明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1125)ベント後付けの条件設定を無理強いされて(後藤&守田対談から-3)

2015年08月20日 08時00分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20150820 08:00)

後藤さんとの対談の文字起こしの3回目をお送りします。
今回は対談に先だって一緒にお食事をしたときにうかがった話がとても興味深かったのでそのことをお聞きしました。
後藤さんが東芝に入社したのは1989年。格納容器の設計を担当しましたがそのころチェルノブイリ原発事故を受けて、格納容器の存在がハイライトされる中で、東芝がベントの後付けの検討を始めました。
後藤さんはまさにその現場にいて、安全担当より格納容器が緊急炉心冷却系が働かず、圧力が上がった時に、どこまで持つかを「言え」と言われたといいます。

「言え」と言われても、もともと設計で何気圧まで持つか明記されています。設計条件としてはそれを越えてはいけないとされているのに、その設計条件の3倍まで持つように「頑張ってくれ」と言われたと言います。
そんなやり取りの中で、どの段階でベントを行うのかが決められていったそうなのですが、これは現場にいなければ分からないとてもレアな話です。
今回はこの点に関して書き起こしました。お読み下さい。なお今回は文字起こし後にも少し解説を加えます。

*****

 福島原発事故からつかむべきこと
 2015年8月14日 後藤政志&守田敏也 対談 東京品川にて
 https://www.youtube.com/watch?v=TKJNkgNOgaI&feature=youtu.be

3、ベント後付けの条件設定を無理強いされて
(17分38秒ぐらいから)

守田
先ほどお話をうかがったときのことで、ちょっと突っ込んでしまいますけれども、ちょうど後藤さんが東芝に入られた後にベントをつけることになったということをお聞きしました。あの話をもう少し聞かせて下さい。

後藤
私が会社に入ったのは1989年です。ちょうどチェルノブイリ事故もありましたし、格納容器の持つ意味が大事だとされていました。
(守田注、チェルノブイリ原発には格納容器がなかったため、原子炉の爆発がそのまま膨大な放射能の流出につながったことに対し、「日本の原発は格納容器があるのであのような事故にはならない」と繰り返し宣伝されていた)
それで格納容器を担当する時に、一番最初にビックリしたのは、普通、ボイラーなどは圧力が高まると爆発してしまうから、設計上耐えられるとされる圧力より1割ぐらい越えると確実にバルブが開いて圧力が逃げるようにしています。
バルブは何個もついています。危ないから。そうなっていることを知っていましたから、格納容器を見たときに逃し弁がないので「えっ、大丈夫?」と思いました。
でも「ちょっと待って。格納容器は違うよな」と考え直しました。原子炉圧力容器はいいのですよ。圧力容器はそこから圧力を逃がして格納容器の中に吹けばいいのですけれども、格納容器は放射能を閉じ込めるので外に出してはいかんわけです。
そうするとガス抜きできないという立場なのですよ。そうすると設計気圧が4コンマ幾つとか、3コンマ幾つとか言うのですけれども、それって絶対的なのです。絶対に越えてはいけない。それって結構、厳しくて、真剣に設計を見ていたわけです。

その時に何年もしないうちに、1992年にはもう言われていたと思いますが、社内で安全担当というのがいます。それが技術の上流側にいるわけです。その安全担当が来て、今ある格納容器は何気圧まで、何度まで持つのか。「言え」と言うのです。
「言え」たって、そんなのは「設計は3コンマ幾つ、温度は171℃」とか説明するわけです。当たり前じゃないですか。それを越えるなどありえないのです。
ところがそれを何とかという意味は、システムがうまく作動しなくて、本当は緊急炉心冷却系、ECCSで、配管破断が起こった時にそれで水をぶち込む、それが何個もついているのだけれど多重故障を起こしてみんな停まってしまう。
そうなると冷却できなくなって温度が上がっていく。そうすると格納容器がぶっ壊れたら大変なことになるので、どこかでガス抜きしなくてはならない。それを決めるのに「どこまで持つか、頑張って欲しい」とこう言われたのです。

私も「設計では・・・」と言ったけれども事情を聞くと仕方がないかなと思って「ではどれぐらい持って欲しいの?」と聞いたのです。そうしたら「設計圧の3倍、温度300度」まで持って欲しいと言う。僕は即座に「No!とても怖くてできない」と言いました。
「だったらどれだけ」と言われて、バナナのたたき売りみたいなことをやって、私が「エイヤっ」と、計算せずに「2倍」と言いました。設計圧の2倍です。
理屈は立つのです。うまくいくと設計圧の2倍ぐらいまでは持つだろうと技術的には見える。もちろん絶対とは言えませんけどね。蓋然設定で一般的にはそれぐらい持つと言ってもおかしくはない。それでバーンと壊れるということはないでしょうと言える。
温度も200℃ぐらいまでいけるだろう。それでもってそこまでの証拠を計算したり実験したりして出して、それを根拠に格納容器のベントが決まったのです。そういう経緯ですね。

守田
それを考えるときに、後藤さんとしてはある意味で脅迫されたみたいなものだったとおっしゃっていましたが・・・

後藤
そうですよ。私など、格納容器を設計する立場から見たら、与えられた設計の条件、圧力とか温度とか、地震ならこれだけの地震があると与えられて、それに基づいて設計するわけですから、それを越えたときにどうこうと言われるのは心外なわけです。
困るのです。責任が負えないのです。ただ責任論では済まされない状態、自分がそこにいる以上、そして格納容器が壊れることがあることが分かった以上、どうしようもないでしょう?そうなるとどうしてもいやいやベントを付ける方向に行くのです。
しかもその時にフィルターを付けることになっていたでしょう?それを私たちの仲間が調べているわけです。フランスのフィルターはどうなっているかとか。調べてそれを電力会社に出しているのです。
でも伏せてしまったのです。電力会社が。

守田
それは値段の理由ですか?

後藤
いや、値段もあるけれどもそれだけじゃない。一番の理由は、当時のフィルターベント、とくにサンドフィルターというのは直径が大きいのです。格納容器よりもでっかい。非常に広い面積で砂で濾すのです。
だから上から見たときに新しいプラントが一つできるようなものだったのです。そう見える。それが嫌だったのです。目立つから。というのが一番の理由で次にお金の問題がありました。付け始めると大変だ、資金がないと思ったのかもしれませんね。
アメリカはそういうことはやらない。

守田
そういうベントなどを後付で付けなければいけないとなったときに技術者のお仲間とはどんな討論をしたのですか?

後藤
立場が違うので、私は格納容器をやっていて、ベントのシステムはシステムでそちらをやる連中がやっているわけですね。だから打ち合わせなどはしますけれど。
それぞれの役割で自分たち的にはこうするしかないなということでやってきているのです。ただシステム全体として見たときにそれが最適かどうかというのは難しくて、実際、私もベントのシステムを今になってみるとこれではやばいなと思うのです。
機能しない可能性が高いものになっていたので。当時は私はそのことは分かっていませんでした。ただ、とにかくフィルターを付けないのはひどいことだと思っていました。

続く

*****

守田解説

後藤さんはベントの条件設定の話は「脅迫みたいなものだった」とおっしゃられました。その点についての僕の質問に「どうしてもいやいやベントを付ける方向に行った」と述べられています。
これは格納容器が壊れるうることが分かった以上、最悪の破局に至らないためにベントをつけるしかない、その場にいてしまった以上、せめてもそれで破局を避ける方向をとる以外に選択肢がなかったことを指しています。
ただ後藤さんはそれですべてを良しとしたのではまったくなく、このようにベントを付けなければならないことの矛盾そのものを然るべき時に告発すべきだと決意され、準備を重ねられました。
そのため会社の中では、こうした思いを何かの発言の中でうっかり漏らしてしまわないように細心の注意を働かせていたそうです。

こうして田中三彦さんなどのお仲間などとも相談や意見交換を繰り返しながら見解を練られ、満を持して多くの方の前に登場し、原発の抱える構造的矛盾を明らかにされたのが福島原発事故の直後だったのでした。
そこでの発言は、多くの方に原発事故がいかに進展しつつあるのか、技術的には何が問題なのかを、冷静に捉え、自らの行動を決するための貴重な情報源となりました。その点をここで付記しておきたいと思います。
なおこのようにこれまで原発の設計、製造サイドの現場でどのようなやり取りがなされていたのかということについては、今後、さらに後藤さんからレアなお話をうかがい、みなさんにお伝えしていきたいと思います。

連載はまだもう1回続きます。

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