萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか純文学小説×写真×文学閑話

葉月五日、向日葵―aerial sepulture

2017-08-05 21:17:15 | 創作短篇:日花物語
喪色の朱夏、
8月5日の誕生花


葉月五日、向日葵―aerial sepulture

けれど日中南時は空を仰ぐ。

「雨が止んだね…いいぐあい?」

微笑んで空、かすかな陽炎が墨色ゆらす。
曇天あわい灰色の涯、還ってゆく煙も透明な今の技術。
きっと昔なら見えたのだろう、そのほうが良かったろうか?

「…昔なら火葬ばかりじゃないか、」

つぶやいた樹影、やわらかな熱が頬ふれる。
暑い盛りの時は風ぬるむ、その温もりが今は優しい、体温みたいで。

「もっと時間、ほしかったな?」

笑いかけて唇、かすかな緑があまい。
渋い甘い青い香、どこかで夏草を刈ったのだろう。
よくある夏の香と推測、そんな日常のまんなか見送る野辺に花揺れた。

「あれ?」

この花、こんな色だったろうか?
いつも黄金ゆれる夏の花、けれど今は赤ふくんだ黒。
こんな色いつからあったのだろう?見慣れない花色を見つめて、ほっと笑った。

「そっか…好きな花だもんな?」

あのひとが好んだ花、だから今年は色を消す。
太陽の黄金を消して落陽の黒、そんな花にすら面影を見つめて沈む。
そうして服す愛しい夏に空、墨色ゆれる還らす煙。


向日葵:ヒマワリ、花言葉「私はあなただけを見つめる、崇拝、adoration 愛慕、false riches 偽りの富」
赤紫色のヒマワリ「悲哀」

にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村 blogramランキング参加中! 人気ブログランキングへ 
著作権法より無断利用転載ほか禁じます

PVアクセスランキング にほんブログ村
ジャンル:
小説
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 山岳点景:葉月、蓮華升麻レ... | トップ | 第85話 暮春 act.31-side s... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

創作短篇:日花物語」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。