なのです。
あらゆるプラントは事故が起きた時にどうそれを収束するかの安全装置がついていてそれを含めて許認可されます。当たり前ですが事故が起こると止めようのないプラントなど危なすぎて審査段階で通らないのです。
そもそも設計段階の想定を越えてしまうわけですから、その先に何が起こるか予想もつかない。だから本来「シビアアクシデント」対策は、想定できないことへの対応ということになるので論理矛盾でしかないのです。
 
実際にはどうかというと、新規制基準の中で格納容器が壊れる事態が想定されており、その時のための放水砲が準備されています。
以下、関西電力のホームページをご紹介するのでみてください。
 
本当に格納容器が壊れてしまった場合、この放水砲からの水があたるところに放射能がうまく流れる保証などどこにあるのでしょうか。またそのとき放射能は見えるのでしょうか?こんなもので十分に撃ち落とすことができるのでしょうか。
答えは一つ、「やってみないと分からない」でしょう。つまり確実な対策でもなんでもないのです。そもそもこの放水砲が壊れてしまう可能性だって十二分にあります。こんな不確実なものを「安全対策」と言ってはならないのです。
新規制基準のもとでの対策の矛盾はほかにも幾らでもあげられますが、抜本的には「重大事故」=「過酷事故」が起こりうるのであったら、再稼働は認められないのです。明日もこの点をきちんとお話しします。
 
続いて考えなくてはならないのは事故対策の問題です。すでに「重大事故=過酷事故」がおきうることを前提に川内原発1、2号機、伊方原発3号基、高浜原発4号基が動いていて、3号基も動こうとしています。
だからこそ原子力災害に備えざるを得ません。いや原発は停まっていても、燃料プールの中に使用済み核燃料がある限り危険なので、安全状態に移行するまで原子力災害対策は必要です。
その際、対策の基軸に何をすえるのが最も合理的なのか、とりあえずは何に着目すべきなのかというと、すべての災害に共通する事項=災害に直面した時の人間心理の問題だと言えます。
このためひとたび災害全般に視点を拡張すると良い。そこから再度、原子力災害対策の特殊性に戻るのがもっとも合理的なのです。
 
災害時の人間心理の中でも最も重要なのは「正常性バイアス」です。私たちは日常生活の中で命の危険にむきあった経験をほとんど持っていないので、突然、危機に向き合うと心にバリアを生じさせて危機を認めなくなりがちです。
例えば建物の中にいて火災報知器が鳴った時に「火災訓練をやっているの?」「誤報ではないの?」などと思いがち。その方が心が安心できるからなのですが、このために避難が遅れてしまいます。
このとき周りの動きに自分をあわせてしまう「集団同調性バイアス」も働きがち。にもかかわらず危機管理者の側は危機に直面すると人々はパニックを起こすと過大に思い込んでいて、危機をきちんと伝えないことが重なってしまいます。
これを「パニック過大評価バイアス」と言いますが、この三つのバイアスが重なると人は逃げ出すことができないのです。実際に多くの災害現場でこれらのことが繰り返し起きています。
 
「正常性バイアス」という恐ろしい心理的ロックを解除するのに最も有効なのは避難訓練です。各人が主体的、能動的に「いざとなったらどうするのか」を想定しておくこと、対処の手順を決めておくことが最も大事です。
あらゆる災害に共通なことは、迫り来る命の危機から「とっとと逃げる」こと。もちろん「逃げる」ことには火山の噴火時に遮蔽物の後ろにまわって飛来物から身を隠すことなども含まれます。
また大事なのは「率先避難者」になること。人々が正常性バイアスにはまって硬直してしまったとき、誰かが「逃げろ」と叫んで行動に移れば、心理的ロックが外れ、多くの人が逃げ出せることにもつながるからです。
 
さて詳しくは、『原発からの命の守り方』を読んで頂きたいのですが、ポイントはこれがあらゆる災害対策に適用できる点です。だからとくに議員さん達には各行政体でまずはこの考えを取り入れた災害対策を進めて頂きたいです。
とくに私たちが住んでいるこの国は地震大国であり、災害大国です。その上この間、地球規模での気候変動が起きており、想定外の災害が連発しています。これにしっかり備えるために、人々の意識啓発が最も効果があります。
次にどんな災害が勃発するか分かりませんが、蓋然性の高いものとしてあげられているのは南海トラフ地震です。最悪の場合は駿河湾から四国沖まで一斉に動き、大津波が海岸線を襲う可能性があります。東日本大震災を大きく上回る被害が予測されています。
東日本大震災では国内では被災者980万人を残りの1億1700万人が助ける関係に入りましたが、南海トラフ地震で予想される被災者は3500万人、助ける側は9200万人となります。
1対12であったものがなんと2対5になってしまう。こうなったら多くの地域が自助、近助で、自力で自分たちを助けるしかなくなります。こうした点を見据えても災害対策力を何重にもアップしておくことが問われていることが明らかです。
 
そもそも僕はこのことこそが「国防」の最重要環だと思っています。そのためには自衛隊を災害救助隊に抜本的に改編していくことこそが必要です。そして災害救助専門部隊ができたらそれを必要に応じて世界にも派遣すれば良いのです。
そうしたら「あんなに良い国を攻撃するわけにはいかない」と必ずなります。これは150年前に和歌山沖でトルコのエルトウードル号を大島の漁民の方達が助けたが故に、いまだにトルコの方達が日本に好印象を持って下さっていることなどを見ても明らかです。
現政権はあまりに「国防」をないがしろにしている。いや多くの人々が私たちに真に迫り来る危機から目をそらしているかそらされてしまっています。騙されている!ここからの目覚めのためにも全国的な災害対策の強化が必要です。
 
原子力災害対策にもこの考え方をそのまま適用すれば良いのです。このために重要なのは「いざとなったらどうするのか」を想定しておくこと、対処の手順を決めておくことです。
まずは原子力災害がどのように起こるのかのリアリティをきちんと把握する必要があります。その上でやはり「とっとと逃げる」ことを軸に対策を重ねておく必要があります。
原子力災害に特殊な事態は放射能が飛んでくることです。このうち薬で対処できるのは唯一、放射性ヨウ素による甲状腺への被曝からの防護です。安定ヨウ素剤を放射能の飛来前に飲むことが必要なのですが、これが災害対策の一つの軸になります。
 
薬を扱うときに大事なのは事前の学習です。どんな薬でも「どんな効果があるのか、どのように飲むのか、副作用はどうなっているのか」を事前に把握しておかないとにわかに飲めないからです。
このため安定ヨウ素剤の配布とともに、きちんとした学習会を行うことが必要ですが、この過程が放射能被曝とはどのようなもので、いかに守るかの知恵を身につける階梯にもなるのです。
大事なポイントは、飛来する放射能のうち、防げるのは放射性ヨウ素による甲状腺被曝だけであること。だからこれを飲む時は、同時に「とっとと逃げる」べき時です。
「とっとと逃げる」ときに安定ヨウ素剤も飲むというのが、もっとも合理的な対処で、だからどう逃げるのかを事前に決めておくことが大事です。
 
この点からも原子力災害対策でも一番大事なのは、事前の学習と想定だということ、住民啓発だということです。
何せ原子力規制委員会は「重大事故はおきうる」と言っているのです。だったら起きたらどうなるのか、どんな危険性が迫り来るのか、これに対してどう対処すればいいのかを考え抜き、可能な防護を重ねて行く必要があります。
この際、誤摩化しては行けないのは、完璧な防護は不可能だと言うことです。原子力災害はどこまでも広がりうるものだからです。格納容器が完全に崩壊してしまえば被害はチェルノブイリや福島原発事故をもはるかに上回ってしまう。
しかもこうした事故は大地震などの自然災害との複合事態でやってくるかもしれない。そのことも覚悟するしかないですが、一方で実際の事故は反対にどこでとどまるかも分からない。最悪のずっと手前で止まる可能性ももちろんあります。
だから原発事故に対しては完璧な防護は無理でも少しでも被曝を少なくすること=減災の観点で対処することが大事です。そのためには一にも二にも、事前の備えを重ねておくことです。
 
行政が対策をとる上でもっとも合理的な道は、自然災害への対策と重ねて原子力災害対策を進めることです。原発事故自体が自然災害の中で起きる可能性が高いわけですから、その点でもこれが理に適っています。
具体的なことも述べましょう。地域の防災訓練のときにぜひ原子力災害対策を付け加えてください。地域の方達が「災害対策モード」になっているときに、原子力災害対策の勉強会を一緒に行うと最も効果があります。
そのとき、語るべき内容は、拙著『原発からの命の守り方』をご参照ください。もちろんお呼びいただければどこにでも僕自身が講師として駆けつけます。
 
災害に対する住民の能動性を高めましょう。その中で原子力災害対策も合理的に進めていきましょう。災害に強い、豊かで安心な町をみんなで作っていきましょう!
 
*****
 
原発と被曝@議員さん向け勉強会 主催 くらしとせいじカフェ

原発のことをエネルギー政策だけじゃなくて被曝の観点からも語ってほしいー!と空に向かって叫んでるだけじゃぁ語ってなどもらえないことに気づいたので私たちが「原発」をどうみてどう考えているのか、「市民の声を国に届けることが政治家の役目です」と言ってくれる議員のみなさまに知っていただくことにした企画。(もちろん議員でない方も大歓迎)

この機会を是非活かし街宣、駅立ち、スピーチに展開くださいねー。市民のこころに響くのはリアリティのある言葉です。外部被曝は燃える石炭に手をかざすようなもの。内部被曝は燃える石炭をそのまま飲み込むようなもの。わたしたちにの身近にある「命」や「くらし」の観点から原発をどうか訴えていただきたいと思っています。様々な場所でお世話になっている守田敏也さんが今回もお力添えくださいます。

そして…お願いごと。手弁当で動いています。参加費は1000円以上のカンパということでチカラをかしてください。カンパは全て講師代と会場費にさせていただきます。

時:6月5日(18時30分から)場:草津まちづくりセンター306 尚、参加される方は申し込みをお願いします。09082080423 にしむら

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明日に向けて(1386)被曝の危険性は原爆から解き明かして行くと分かりやすい!(5日に草津市でお話しします)

2017年06月03日 10時30分00秒 | 明日に向けて(130...

守田です。(20170603 10:30) 

6月5日に滋賀県草津市でお話しします。くらしとせいじカフェ主催の「原発と被曝@議員さん向け勉強会」です。
主旨が以下のように説明されています。
「原発のことをエネルギー政策だけじゃなくて被曝の観点からも語ってほしいー!と空に向かって叫んでるだけじゃぁ語ってなどもらえないことに気づいたので私たちが「原発」をどうみてどう考えているのか、「市民の声を国に届けることが政治家の役目です」と言ってくれる議員のみなさまに知っていただくことにした企画。(もちろん議員でない方も大歓迎)」
議員でなくても参加OKということで、実際、いろいろな方が集まってくださるようですが、今回は僕としても各議会でどうやったら話が通していけるのかなども考えながらお話ししようと思っています。
 
そのために二つのベクトルから「原発と被曝」に迫りたいと思います。
一つは何と言っても被曝の危険性についてです。原発を推進する国際原子力村は被曝影響を非常に軽くあつかうことで、事実上、たくさんの人々に繰り返し被曝を強制し続けています。
とくに福島原発事故後は膨大な放射能が環境中をさまよい続けているにも関わらず、積極的な防護策をとらず、避けられる被曝までもが放置されてしまっているとんでもない状況が続いています。
この非道性を暴いていくことが問われていますが、私たちがしばしば直面するのは、原子力村とは関係のない良心的な科学者や医師でも、被曝影響を軽んじているとしか思えない場面に繰り返し遭遇することです。
いや率直にいって原発ゼロを掲げる人々の中でも被曝影響を過小評価している方も見受けられます。しかもその数はけっこう多いのではないでしょうか。
 
このことが非常によく反映していることがあります。この国の政党や「進歩的」と言われる政治グループ、あるいは労働組合の中で、ただの一つも、福島原発事故に際して、避難をすることを打ち出したところがないということです。
何も2011年のことだけを言っているのではなくて、今も同じことが継続中です。福島をはじめいまも多くの地域が避難したほうが良いところです。しかしそれをいまも打ち出している政党も政治グループも(少なくとも僕の知る限りは)ありません。
僕自身は事故直後は本当に必死になって原発から離れることを提言し続けたので、一つの政党も団体も「逃げろ」と言わないことに正直なところ「面食らう」思いがありました。
暫く経って、災害対策の面から「正常性バイアス」=危機に直面した時に心理的に受け入れることができず、事実を歪曲してとらえ、心理的な平穏を保とうとする傾向に多くの人がはまっている事実を知り、「心理的ロック」の解除を目指すようになりました。
しかしそれにしても僕などが論陣をはらずとも、そのうち放射線に関する専門家が続々と出て来てきちんと危険性を喚起し、防護の徹底化を導いてくれると思っていたのですが、結局、そういう方はごくごく稀にしか出て来なかった。
 
そのごく稀な方であった被爆医師の故肥田舜太郎さんや、琉球大学名誉教授の矢ケ崎克馬さんなどに馳せ参じて教えを請いつつ、なぜなのだろう、どう考えたらいいのだろうと思って僕が教わったのは、放射線被曝の問題が広島・長崎への原爆投下と大きくつながっていることでした。その歴史を辿ることからいっぺんにたくさんのことが見えてきて、被曝過小評価のからくりが見えてきました。
例えば、どうして福島原発後に僕が期待したように「放射線の専門家」が民衆の前に現れ、「逃げろ」と連呼してくれなかったのかと言えば、これらの人々が学んで来た「放射線防護学」が広島・長崎への迫害の中で歪められて生まれて来ていたからでした。
端的に言って、いま放射線の人体への害の見積もりは、原爆による被爆者の調査データの蓄積の上に成り立っています。では誰がそれを作ったのか。あるいは誰がデータをとったのかと言えば、原爆を投下したアメリカ軍なのです。加害者のアメリカ軍が被害者の被爆者を調査した。そんな絶対にあってはならない調査が「放射線防護学」の成り立ちにまとわりついているのです。
 
だから私たちは、放射線被曝のことを考える時にもう一度、原爆に立ち戻って考え直すべきなのです。
私たちは原爆のことについてきちんと知っているでしょうか。「この国に生まれ、教育を受けてくれば一通りのことは知っている」と誤解してはいないでしょうか。とんでもない!私たちはずっと騙され続けて来ています。
例えばみなさんは広島への原爆投下時間をすぐに言えるでしょうか。時刻は午前8時15分。そこまでは言える方も多いでしょう。ではなぜその時間だったかをすぐに答えられるでしょうか。
8時15分に投下した理由は、それまでアメリカ軍が偵察機から撮った写真などから、この時刻に広島の人々が最も多く建物の外に出ていることが分かっていたからです。つまり最も「効率よく」熱線と放射線、爆風を浴びせる時間帯が狙われたのです。
 
要するに原爆投下は完全なる人体実験だったのです。アメリカはそんな大変な戦争犯罪を遂行したのです。大虐殺です。しかしながら私たちの多くはアメリカのこの戦争犯罪行為を正すべきことすら忘れてきているのではないでしょうか。
何も「愛国主義」を唱える右翼などに頑張って欲しいなどと思っているのではありませんが、しかしやれ靖国がどうだと叫ぶ人たちからアメリカの原爆投下や都市空襲という戦争犯罪を告発する人々が出て来ないのはどうしてでしょうか。
答えは単純です。みんな騙されてきたからです。僕は日本軍による南京大虐殺が許されないように、ナチスのユダヤ人大量虐殺が許されないように、アメリカの原爆投下も許されない戦争犯罪であると確信しています。
 
それだけではありません。十万を越える人々を広島でも長崎でも殺害し、それを何倍も上回る人々に深刻な傷害を負わせたアメリカ軍が、その後に広島や長崎を占領し、ジャーナリストを追い払って独占的かつ排他的な「調査」を行ったのでした。
加害者が被害者を調査して、どうしてそれできちんとした事実が明らかにされるでしょうか。繰り返しますがそもそもそんな調査は絶対にあってはいけなかったのです。第三者による調査でなければ被害の実相など解き明かされるはずがないからです。
しかもアメリカにとって広島・長崎での原爆による大量虐殺は、核戦略の始まりだったのでした。その後にアメリカは急ピッチで核実験を繰り返しました。1954年のビキニ環礁における核実験では広島原爆の威力を1000倍上回る水爆ブラボーを炸裂させました。この過程でアメリカは太平洋の島々の人々や多くの漁船を深刻に被曝させましたが、それだけでなく自国民をも激しく被曝させ続けました。
太平洋での炸裂で生まれた放射能雲がアメリカ本土まで届いたこともあれば、アメリカ国内でも核実験が繰り返されたこともありました。さらに兵士を実験材料として動員し、原爆のキノコ雲=放射能の固まりに向けてを突撃させたりしたこともありました。
 
それだけではありません。アメリカはそもそものインデアンの人々を使ったウラン鉱の採掘から、核兵器製造の過程でのプルトニウム火災=膨大な量の漏れ出しなどを繰り返しており、さまざまな形で多くの人々を被曝させ続けてきました。
アメリカ軍はそれを核戦略を進める上で避けて通れない道と認識していた。そのために、被曝影響を徹底的に小さく見積もり、反対の声が上がらないようにすることが必要だったのです。
かくして大気中に放射能をばらまき、地球全体を激しく汚染する大気中核実験を、アメリカはなんと200回以上も行っています。地下核実験を含めれば回数は1000回に達します。
そのために本当にたくさんの放射能がばらまかれ続けました。健康に良いはずがない。いま日本では「2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで死ぬ」と言われていますが、そんなもの自然状態であるはずがない。私たちはみな被曝させられているのです。
 
みなさんは第五福竜丸の名を知っているでしょうか。ビキニ環礁の核実験で被曝したマグロ漁船です。ではそのときに同じ海域におよそ1000隻もの漁船がいたことはご存知でしょうか。多くの方が知らないと思います。これまた騙されて来たからです。
この漁船はどれだけの汚染された魚を持って帰ってしまったでしょう。しかも漁船は日本の太平洋側の主立った港のすべてから出港していたことが分かっています。全国に汚染された魚が水揚げされていたのです。
1954年の核実験のあと、魚が放射能計測され、捨てられることもありましたが、それもこの年の暮れまででしかなかった。大気中核実験は1963年まで続けられたのにも関わらずです。
この頃、日本は漁業を主要産業の一つとしていました。住民の生活も多く魚介類に依拠し、肉は贅沢品とされていました。日本中の人々が毎日のように魚を食べて暮らしていましたが、その魚が核実験で汚染され続けていたのです。
いやここでもそれだけではないことを強調しなくてはなりません。太平洋を覆った放射能雲は時には日本全土を覆ってしまっていたのです。魚を介してではなくてもこの国は幾重にも被曝している。
最も深刻な影響が考えられるのは沖縄です。戦後にアメリカに長く占領されていた沖縄では雨水を飲料水に使っていました。そこに大量の放射能雲が来ていたのです。それを沖縄の人々は飲み続けてしまいました。
 
私たちがいま、しっかりと目を向けなくてはならないことは、私たち全員がヒバクシャだということです。がんが多い事実をけして自然状態と受け取ってはなりません。いやいま多発している精神疾患なども被曝との関連を疑って当然です。
もはや騙され続けてはなりません。現代の放射線防護学が被曝を強制してきた側が自らの非人道的犯罪を隠すために作り上げて来たこと、だから被曝影響の過小評価が体系の中に埋め込まれていることをしっかりとつかまなければなりません。
同時にそこに目をやれば事実は単純に見えてきます。だから5日の勉強会の前半ではこの歴史的事実をきちんと掘り下げたいと思います。
 
これ以上の被曝を拒否するために、これ以上騙され続けないために、一緒に学びましょう!
 
 
*****
原発と被曝@議員さん向け勉強会 主催 くらしとせいじカフェ

原発のことをエネルギー政策だけじゃなくて被曝の観点からも語ってほしいー!と空に向かって叫んでるだけじゃぁ語ってなどもらえないことに気づいたので私たちが「原発」をどうみてどう考えているのか、「市民の声を国に届けることが政治家の役目です」と言ってくれる議員のみなさまに知っていただくことにした企画。(もちろん議員でない方も大歓迎)

この機会を是非活かし街宣、駅立ち、スピーチに展開くださいねー。市民のこころに響くのはリアリティのある言葉です。外部被曝は燃える石炭に手をかざすようなもの。内部被曝は燃える石炭をそのまま飲み込むようなもの。わたしたちにの身近にある「命」や「くらし」の観点から原発をどうか訴えていただきたいと思っています。様々な場所でお世話になっている守田敏也さんが今回もお力添えくださいます。

そして…お願いごと。手弁当で動いています。参加費は1000円以上のカンパということでチカラをかしてください。カンパは全て講師代と会場費にさせていただきます。

時:6月5日(18時30分から)場:草津まちづくりセンター306 尚、参加される方は申し込みをお願いします。09082080423 にしむら

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明日に向けて(1385)スリーマイル島原発の閉鎖が決定。脱原発の流れが加速している!(3日に城陽市でお話しします)

2017年06月02日 17時30分00秒 | 講演予定一覧

守田です。(20170602 17:30)

明日6月3日に京都府城陽市でお話しします。「大きく拓けてきた脱原発の展望を語る 原発メーカー東芝が崩壊!どうなる?トルコへの原発輸出‥高浜原発は? 脱原発の可能性を世界的視点から展望します」がタイトルです。東芝とトルコのこと軸に世界の脱原発の流れについて話しますが、この準備をしている最中に、脱原発の流れを象徴する事態がまた一つ入ってきました。アメリカスリーマイル島原発が閉鎖されるという報です。今回はみなさんと脱原発への決意をさらに前向きに固めるためにも、この事態を掘り下げておこうと思います。

5月30日に、アメリカスリーマイル島原発の閉鎖が、所有者のエクセロンから発表されました。同原発は1979年に2号機が大事故を起こしたものの、1号機が運転を続けていましたが、今後、米政府による特別の支援等がない限り、2019年9月30日までに閉鎖されるのだそうです。理由は採算悪化だとされています。シェールガスの価格低下などを背景に電力市場で苦戦が続いてきたことが、エクセロンから明らかにされており、報道各社もこの点のみを伝えています。

実際にはシェールガスの豊富な供給だけが原因なのではありません。むしろ福島原発事故後の世界的な脱原発運動の発展の中で、世界中の規制当局が規制基準をあげざるを得なくなり、どこでも採算割れを起こしていることこそが本質的な要因なのです。要するに原発は安全性を少し深く考えたらそれだけでもう採算に合わないしろものなのです。アメリカだけではなく世界各地で同じようなことが起こっています。危険性の固まりである原発にもはや未来などないことを私たち民衆の脱原発運動が突きつけているのです!

アメリカの規制当局は、とくに真っ先にこうした要求を取り上げざるを得ませんでした。なぜか。「アメリカの規制当局が日本よりましだから」という論調もありますが正しくはありません。そもそもアメリカ国内には、福島第一原発で次々とメルトダウンを起こした「マークⅠ」型格納容器を使った原発がたくさんあることのです。しかもその上、これまでのアメリカでの試算では、そのマークⅠ型原発=沸騰水型原発よりも、加圧水型原発の方が事故の可能性が高いという統計が出ていたのです。そのため沸騰水型にとどまらず、すべての原発の対策強化が求められたのでした。そもそも1979年に大事故を起こしたスリーマイル島原発も、沸騰水型ではなく加圧水型です。

このため2012年3月にアメリカ原子力規制委員会から、安全対策強化に向けた指令が国内全原発の所有者に対して出されました。内容は(1)複数のユニットの事故も想定し設計基準を超える事故に耐えられる自然災害対策を行う。911事件以降に各原発内に配備して来た仮設の電源やポンプなどをさらに強化する。(2)使用済み燃料プールに水位計を設置して水位監視を強化する。(3)マークⅠ及びマークⅡ型格納容器に関しては、格納容器ベント系統を強化し、過酷事故でもベント弁を確実に開放できるようにする。というものでした。

これとともに「情報要求文書」の提出も義務づけられました。そこでは以下の評価や解析が求められました。(1)最新の知見を用いて地震と洪水リスクの評価を行う。(2)地震と洪水に対する対処能力について現場での詳細な検査を実施する。(3)複数ユニットでの過酷事故に対応できる人員配置と情報伝達に関する評価を行う。僕自身はこれでもまだ足りないというか、原発はそもそも安全性の面では完成などしようのないテクノロジーなので、こうした対処でも安全性は確保できず、廃炉以外に道がないと思っていますが、ともあれこれらによって安全対策のためのコストが大幅に上がったことはよく分かります。

さらにこうした対処にバックフィット制度が適用されたのも大きなことでした。この点は日本の規制当局も「新規性基準」において採用したのですが、通例さまざまなプラントの規制は、建設された当時のものを満たしていればよく、新たに加わった規制が過去にさかのぼって適用されることはまれだと言えます。しかし危険性の大きな原発ではそんなことを言っていたら恐ろしいわけですから、上記の指令が新たに建設する原発だけでなく、過去に作られた全ての原発にも当然のこととして採用されることになったのです。そしてこのように新たな知見を採用して安全対策を重ねたら、どんどんコストが上がってしまい、そこにシェールガスの価格低下が相まって、まったく採算があわなくなってしまったのでした。これがスリーマイル島原発が廃炉になる理由ですが、当然にもこれは他の原発にも共通する問題です。このためアメリカではこのところ原発廃炉が続いているのです。

東芝の大崩壊もこのことと大きく関連しています。福島第一原発事故時に東芝は、子会社のウェスチングハウス社が6基、東芝本体が2基の原発を受注していました。しかしどの原発の現場でも建設費が高騰しはじめました。アメリカの資本主義は新自由主義のなかで情け容赦のない儲け主義体質を極めてきていますから、すぐに高騰したリスクの押し付け合いがはじまり、訴訟の泥沼が現出。現場の作業も遅れるばかりでさらに建設費があがるという悪循環のスパイラルにはまってしまいました。

一方で東芝本体が受注した原発(サウステキサスプロジェクト)は、GEの技術を元にマークⅠ型原発を手がけて来た東芝本体による設計だったため、即刻、資金の大半を供出していた電力会社が逃げ出してしまい、計画が頓挫してしまいました。しかし自分に都合の悪い事態を直視できなかった東芝は、もはや幻となった計画への新たな出資者が現れるのを待ち続け、あたら無駄な出費を拡大し、年々、傷口を拡大して、崩壊の要因の一つを形成してしまったのでした。そもそも東芝は福島第一原発事故を起こした責任企業そのものでありながら、自らの責任を捉え返すまっとうな視点を持てなかったために、崩壊へと突き進んでしまったのでもあります。スリーマイル島原発の閉鎖の報も、こうした流れの中で必然的に出て来たことであり、今後、アメリカのみならず、世界各地で原発の閉鎖が確実に続くのです。ここには原発に将来的展望などまったくないこと、民衆の脱原発の声が歴史を変えつつあることがはっきりと現れています。

このことは、都合の悪いことはなんでも無視して突っ走って来た安倍政権にとってもかなりの大ピンチなのです。原発は投資すればするだけ損益を拡大するしかないどうしようもないものになってしまったことが明らかだからです。にもかかわらず安倍政権は相変わらず東芝と同じ崩壊の道を歩んでいます。しかも自ら「トップセールス」と銘打って旗ふりして来た原発輸出路線の頓挫に変えて、強引に各原発の再稼働を強行し出しましたが、現実を直視できないものにけして未来はありません。世界の流れは明らかに脱原発なのです。

実際に台湾では完成目前の第4原発(通称日の丸原発)が凍結され、新政権で鮮明に脱原発が打ち出されました。日本が官民一体の売り込みをかけてきたベトナムも昨年暮れに輸入計画を白紙撤回しました。台湾もベトナムも世界の趨勢の中から原発推進がまったく国益にならないことをつかみとったのです。これらのことからいま、世界中で原発計画に大きな動揺が走っています。

みなさん。いまこそ正念場です。脱原発の流れをさらに確かなものにするために、奮闘を続けましょう。核のない未来に向けて歴史は大きく動きつつあります!

*****

原発講演会「大きく拓けてきた脱原発の展望を語る」。原発メーカー東芝が崩壊!どうなる?トルコへの原発輸出‥高浜原発は? 脱原発の可能性を世界的視点から展望します。午後2時からJR城陽駅そば鴻ノ巣会館ホールにて。入場無料。主催は原発ゼロをめざす城陽の会。http://www.geocities.jp/genpatudame/

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明日に向けて(1384)膨大な量の放射性廃棄物が日々燃やし続けられ、被曝が野放しにされてきた!(528学習研究会に向けて)−2

2017年05月25日 23時30分00秒 | 明日に向けて(130...

守田です(20170525 23:30:00)

前回に続いていわゆる「8000ベクレル問題」についての整理をさらに進めたいと思います。


5、8000Bqが出されてきた根拠を探る

まずこの数値が出されて来た根拠を探りたいと思いますが、そのためには放射性物質に関するこれまでの規制法をおさえておく必要があります。ここで問題にすべきものは以下の二つです。


核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(原子炉等規制法)

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S32/S32HO166.html

放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S32/S32HO167.html

 

原子力規制委員会のホームページではこの法律が以下のように説明されています。

https://www.nsr.go.jp/activity/ri_kisei/kiseihou/

 「放射線障害防止法は、放射性同位元素や放射線発生装置の使用及び放射性同位元素によって汚染されたものの廃棄などを規制することによって、放射線障害を防止し、公共の安全を確保することを目的に制定された法律です。なお、放射性物質の規制は、同法のほか、原子炉等規制法、医療法、薬事法、獣医療法等においても行われています。」

ここでおさえておくべきことは、この法律では、放射性物質ごとに管理対象となる総量と濃度の双方が規定されており、その値を越えると管理すべき放射線同位元素とするとされていることです。具体的なことは「放射線を放出する同位元素の数量等を定める件」で規定されており、セシウム134と137に関しては10000Bq/kgベクレル以下のものは「放射線同位元素」とみなされないとなっています。

 

放射線を放出する同位元素の数量等を定める件

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/anzenkakuho/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2012/04/02/1261331_15_1.pdf

 

端的に言って、この「10000Bq」という規定との整合性をつけるために、それ以下の数値としての「8000Bq」が出された可能性が濃厚です。

 

6、8月に発表された16都県の焼却場データの重要性

続いてみておくべきことは、2011年8月に環境省が放射性物質が大量に検出されている16都県の焼却場の灰に含まれる放射能汚染データを公表していることです。まずはこの重要なデータを示しておきます。


16都県の一般廃棄物焼却施設における焼却灰の放射性セシウム濃度測定結果一覧

https://www.env.go.jp/jishin/attach/waste-radioCs-16pref-result20110829.pdf


なぜこの時期に発表されたのでしょうか。前回、述べたように東京都はすでに3月の段階で汚泥のものすごい汚染を把握し始めていました。当然にもこの事実は環境省に報告されていたはずです。しかし環境省はこの段階では動きませんでした。なぜでしょうか。推論されるのは、2011年3月に東北・関東の焼却場で日々作りだされている焼却灰の放射線値を測ったら、恐ろしい数字が出てしまう可能性があったことです。ヨウ素131をはじめ、半減期の短い核種が廃棄物の中にまだ大量に存在していたからです。この時点できちんとした調査を行えば、焼却そのものが続けられなくなるようなデータが各地から出てきてしまったでしょう。そして各地に処理のできない膨大な廃棄物が生まれ、社会的混乱が生まれ、それだけで原子力政策は完全に命脈を絶たれたでしょう。

このため環境省はすぐに都道府県に焼却灰の放射線値を測ることを指導しなかったのだと思われます。そして事故から80日以上が過ぎて、放射性ヨウ素131が1000分の1以下に減衰した6月になって初めてこうした指示を発したと思われます。この後、8月24日までに16都県に焼却灰に関するデータを提出させています。ではなぜ反対にこの時期に測ったのかというと、まだまだ大量に残留しているセシウム137は半減期が30年ですぐには減衰しないこと、同時にセシウム137は放射性物質の中でも例外的に測りやすいものであり、政府が測らずとも市民放射能測定所などによって計測されてしまうため、対処が必要とされたからでしょう。

ただこれらの経過を考察すると見えてくるのは、政府は各地の焼却場の焼却灰のリアルな計測をすることなしに8000ベクレルという規制値を先んじて決めざるを得なかったのではないかということです。すでにセシウムの汚染が社会的に見えて来ていたので、対応を急がねばならなかったからです。しかし8月24日に出そろったデータを見てみると、各地で8000ベクレルを大きく超えてしまう焼却灰が出てきてしまいました。環境省にとっても深刻な事態であったと言えます。


この事実の重要性に関しても僕は記事を発しました。 

明日に向けて(443)岩手県における放射能汚染の実態(がれき問題によせて) 2012年4月3日

http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/8bfff14a348072520dd72985df1ab067 

明日に向けて(462)東日本全域で放射性物質が大量に燃やされ、濃縮されている!その1 2012年5月2日

http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/fb16143656f0bffe1a9ebaf9b29f4bc2


後者の記事の中で僕は焼却の恐ろしさを以下のように指摘しました。

「このところ、連日、「がれき」問題の分析を深めてきましたが、その中でみえてきたのは、「がれき」にとどまらず、ゴミの収集、運搬、焼却という現代社会が作り出したシステムが、まるまる人為的な、放射能の濃縮過程になってしまっているというとんでもない事実です。すでにこのことに気づいていた方には、何をいまさらと指摘されてしまうかもしれませんが、これは本当に、もの凄く、大変なことです。

とくに日本のように生産力が高く、それだけに日々、大量の廃棄物を発生させ、そのために、ゴミの収集、運搬、焼却、(灰の)埋め立てという巨大な処理システムを作りだしてきた「先進国」にとっては、広域汚染事故の恐ろしさの第一に数え上げられるものの一つともいえるのではないか。なぜならこの濃縮は、自然の中での生態濃縮などとは較べものにならないスピードで進むからです。何せ近代化の中で高められてきた生産力そのものによって濃縮しているからです。」

ぜひこのことをリアルに捉え、次のように考えていただきたいのです。まず東北・関東にお住まいの方は、先にあげた16都県の焼却場データに着目してください。何よりみていただきたいのはご自分のお住まいの周りにここに書かれた焼却場がないかどうかです。ある場合は近ければ近いだけ、これまで、長期にわたって高濃度の放射能を浴び続けてきた可能性があります。ここに書かれたデータはある一日の焼却に関するものですが、実際の焼却は365日×6年以上、続けられて来ているわけです。どんなに膨大な放射能が濃縮して発せられて来てしまったかが見えてくると思います。

この場合、もっとも危険性の高いのは、焼却場の職員の方です。もしこの記事を読まれている方にこうした施設の職員の方のお知り合いがおられる場合は、ぜひ健康診断を受けるように進められてください。とくに心臓検診を重視されてください。心臓の病は死に直結するので一番怖いですから。

次に危険性の高いのは焼却場の近隣に住まわれている方です。煙はやはりその多くが周辺に落ちます。このため焼却灰の濃度の高い焼却場の周りに住まわれている方には、いまからでも避難移住されることを強くお勧めします。この場合、放射性被曝は少しでも減らした方が有利ですから、とりあえず焼却場から離れるだけでも効果があると思いますが、被曝が長期間、継続してきたことを考えるならば、やはり西日本に向かわれるのがベストです。

「放射性廃棄物」問題を考えるとき、私たちはすでに相当量のものが焼却され、人々の上に降り注がれた事実に着目しなくてはなりません。膨大な量の放射能を浴びせられてしまった人々の心身をいかに守るのか、その上でこうした被害を今後いかに防遏するのかが、やはりこの問題の最重要ポイントなのです。「放射能汚染防止法」もこうした観点の上に築かれる必要があると僕には思えます。

しかしこの国の官僚達はそのようには考えなかった。8000ベクレルを「軽く」越えてしまう焼却灰など、新たに設けたゆるゆるの規制値ですら追いつけない大量の放射性廃棄物が出て来てしまったからです。

このため政府は2011年8月30日に制定した「放射性物質汚染対処特措法」を見直さざるを得なくなったのですが、実はもともとこのことは織り込み済みであったことも伺えます。この法律自体に「3年経った後の振り返り」を行うことが書き込まれていたからです。かくして2015年3月31日に「放射性物質汚染対処特措法施行状況検討会」の第一回会合が開かれましたが、ここでなされたのもまたしてもこの法律の矛盾の拡大でしかありませんでした。被曝の放置はなんら是正されず、より踏み込んだ容認がなされました。そしてこの中で、8000ベクレル以下の原発汚染土を公共事業などで使用するという新たな方針への布石も打たれたのでした。

続く

今回も5月28日の学習研究会の案内を貼り付けておきます。

*****

放射性廃棄物拡散問題第8回学習研究会

https://www.facebook.com/events/1326139530814658/?acontext=%7B%22ref%22%3A%2223%22%2C%22action_history%22%3A%22null%22%7D
 
5月28日(日) 午後2時~4時

場所 市民環境研究所(京都市左京区田中里ノ前21石川ビル305)
主催 NPO法人・市民環境研究所

呼びかけ 石田紀郎(市民環境研究所代表理事)
     守田敏也(フリーライター・市民環境研究所研究員)
参加費 若干のカンパをお願いしています。
連絡先 090‐5015‐5862(守田)

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明日に向けて(1383)「原発汚染土8000Bq/kg以下再利用問題」を捉え返す(5月28日の学習研究会に向けて)−1

2017年05月24日 23時30分00秒 | 講演予定一覧

守田です(20170524 23:30)

5月28日(日)に「放射性廃棄物拡散問題第8回学習研究会」を行います。今回のメインテーマは「放射能汚染防止法制定に向けて」ですが、ここでその前提となる「原発汚染土8000Bq/kg以下再利用問題」を再度、整理して捉え直しておきたいと思います。

1、毎日新聞による報道

「8000Bq/kg」問題が大きくクローズアップされたのは、以下の毎日新聞の記事によってでした。

原発汚染土 「8000ベクレル以下」なら再利用を決定
毎日新聞2016年6月30日 20時30分(最終更新 6月30日 21時23分)

http://mainichi.jp/articles/20160701/k00/00m/040/063000c

記事の冒頭にはこう書かれていました。(幸いリンク先が生きているのぜひ全文をおさえておいてください)

「東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内の汚染土などの除染廃棄物について、環境省は30日、放射性セシウム濃度が1キロ当たり8000ベクレル以下であれば、公共事業の盛り土などに限定して再利用する基本方針を正式決定した。」

 

2、問題の発端は福島原発事故直後の汚泥の汚染

ただしここで私たちが整理しておく必要があるのは「8000Bq/kg」という数値は今回初めて出て来たものではないということです。

発端は福島原発事故直後に、各地の汚泥からものすごい量の放射能が検出されたことにあります。しかも問題はただ汚染がものすごかっただけではなく、この国はこうした膨大な量の放射能漏れを「あり得ないこと」としてきたため、この事態に対処する法律がなかったことにもありました。こうした中で共同通信が2011年5月13日に行った東京都への取材から、3月下旬に採取された汚泥焼却灰から1キロあたり17万ベクレルもの放射性物質が検出されたことを明らかにしました。江東区の「東部スラッジプラント」からでした。同時期に大田区と板橋区の下水処理場2か所でも汚泥焼却灰から10~14万Bq/kgの放射性物質が検出されていたことも明らかになりました。

この頃はまだまだ東日本大震災と原発事故後の混乱が続いていました。ちょうど放射能汚染の実態が徐々に明らかになりつつあった頃で、その一環として汚泥問題が記事になりましたが、それほど大きな反響を呼んだわけではありませんでした。しかしここには今日につながる重大な問題が隠されていました。このため僕もすぐにこの問題を記事化しました。以下にアドレスを記しておきます。

 明日に向けて(112) 放射能汚染が各地に拡大中・・・ 2011年5月14日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/24da6e3ad75d730622dbab7916ff40d7

 明日に向けて(153)汚泥から放射能が。北海道・大阪でも!・・・2011年6月15日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/43c6ee2e40d8dc763f98e04bc72314a6 

二つ目の記事の中で僕はこう論じています。

「全国で、汚泥から放射性物質が検出されだしています。見つかったのは、北海道、青森、山形、福島、栃木、群馬、茨城、千葉、埼玉、東京、神奈川、山梨、新潟、長野、静岡、大阪の16都道府県ですが、大阪で検出されたならば、福島原発との間にまたがる地域、愛知、京都などでも、検出されうるのではないかと懸念されます。その意味で、検出はもっと広域から行われることになるのではないか。

また非常に重要なポイントは、汚泥は焼却処理がなされているということです。しかもダイオキシンを出さないために、高温での処理がなされています。その場合、雨などによって流され、集められてきた放射性物質にどのような化学反応がもたらされるのか。当然、沸点の低いものは、揮発して再度、大気中に出てしまいます。

恐らくはこれらの影響もあって、汚泥処理施設の周りの放射線量が高くなっている地域が多く、「中には汚泥の保管場所を「放射線管理区域」に指定する自治体も出ています」とNHKは報じています。具体的には前橋市の名があげられている。」

今にして思うのは、あの時、政府は放射性物質の焼却を中止すべきだったということです。もちろん、この国の廃棄物処理はその多くが焼却によっていますからそれは大変困難なことであったでしょう。

だとするならば、つまり何百歩も譲ったとしても、最低限、焼却の大いなる危険性を社会に対して明らかにし、被曝防護の徹底化を呼びかけるべきでした。それで防げる被曝もあったはずです。しかしそうした防護策はまったく出されなかった。このことで人々は2次被曝、3次被曝とでも呼べるものに遭遇しました。首都圏を含む膨大な数の人々がです。

このように本来、住民を守る義務を負っているはずのこの国の官僚は、事故直後から続けられてきた焼却による被曝から人々を守りませんでしたし、いまもなお守ろうとしていません。それどころかいわば「現に起こっている事態に法律を追いつかせること」に心血を注いだのでした。その結果として出て来たのが8000Bq/kgという数字であったわけです。あまりにも本末転倒したものであることを私たちはおさえておく必要があります。

 

3、8000Bq/kgの初めての提示

さて問題の8000Bq/kgという数値は、6月16日に「原子力災害対策本部」から出された関連省庁への通知の中で初めて登場しました。8000Bq/kg以下の「上下水処理等副次産物」を、通常の管理型処分場で埋め立てて良いとする技術基準が示されたのでした。環境省を含む各関連省はこれに基づいてその後の方針を策定していきました。以下が問題の通達です。

放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の当面の取り扱いに関する考え方

http://www.mlit.go.jp/common/000147621.pdf

 

さらに6月23日に環境省が福島県内での方針を発表しました。福島県内において「上下水処理等副次産物」と同じく8000Bq/kgまでの放射性廃棄物を管理型処分場で埋立て良いとする基準が示されました。

福島県内の災害廃棄物の処理の方針

https://www.env.go.jp/jishin/attach/fukushima_hoshin110623.pdf

8月30日にはこれらを受け、「放射性物質に汚染された廃棄物の処理」と「土壌等の除染」の二本柱からなる、いわゆる「放射性物質汚染対処特措法」が新たに公布され、一部施行されました。これによって、それまで原子力災害対策本部からの通知や環境省からの方針の形で出されていた、8000Bq/kg以下のものを一般の廃棄物と同じく通常の管理型処分場で埋め立て可能にすることが合法化されたのでした。

「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」

http://www.env.go.jp/jishin/rmp/attach/law_h23-110a.pdf

 

4、問題の本質は被曝が野放しに続けられていることにある!

以上が8000Bq/kgという数値が出て来たもともとの経緯ですが、ここまでで整理すべきことは、そもそも問題の背後にあるのは、放射性物質の原発外への放出を想定せず、原発外での放射性物質の管理に関する法律を作ってこなかった国の大きなあやまり、責任にあるということです。ここにはもともと「原発の外へ膨大な放射能が漏れることなどありえない」という認識が、原発を動かす上での住民への重大な約束であった事実も含まれています。このことだけでも本来、原子力政策が放棄されるべき重みがあります。

しかもこの国の官僚たちは、法律を作ってこなかっただけでなく、現に進行する被曝になんら歯止めをかけようとせずに、ただ法的つじつまをあわせることばかりを進めてきたのでした。私たちはあくまでもこの責任を追及し続けるのでなければなりません。

同時にこうした被曝の野放しや、さらなる被曝の強制にストップをかけるために、この大きな法的かつ道義的欠陥を民衆側から埋め合わせるものとしての「放射能汚染防止法」を策定していくことが問われています。

このもとで放射性物質の危険性への注意喚起をもっと大規模に行い、放射性廃棄物を厳しく管理していくことで、これ以上の被曝を少しでも低減していくことこそが問われています。これがこの問題の本質であることをまずはおさえておきましょう。

続く

以下、5月28日の学習研究会のお知らせを貼付けておきます。

*****

放射性廃棄物拡散問題第8回学習研究会

福島第一原発事故で放出された放射能にさらされ、除染作業などによって集められた膨大な放射性「汚染土」。これを8000Bq/kgのものなら公共事業で再利用してしまえというあまりにひどい政策が進められつつあります。私たちは、この問題についての学習研究会を立ち上げ継続してきました。

第8回研究会は、前回に引き続いて全国で活発化しつつある放射能汚染防止法制定の動きについて考察します。テキストとして『制定しよう 放射能汚染防止法』(山本行雄著 星雲社)を使います。それぞれの方がお持ちになる必要はありません。主要部分をレジュメ化してご紹介します。
今回も基調的な報告を守田敏也さんが行い、その上でみなさんのご意見をお聞して討論します。ぜひご参加ください

5月28日(日) 午後2時~4時
場所 市民環境研究所(京都市左京区田中里ノ前21石川ビル305)
主催 NPO法人・市民環境研究所

呼びかけ 石田紀郎(市民環境研究所代表理事)
     守田敏也(フリーライター・市民環境研究所研究員)
参加費 若干のカンパをお願いしています。
連絡先 090‐5015‐5862(守田)

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明日に向けて(1382)被ばくのリスクといかに向き合い生き抜くのか(5月27日西宮市でお話しします)

2017年05月23日 23時30分00秒 | 明日に向けて(130...
守田です(20170523 23:30)

5月27日阪神・市民放射能測定所4周年企画に呼んでいただきました。西宮市勤労会館で午後1時よりお話しします。
測定所の設立記念に呼んでいただけるのはとても光栄です。しかもこの測定所では4年前の開設式にも呼んでいただいています。
放射線被ばくから人々を守るために奮闘してきたみなさんの4年間の思いをしっかりと受け止めてお話しします。

今回は以下のような構成でお話しします。
1、福島原発事故後の放射線被ばくの現実
各地への取材の中でつかんできた、「いま実際に起こっていること」をお話しします。岡山に避難移住された三田茂医師からいただいた、東京での被ばくデータの一部も紹介します。
2、被ばく影響が深刻化していながらなぜそれがまともにとりあげられないのかの原因についてお話しします。端的には放射線防護学が広島・長崎の被爆者調査を下に、核戦略を進めるアメリカのもとで作られて来たこと、だからこそ被ばく影響が徹底的に過小評価されたことについてです。先日参加した「全国被爆2世3世交流と連帯の集い」の中での被爆2世の健康問題を扱った分科会で得た最新の知見についても触れます。
3、被ばく影響過小評価のからくりの根幹にある隠されて来た被ばく=内部被ばくの実相についてお話しします。
4、被ばくの避け方を外部被ばくと内部被ばくの双方、および両者の合わさった「汚染」に即してお話しします。なおこれらは黄砂やpm2.5からの防御にも適用できます。
5、被ばくに対抗するための食べ物の選び方や食べ方についてお話しします。

前半が被ばくの現状と歴史と論理、後半がリスクと向き合うための実践編です。
これからの時代の中で命を守り抜くための知恵です!

ちなみに僕はこの間、群馬県に繰り返し講演に赴いたり、あるいは各地からの避難者の方達から情報を頂いたりする中で、被ばく影響が本当に深刻にあらわれていることを痛感しています。
これに向かい合おうとしない点において、この国の現政権や為政者たちが滅びることはもはや確実なのですが、問題はこのままでは多くの人々がこの崩壊に巻き込まれてしまうことです。
この事態を転換するためにまず一人一人が命を守っていただき、同時に、命を守るすべをつかんでできるだけ多くの人に伝えていただきたいのです。
守るべきは子ども達だけではありません。もちろん子どもを守ることは当然ですが、しかしそのためにも大人達が身を守らなくてはなりません。大人が倒れたら子どもを守れない。

また「自分は高齢者でどうせもう先が長くないからいい」とおっしゃる方が時々おられますが大きな間違いです。
「先が長くない」といっても、その期間をどのように過ごすのかで人生は大きく変わります。
最後まで楽しい生を送れるのか、それとも病の苦しみにもだえながら生きるのかです。

この間、よくみられるのは、被ばくによって現にある身体の弱み、悪いところが急速に悪化していくことです。
もともと高齢化することは、さまざまな身体の不調がでてきたり、何らかの病にかかったりすることですが、被ばく影響はそれを加速させ、苦しみを増します。
その場合、ご本人も辛いですし、周りで診なければならない人も辛い。誰もが辛いです。
だからご本人に、人生の残された時間を可能な限り、病の苦しみにとらわれず、あるいは少なく生きていただくことが、実は周囲の誰にとっても幸福なのだと僕には思えるのです。もちろん病と格闘しながらの充実した人生も現にたくさんみてきましたが、だからといって痛みや辛さは誰にも味わって欲しくない。

とりわけどうみても脳の被ばくは認知症を促進させます。記憶をつかさどる海馬帯が放射線被ばくに弱いからと解釈されていますが、認知症になると何より本人が不安の中に落ち込んでいきます。介護する側も大変ですが、本人も苦しいのです。
これに対しては社会的介護体制をもっと充実させていく必要がありますが、しかしこの国はまったく逆方向に走っている。高齢者、そしてまた障がい者の社会的介護体制の脆弱さが、本人にも介護者にも苦しいあり方を促進させています。だから私たちは高齢者を、そしてまた障がい者をみんなで守らなくてはなりません。
子どもとともに高齢者、そして障がい者もまた放射線弱者であることをしっかりとみつめて、誰をも被ばくから守ってゆくことが大事です。

そのために大事なのは現状認識を深めることと、防護の知恵を少しでも膨らませて、実現可能な防護策を実践していくことです。
そのために「被ばくのリスクといかに向き合い生き抜くのか」を心を込めて精一杯お話ししますので、ぜひ会場に足を運んでください。

最後に企画案内を貼付けておきます。
僕も「だるま森+えりこ」の歌・演奏、朗読を堪能してからお話しします。

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原発事故から6年 脱被ばく社会の実現をめざして
阪神・市民放射能測定所4周年企画
https://nukecitizen.ojizo.com/publish/20170527_4syunenkikaku.pdf

原発事故から7年目に入りました。原子力緊急事態宣言は解除されていないにもかかわらず、避難者への住宅支援の打ち切りや避難区域の解除が強行されています。

過酷な汚染実態や健康被害実態は隠され、原発事故への国民の関心が薄められようとしています。しかし、子どもたちの命を守ろうと避難移住した人々、汚染された大地で少しでも被ばくを避けて生きようとする人々が存在する事実を消し去ることはできません。

多くの市民が、原発事故をきっかけに脱被ばくを選択する権利が認められ、原発のない社会をめざそうと決意しました。私たちは、この思いにこたえて、取り組みを続けて行きます。未来に希望をつなぐ和やかな交流ができたらと思います。是非ご参加ください。

記念講演(13時)
「原発事故から6年。被ばくのリスクと向き合い、未来を生き抜くために」
守田敏也さん(フリーライター)
放射能汚染や健康被害隠しの実態や被ばくを避けて生き抜くすべなどをお話しいただきます。

5月27日(土)11時〜16時30分
西宮市勤労会館 第8会議室
資料代500円 阪神西宮駅東へ10分・JR西宮駅南7分
キッズスペース用意します

プログラム
11時 開場
会場では測定結果等の展示や有機野菜やお昼弁当なども販売します。ゆっくり過ごしていただけます。

12時30分 歌・演奏と朗読
総合工芸芸術家
だるま森+えりこ 
「After311のこどもたち」

13時 測定所からのあいさつ
記念講演
守田敏也さん
質疑応答

15時 交流会(発言予定)
有機無農薬栽培農家
避難移住の方々

16時30分 終了

企画内容
●展示:土壌・肥料・食品等測定結果
●3年間の測定記録冊子等書籍販売
●有機無農薬野菜販売(放射能測定済)
●お昼弁当販売(有機無農薬・測定済)
●放射能無料測定(1リットル要)

阪神・市民放射能測定所
〒662-0916 西宮市戸田町5-21
Tel 050-5317-4016 Tel/Fax 0798-34-2315
mail: shs.hanshin@gmail.com
blog: http://hanshinshs.blog.fc2.com
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