萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか純文学小説×写真×文学閑話

神無月十八日、紫式部― bright

2016-10-18 23:48:00 | 創作短篇:日花物語
光たなびく、
10月18日の誕生花



神無月十八日、紫式部― bright

菫色、紫苑、藤色、竜胆に桔梗。

紫さまざま黄昏たなびく、朱色に紅ひく夕雲の刷毛。
こういう空ただ見て飽きない、それでも急ぐ靴先に夕陽が誘う。

ほら腕時計、もう1時間は待たせている。

「っと、」

駆けこんで扉押しあける、もう人少ない書棚の空間。
たぶん窓に近い奥の席だ?ずっと知っている習慣たどって、いた。

「おまたせ、ひ」

呼びかけて、でも声止める。
だって集中している貌だ?

―なに読んでるんだろ、分厚いけど、

ハードカバー重たげな本、そのページ軽やかな指が繰る。
肩こぼれる黒髪に横顔は見えない、でも左手ほおづえは集中の貌。

これ、ずっと見ていたら気づくの何分後?

―しばらく見物してよっかな?

興味そっと椅子を引く、閲覧テーブル腕くんで顎のせる。
気づくの何時になるだろう?見つめる真中、濃やかな睫ふっとこちら見た。

「あ、」
「おまたせ、遅くなってゴメンな?」

笑いかけ机から起きあがる。
ワイシャツの袖めくりなおす先、ワンピース姿が笑ってくれた。

「ううん、そっちこそ後夜祭は?」
「途中で抜けてきた、帰るぞ?」

答えながら立ちあがる。
かたん、椅子の響く窓に幼馴染が微笑んだ。

「私が急かしちゃったよね、ごめんね?初めての文化祭なのに、」

黒目がちの瞳が見あげてくれる。
その言葉に思ったまま笑った。

「おまえ来なくても抜けて帰ってるよ、遠距離通学だしさ?」
「うん、たしかに遠距離だったね、」

素直に肯いてくれる、その目線なんだか遠い。
こんなに身長差あったろうか?なにげない変化に右手さしだした。

「だろ?その本ちょっと貸せよ、借りたんだろ?」

この幼馴染なら借りるだろう、気に入ったなら。
どんなに重たくても借りてしまう、そんな同朋だから分かちたい。
紫式部:ムラサキシキブ、花言葉「聡明、上品、愛され上手」


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2 コメント

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Unknown (dan)
2016-10-20 19:53:00
ぴったりの花言葉ですね。
二人の様子がドラマのように目に浮かびます。
少し控えめの花の姿が好きです。
北欧の写真美しいですね。私もつい懐かしくて
アルバム見て思い出に浸っています。
風邪治り際が大事です。気をつけて下さい。
danさんへ (智)
2016-10-20 22:07:44
書き流したような短編にコメントすみません、嬉しいです。
この二人に合う花言葉だったので合間に書いてみました、笑
北欧に行かれたんですね?ゴハンも美味しかったので自分は好きです、笑

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