萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか純文学小説×写真×文学閑話

文学閑話:春若菜×万葉古今

2016-01-08 09:35:40 | 文学閑話万葉集
お題「七草粥は食べますか?」に参加中!
春いぶく



文学閑話:春若菜×万葉古今

明日よりは 春菜採まむと 標し野に 昨日も今日も 雪は降りつつ  山部赤人
あすよりは はるなつまむと しめしのに きのうもけふも ゆきはふりつつ やまべのあかひと

明日から春の若菜を摘むからと、目印つけておいた野原に昨日も今日も雪ふりつもる
新春を迎えたと言っても春はまだ遠い、そんなふうに僕の恋も春迎えるのはまだ少し先みたいだ。
まだ君は若すぎて恋愛するに幼すぎる、それでも明日からは君の心に青春の時は芽生えるかもしれない?

早春の歌『万葉集』第八巻に春雑歌として掲載されています。
詠人の山部赤人は雪を謳うことが上手い人です、この1月2日に載せた富士の歌も赤人の作になります。
どちらも雪を寿ぐトーンで詠んだ情景描写が美しいです、で、万葉集はじめ和歌は叙情詩なのでイツモドオリ相聞歌に解釈しました、笑

原文「従明日者 春菜将採跡 標之野尓 昨日毛今日母 雪波布利管」
2句目「春菜」は「はるな・わかな」どちらにも読ませます、その読みから「青春・若い・幼い」の意味をとり訳しました。

この「春菜採=若菜摘」は日本古来からの伝統行事です。
去年も『古今集』などからとりあげて紹介していますが、現在の早春行事・七草粥のルーツになります。
なので昨日1月7日に掲載予定だったんですけど、アレコレとりまぎれ1日遅れてしまいました、笑



若菜摘は平安時代には「子の日行事」の一つとして行われています。
子の日行事とは正月初子=はつねの日に行われ、雪のなか小松を引き抜く「小松引き」や若葉を摘んで食べる宴です。
この若菜摘でいう「若菜」とは植物の固有名詞ではなく、春に採れる山菜や薬草など食用にする植物全般をさしています。
早春に雪から芽吹く力がある若菜には生命力があると考えられ、これを食べて邪気を払い病気など悪いコトが退散するとされていました。

科学的にも早春の山菜は解毒作用や消化促進の栄養素を含むものが多く、冬に蓄積された老廃物を排出する薬効があります。
同様に五月五日「端午の節句」は菖蒲ショウブと蓬ヨモギ、九月九日「重陽の節句」は菊の薬効を用いています。
こうした薬効を古代の人達は経験から積みあげ、それを行事に採りいれ伝えてきました。
こんなふうに伝統行事はただの迷信ではなく科学的立証され得るものが多いです。
温故知新と言いますが、伝統歴史は未来つむぐデータベースってことですね、笑

この若菜摘が「七草粥」の行事となったわけですが、粥にする青菜「春の七草」はぜんぶ言えますか?笑
芹・薺(なずな)・ハコベラ・ゴギョウ・菘(すずな=蕪)・蘿蔔(すずしろ=大根)・仏の座(ホトケノザ)
これを1月7日に七草粥として現在も食べるワケですが、千数百年前の若菜摘みが今に伝わる由緒正しい薬膳の智慧です。



君がため 春の野に出でて 若菜摘む わが衣手に雪は降りつつ  光孝天皇
きみため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ

君に贈りたくて、春あさい野山に出かけて若菜摘みしたんだ。
そうしたら雪が降ってきた、菜を摘む僕の手もと袖に雪が降りかかる。
この雪に清められた若菜だからこそ君に贈りたいんだ、君の常春の幸せを祈って。

百人一首十五番、かつ『古今集』にも載っている歌です。
この歌は光孝天皇が即位する前=親王の時に詠んだそうですが贈り相手は女性です。
ようするに恋歌=相聞歌として詠まれた恋文なワケです、なので「若菜」に恋人の健康と美貌を願っています。
そんなワケで「若菜」=健康+春=健康で若い&美貌+青春、って意味から「常春」永遠に続く春の幸福に訳してみました。

また、歌が詠まれた平安時代は恋人と夜XXXした翌朝にお互い着物を交換する風習がありました。
着物=小袖などは男女差が無いので交換できる、で、恋人の衣をまとい残り香に名残惜しむってカンジです。
この歌も恋人の着物をまとっているのかもなって思います、ソレを知らせるために「衣手」と詠んで恋人に贈ったのかなと。

で、この恋が実ったのかどうか?はちょっと調べていません、笑

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2 コメント

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Unknown (dan)
2016-01-08 10:31:02
七草も過ぎてのご挨拶 明けましておめでとう
ございます。
年末年始とお出かけの様子、美しい写真を見ながら
若さと行動力を羨ましいと思いました。

今日の歌は余りにも有名で知らない人も知っている?
でも智さんの解釈は素敵です。
こういうふうに読めばいいのだと感嘆しきりです。

さてお願いをひとつ、私の「たまゆら自然公園にて」
読んでみて下さい。そして是非ご批評を!!
danさんへ (智)
2016-01-08 13:32:59
あけましておめでとうございます。
せっかくの休みなので出かけてきました、大掃除&年始まわりアレコレの合間でしたが、笑

光孝天皇御製は百人一首でも覚えやすくて有名、
去年もとりあげたんですけど今年は万葉集と組ませてみました。
気に入ってもらえてよかった、笑

たまゆら自然公園、実はすぐ拝読してるんです。
戦場ヶ原の写真とリンクしているみたいで嬉しいなーと思いつつ、忙しくて感想書けずにいました、笑

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