明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1383)「原発汚染土8000Bq/kg以下再利用問題」を捉え返す(5月28日の学習研究会に向けて)−1

2017年05月24日 23時30分00秒 | 講演予定一覧

守田です(20170524 23:30)

5月28日(日)に「放射性廃棄物拡散問題第8回学習研究会」を行います。今回のメインテーマは「放射能汚染防止法制定に向けて」ですが、ここでその前提となる「原発汚染土8000Bq/kg以下再利用問題」を再度、整理して捉え直しておきたいと思います。

1、毎日新聞による報道

「8000Bq/kg」問題が大きくクローズアップされたのは、以下の毎日新聞の記事によってでした。

原発汚染土 「8000ベクレル以下」なら再利用を決定
毎日新聞2016年6月30日 20時30分(最終更新 6月30日 21時23分)

http://mainichi.jp/articles/20160701/k00/00m/040/063000c

記事の冒頭にはこう書かれていました。(幸いリンク先が生きているのぜひ全文をおさえておいてください)

「東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内の汚染土などの除染廃棄物について、環境省は30日、放射性セシウム濃度が1キロ当たり8000ベクレル以下であれば、公共事業の盛り土などに限定して再利用する基本方針を正式決定した。」

 

2、問題の発端は福島原発事故直後の汚泥の汚染

ただしここで私たちが整理しておく必要があるのは「8000Bq/kg」という数値は今回初めて出て来たものではないということです。

発端は福島原発事故直後に、各地の汚泥からものすごい量の放射能が検出されたことにあります。しかも問題はただ汚染がものすごかっただけではなく、この国はこうした膨大な量の放射能漏れを「あり得ないこと」としてきたため、この事態に対処する法律がなかったことにもありました。こうした中で共同通信が2011年5月13日に行った東京都への取材から、3月下旬に採取された汚泥焼却灰から1キロあたり17万ベクレルもの放射性物質が検出されたことを明らかにしました。江東区の「東部スラッジプラント」からでした。同時期に大田区と板橋区の下水処理場2か所でも汚泥焼却灰から10~14万Bq/kgの放射性物質が検出されていたことも明らかになりました。

この頃はまだまだ東日本大震災と原発事故後の混乱が続いていました。ちょうど放射能汚染の実態が徐々に明らかになりつつあった頃で、その一環として汚泥問題が記事になりましたが、それほど大きな反響を呼んだわけではありませんでした。しかしここには今日につながる重大な問題が隠されていました。このため僕もすぐにこの問題を記事化しました。以下にアドレスを記しておきます。

 明日に向けて(112) 放射能汚染が各地に拡大中・・・ 2011年5月14日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/24da6e3ad75d730622dbab7916ff40d7

 明日に向けて(153)汚泥から放射能が。北海道・大阪でも!・・・2011年6月15日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/43c6ee2e40d8dc763f98e04bc72314a6 

二つ目の記事の中で僕はこう論じています。

「全国で、汚泥から放射性物質が検出されだしています。見つかったのは、北海道、青森、山形、福島、栃木、群馬、茨城、千葉、埼玉、東京、神奈川、山梨、新潟、長野、静岡、大阪の16都道府県ですが、大阪で検出されたならば、福島原発との間にまたがる地域、愛知、京都などでも、検出されうるのではないかと懸念されます。その意味で、検出はもっと広域から行われることになるのではないか。

また非常に重要なポイントは、汚泥は焼却処理がなされているということです。しかもダイオキシンを出さないために、高温での処理がなされています。その場合、雨などによって流され、集められてきた放射性物質にどのような化学反応がもたらされるのか。当然、沸点の低いものは、揮発して再度、大気中に出てしまいます。

恐らくはこれらの影響もあって、汚泥処理施設の周りの放射線量が高くなっている地域が多く、「中には汚泥の保管場所を「放射線管理区域」に指定する自治体も出ています」とNHKは報じています。具体的には前橋市の名があげられている。」

今にして思うのは、あの時、政府は放射性物質の焼却を中止すべきだったということです。もちろん、この国の廃棄物処理はその多くが焼却によっていますからそれは大変困難なことであったでしょう。

だとするならば、つまり何百歩も譲ったとしても、最低限、焼却の大いなる危険性を社会に対して明らかにし、被曝防護の徹底化を呼びかけるべきでした。それで防げる被曝もあったはずです。しかしそうした防護策はまったく出されなかった。このことで人々は2次被曝、3次被曝とでも呼べるものに遭遇しました。首都圏を含む膨大な数の人々がです。

このように本来、住民を守る義務を負っているはずのこの国の官僚は、事故直後から続けられてきた焼却による被曝から人々を守りませんでしたし、いまもなお守ろうとしていません。それどころかいわば「現に起こっている事態に法律を追いつかせること」に心血を注いだのでした。その結果として出て来たのが8000Bq/kgという数字であったわけです。あまりにも本末転倒したものであることを私たちはおさえておく必要があります。

 

3、8000Bq/kgの初めての提示

さて問題の8000Bq/kgという数値は、6月16日に「原子力災害対策本部」から出された関連省庁への通知の中で初めて登場しました。8000Bq/kg以下の「上下水処理等副次産物」を、通常の管理型処分場で埋め立てて良いとする技術基準が示されたのでした。環境省を含む各関連省はこれに基づいてその後の方針を策定していきました。以下が問題の通達です。

放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の当面の取り扱いに関する考え方

http://www.mlit.go.jp/common/000147621.pdf

 

さらに6月23日に環境省が福島県内での方針を発表しました。福島県内において「上下水処理等副次産物」と同じく8000Bq/kgまでの放射性廃棄物を管理型処分場で埋立て良いとする基準が示されました。

福島県内の災害廃棄物の処理の方針

https://www.env.go.jp/jishin/attach/fukushima_hoshin110623.pdf

8月30日にはこれらを受け、「放射性物質に汚染された廃棄物の処理」と「土壌等の除染」の二本柱からなる、いわゆる「放射性物質汚染対処特措法」が新たに公布され、一部施行されました。これによって、それまで原子力災害対策本部からの通知や環境省からの方針の形で出されていた、8000Bq/kg以下のものを一般の廃棄物と同じく通常の管理型処分場で埋め立て可能にすることが合法化されたのでした。

「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」

http://www.env.go.jp/jishin/rmp/attach/law_h23-110a.pdf

 

4、問題の本質は被曝が野放しに続けられていることにある!

以上が8000Bq/kgという数値が出て来たもともとの経緯ですが、ここまでで整理すべきことは、そもそも問題の背後にあるのは、放射性物質の原発外への放出を想定せず、原発外での放射性物質の管理に関する法律を作ってこなかった国の大きなあやまり、責任にあるということです。ここにはもともと「原発の外へ膨大な放射能が漏れることなどありえない」という認識が、原発を動かす上での住民への重大な約束であった事実も含まれています。このことだけでも本来、原子力政策が放棄されるべき重みがあります。

しかもこの国の官僚たちは、法律を作ってこなかっただけでなく、現に進行する被曝になんら歯止めをかけようとせずに、ただ法的つじつまをあわせることばかりを進めてきたのでした。私たちはあくまでもこの責任を追及し続けるのでなければなりません。

同時にこうした被曝の野放しや、さらなる被曝の強制にストップをかけるために、この大きな法的かつ道義的欠陥を民衆側から埋め合わせるものとしての「放射能汚染防止法」を策定していくことが問われています。

このもとで放射性物質の危険性への注意喚起をもっと大規模に行い、放射性廃棄物を厳しく管理していくことで、これ以上の被曝を少しでも低減していくことこそが問われています。これがこの問題の本質であることをまずはおさえておきましょう。

続く

以下、5月28日の学習研究会のお知らせを貼付けておきます。

*****

放射性廃棄物拡散問題第8回学習研究会

福島第一原発事故で放出された放射能にさらされ、除染作業などによって集められた膨大な放射性「汚染土」。これを8000Bq/kgのものなら公共事業で再利用してしまえというあまりにひどい政策が進められつつあります。私たちは、この問題についての学習研究会を立ち上げ継続してきました。

第8回研究会は、前回に引き続いて全国で活発化しつつある放射能汚染防止法制定の動きについて考察します。テキストとして『制定しよう 放射能汚染防止法』(山本行雄著 星雲社)を使います。それぞれの方がお持ちになる必要はありません。主要部分をレジュメ化してご紹介します。
今回も基調的な報告を守田敏也さんが行い、その上でみなさんのご意見をお聞して討論します。ぜひご参加ください

5月28日(日) 午後2時~4時
場所 市民環境研究所(京都市左京区田中里ノ前21石川ビル305)
主催 NPO法人・市民環境研究所

呼びかけ 石田紀郎(市民環境研究所代表理事)
     守田敏也(フリーライター・市民環境研究所研究員)
参加費 若干のカンパをお願いしています。
連絡先 090‐5015‐5862(守田)

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