明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(271)ことばの力、絵の力、絵本の力

2011年09月27日 23時30分00秒 | 明日に向けて(251)~(300)

守田です。(20110927 23:30)

すでにお知らせしたように、明日、信楽によんでいただき、お話をすることになっています。信楽町開発センターで午後1時からですが、少し前にいって、周辺の放射線を測り、お話の後もまた計測会を行うつもりです。信楽周辺の方、よければご参加ください。

今回の講演会は、「あすのわ」のみなさんによって主催されていますが直接に声をかけていただいたのは、これまでも紹介している絵本作家の市居みかさんです。今回のお話会は、その市居さんが絵を書き、玉崎洋子さんが文を書いて作った、1枚のチラシがきっかけになっています。

タイトルは「まずは知らなきゃね」。市居さん描く「あすのわぐま」が、原発について、「本当はこうなんだよー」と猫ちゃんに説明しているものです。何はともあれ以下をクリックしてみてください。A4二つ折り、見開きようのもので、1枚目の右側からスタートしています。
http://asunowa.shiga-saku.net/e614436.html
https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=explorer&chrome=true&srcid=1n4BN-8yTV5-BqPLEixco6GMXyRBn1Hz1NF8pdV_ibNfW20AATCj_rShSINd8&hl=en

僕がこのチラシを手にしたのは、4月に行われた大阪での脱原発デモでのこと。カメラを持って、歩道を歩いていた僕に、小学生ぐらいの女の子(玉崎さんの娘さん)が、はい!とにこやかに手渡してくれたのでした。一読して、これはこの間のベストチラシだと思った。

それでただちに持ち帰ってマスプリ。周りにじゃんじゃん配りだしたところ、大好評でしたが、その頃になって、良く読むと、「イラスト市居みか」と書いてある。実は市居さんに僕は、数年前に滋賀県で行われた絵本を読む会の場でお会いしていたのでした。

これは絵がつないでくれた縁だな。絵本の縁だなと感じました。すると市居さんが呼びかけて、絵本作家さん60人が集まって、NO!ゲンパツ展が行われていることを知り、東京に出かけた際に、見てくることができました。圧巻だった!集まった絵の力に胸を打たれ、心が温かくなりました。

このときの様子も、あすのわのHPに市居さんが書いているので、ぜひご覧ください。この展覧会は、滋賀、大阪、新潟、東京、広島の会場を駆け回ったのですが、それぞれの会場の様子、そして出典された作品をみることができます。
http://asunowa.shiga-saku.net/e678870.html

さらに市居さんは、次の展覧会にも踏み切っている。『ぼくらの原始力展』です。9月19日から10月2日まで。東京中野で開催中。「絵本作家たちの、原発なくてもこんなにすごい力がたくさんある!というテーマのグループ展」と銘打たれています。以下をクリックしてください。
http://ichiipk.exblog.jp/

絵の力、絵本の力、絵本展の力、それはすべて人間の想像力に訴えかけてくるものです。そこには物理的エネルギーは使われていない。もちろん電気など介在していない。でもこれほど体があっためられる。何か人間の最も根本にある力を引き出してくれるような気がします。

そう考えているときに思い出したのが、僕がかつて同志社大学社会的共通資本研究センターに属していた時に行なわれた「社会的共通資本としての絵本」という講演会でした。このときにお招きしたのは、絵本の老舗、福音館書店の会長、松居直さんでした。

もうひとり、先日、細川弘明さんの除染報告会を行った京都・堺町画廊の主宰者でもある、絵本作家のふしはらのじこさんも来て下さいました。お二人の話ともにとても素敵だったのですが、今、紹介したいのは、松居さんのことです。


松居さんは、絵本の世界にいる方の中ではとても有名な方で、いわば絵本道の達人です。といってもご本人が絵本を書かれてきたのではない。福音館書店を通じて数々の素晴らしい絵本を世に押し出し、また素晴らしい作家さんたちを育ててこられたのです。

松居さんは、絵本や、こどもの本にまつわる成人向けの本を何冊も書かれています。『絵本をみる眼』『絵本とは何か』『子どもの本・ことばといのち』などです。とくに絵本やこどもの本を開いてみようという方にお勧めなのは『子どもの本・ことばといのち』です。

ここでは松居さんのお勧めの本がずらりと並んで紹介されている。その筆頭にあげられているのは『ハイジ』です。誰もがご存じのアニメーション『アルプスの少女ハイジ』の原作ですが、実は原作と、アニメにはかなりの違いがあり、松居さんはそれを次のように紹介しています。


「久しぶりに完訳で『ハイジ』を読み返したとき、ひとりの読者-それも大人の読者として、私は予想した以上に心をひかれました。これほどまっすぐに心に語りかけ、新鮮な思いに包まれた読書体験も稀でした。それに較べてアニメーションの「ハイジ」のなんと貧しいこと。原作者シュピーリが語り伝えたいと願ったであろう本質の問題は、みごとに消し去られているのです。」

「いえ、その部分は映像化しえないのです。もちろん物語を”読む”というあの楽しさは味わえません。シュピーリが心をこめてことばにした自然の美しさも、人の心のゆたかさや深い悩みも、まるでメッキのように薄っぺらにしか表現されていません。」(『子どもの本・ことばといのち』p10)


僕はこの一説に衝撃を受け、すぐに「ハイジ」の原作を日本語訳し、福音館書店が発刊したものを手に入れ、ゆっくりと、丹念に読みました。そして松居さんがおっしゃるように、この本が本当に深い広がりを持っていることを知りました。さらにパウル・ハイの描いたさし絵にとても感銘しました。

実はこのさし絵は、松居さんが日本語訳を編集されたときに、スイスの著明な絵本編集者で、こどもの本のすぐれた研究者でもあったベッティーナ・ヒューリマンさんに相談を持ちかけ、パウル・ハイさんを紹介されて実現したものなのでした。松居さんはこう語っています。


「すでに『ハイジ』をお読みになったことがある方々も、改めて矢川澄子訳、パウル・ハイ画の完訳本『ハイジ』を、一行一行ゆっくりと、山に登るときのようなあゆみで読んでみてください。そして作者シュピーリの語ることばと思いに、より添ってみてください。」

「さらには、登場人物たちの行為やことばだけでなく、アルプスの自然について語る、シュピーリのことばにこめられた、彼女の実体験とあこがれに思いをいたしてください。この作品の新の立役者は、スイス・アスプスの大自然だともいえるのではないかと、私はおもうからです。」(同p12)


松居さんが、『ハイジ』の紹介を通じて伝えたかったことは何でしょうか。ことばと絵が、人間の想像力をかきたてること、そこにこそ「子どもの本」や「絵本」の素晴らしさがあるということではないかと思います。だから実は優れた本は、大人をも感動させる。

正確にはものごとに感動する私たち自身の力、かけがえのない人間的能力を、引き出してくれるのです。そこに、ピュアに書かれたことばの力、絵の力、そして絵本の力があると僕には思える。あらゆる書物の原点が、そこにあるように思えます。


松居さん自身は、『絵本とは何か』という本の中で、絵本について直接にこう語っています。小さな子どもたちを集めて、お話を読み聞かせたとき、ついてこれる子と、そうでない子がいる。それはなぜかということを解き明かす中で語られている言葉です。

「物語を聞ける力というのは、物語という目に見えない世界を、自分の心の中に見えるようにする、絵(イメージ)にする力です。一般に想像力(イマジネーション)といわれる力です。想像力が豊かであれば、人間は見えないものを見ることができます。絵本は、子どもたちの想像力に大きなかかわりがあります。」
「子どもは、生まれたときから、豊かな想像力を持っているのではありません。それは直接、間接の体験を通して獲得されるものです。体験が豊かであればあるほど、想像力も豊かになるでしょう。絵本は、幼児にとって体験を豊かにする機会をあたえます。」(『絵本とは何か』p7、8)


・・・今、私たちは本当に深刻な放射能漏れの中を生きています。放射能との共存時代といわざるをえない事態の中にいます。その中を前向きに生きてくために必要なのは、放射能の元を断つことと、一方で腹をくくり、免疫力を高める努力を傾けることだと、僕は肥田さんに教わりました。

免疫力を高めるためには健康生活をすることが大切ですが、同時に私たちが経験的に知っているのは、精神生活の豊かさもまた、免疫力の向上に大きく寄与するのだということです。だからことばの力、絵の力もまた、免疫力の向上に大きく寄与するのだと僕は思います。

その意味で、僕は「絵本は放射能に効く」と感じます。そう思うと、大阪のデモのときに、「あすのわぐま」と出会って、心がパッと明るくなった嬉しさ、楽しさを思い出します。そしてそんな力を脱原発の訴えの中で、もっと強めていきたいなと思います。

そんなことを思いながら、明日、信楽を訪問し、みなさんといろいろとお話してきたいと思います。そこから何か新しいものを生み出せるといい。あすのわぐまが楽しそうに踊りながら歩いていく、それにみんながついていって脱原発の道ができていく。思い浮かぶのはそんなイメージです。

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