「コクソン」は、「哭声」(叫び声という意味)でもあり「谷城」(舞台となる村の名前)でもある。
山間の村で起こる殺人事件。ある者が親族を殺し、その容疑者もまた亡くなるという不可解な事件。
殺人現場の描写が何とも生々しい。
古い家屋、土埃、家畜、雨、廃墟、そして血や肉。
凄惨な現場と強烈な匂いとが、こちらに襲いかかってくる。
村に最近やって来た日本人はあからさまに怪しい。
村からさらに離れた山奥にひとり住み、けたたましく吠えまくる犬と共に暮らす男。
その理由はさっぱり分からない。
彼もまた、多くを口には出さない。
おそらくは日本にもあるだろう、山間の小さな村。
ほとんどが顔見知りしかいないコミュニティに、突如現れた「異質のよそ者」。
その登場とほぼ前後する形で起こる謎の殺人事件。
疑うなというほうが、むしろ不自然。
映画の序盤から、嫌なフラグが立ちまくる。
妻、妻の母、娘と4人で暮らす主人公の警官。
なんでもない日常のささやかな幸せが描かれ、同時にこのあとに訪れるであろう「幸せの崩壊」が予感させられる。
「悪魔が憑いた」としか思えないほどに変容を遂げる娘。
科学では解明できない、なにか不気味なものが、この村には存在する。
事件を解決するために、娘を救うために奔走する主人公。
クライマックスで交錯する、さまざまな虚実。
あるいは、すべてが嘘で、すべて真実。
主人公の選択は、誤りであり、正しくもある。
もしもこの映画がハリウッドでリメイクされることがあるとしたら、とてつもなく平凡なラストになることだろう。
アメリカの映画では、きっとこんな形で家族を描くことはできないはず。
誰かと一緒に観に行って、お互いの解釈を話し合うと、より楽しめるかもしれない。
陰鬱な描写が続くけれど、ブラックユーモアもふんだんに盛り込まれていて、エンターテインメントとしても成立している。
國村隼さんの快演も、評判通りに素晴らしかった。
150分近くある大作だけど、最後まで緊張感が切れることなく、十分に楽しめた。
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