ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

着物の繰り回しのスゴ技

2010-02-18 15:00:17 | 着物・古布
またしても雪が降りましたがな。5時の時点ではこりゃ積もっちゃうよ…でしたが、
9時ごろにはパラパラになり、さすがにこの時期です「春の淡雪」…消えましたー。

さて、写真は、先日の「繰り回し」の古い本の1ページです。
着物から羽織、と左の「いかにも昔らしい」女の子は「お母さんの襦袢から着物」。
なにしろ「昭和8年」の本ですから…。このころはまだお母さんの襦袢に、
こーんな派手な友禅のものがあったのですねぇ。
今の綸子のぼかしの襦袢じゃ、これだけのインパクトありません。

この前の「訪問着の繰り回しで羽織に…」もそうなのですが、
和裁の繰り回しって、ほんとにおもしろくてすごいです。

普通の小紋とか紬などの着物で、柄に上下もなく均一にあるものの場合と、
今回のように「裾に柄のある絵羽」とでは、当然繰り回しの方法が違うわけです。
小紋などの場合は、柄を気にするよりは布の傷んだ部分とか、シミ、ヤケなどが重要。
何もなければ、普通に「着物を羽織にする方法」を使えばいいのですが、
たとえば隠したいなぁと思う部分があったら、それを隠せるように繰り回すわけです。

ところで、この「繰り回し」という言葉ですが、
洋服でいうとリフォーム…?私はちょっと違う感じがするんです。
「繰り回し」という言葉は、経済のほうでいうと「やりくり」…というようなことに
使われます。和裁の繰り回しは、まさしくこの「やりくり」です。
元々着物の場合の「繰り回し」は、基本的には一枚の着物をやりくりして、
もう一度着なおせるようにすることです。
たとえば、袖口が汚れたり傷んだ場合は、肩の袖付けを解いて、
袖の「肩側」と「袖口側」を入れ替える…これで、汚れた袖口は袖付けの中に隠れ、
今まで袖付けの縫い代として中に入っていたきれいな部分が袖口として出てくるわけです。
よほど擦り切れてでもいない限りは、裁たずにそのまま入れ替えます。
裾も同じで、揚げの部分を伸ばして、傷んだ裾部分を切るとか、
よほどハネなどの汚れが上まであるの場合は、腰でカットして上下を入れ替える…。
銘仙や紬のように裏表の無いものは、その裏表をひっくり返すことさえできます。
本来の「繰り回し」は、こういう意味なのですが、
まったく別のものに作り直すことも含めて言うようになっています。
今回の「訪問着」は呉服屋の奥さんは、羽織は後姿に柄が出たほうが私は好き…と、
身頃の前後を入れ替えるのはどうかといいましたが、
これは私の好みと「和裁師さん」の「前に柄が来るのが、この羽織のおもしろさ」…で、
判定2対1、身頃の入れ替えはしませんでした。(勝った!??)

洋服の場合、元の形を変えるとか、その服から別の何かを作る場合、
たとえば、長袖を切って半袖にする、長いスカートを切ってミニ・スカートにする、
まったく別のものにするなら、コートからワンピースとか大人の服から子供の服とか。
どっちにしても、一枚のものから、同じ大きさのものはできないことがほとんどです。
ウエストを少し広げるとか、そういうことはできますが…。
これは洋服というものが、体の形に沿って作るために曲線を多用して作られているからです。
大人の洋服を子供の服に替えようとしても、たとえば袖をそのまま使えません。
大人の袖山のカーブやアームホールは、子供のそれと形も大きさが違いますから、
そのままつめればいいというわけにはいかず、袖山のカーブから変えなければなりません。
つまり大人の袖の上に子供の袖の型紙を乗せて、切り出すことになります。
だからこそ、上手に作れば、まったく新しい別の服が出来上がるわけです。
それはそれでまた楽しいもので、私もオットのワイシャツから息子のシャツを作ったり、
コットンパンツから息子のサロペットを作ったり…しては「まだはけたのに」とか
言われたりしてましたっけ。

一方、着物の方は同じ小さくするのでも、同じ人が着られるものができるわけです。
着物から羽織、はその典型ですが、実は「羽織から着物」というのもできます。
こちらがその方法を書いたページ、読みづらいけど…。
当然「羽尺」で作った羽織ではできません。


          


もちろんこの前の「訪問着羽織」のように、無いはずの縫い目はできてしまいますが…。
こちらがその出来上がりを書いたページ…胸のところに斜めの縫い目がありますね。
どうするとこうなるか完全に「パズル」でーす。


     



こちらはオーソドックスに「着物から羽織」…なのですが、
これは図のように元の衿と掛け衿をついでいます。
でも、トップ写真を見ると、柄がこんなだから目立たないんですね。
それと、おくみを衿にする場合も真後ろで継目が出ない作り方、も書いてあります。
更に、この先生…すんごいことが書いてあります。
「私などは着物を羽織にしたり、羽織を着物にしたりはしょっちゅういたします」
奉って、お神酒でも供えたくなります。あなたの「手」をくださーい。
またこの「着物から羽織」は、あとあと別のものに使うための裁ち方作り方と、
着物には戻らないが、襦袢や夜具にはラクに変えられる作り方とが載っています。
細かく説明すると長いので書きませんが、とにかく「先、そのまた先」を考えています。


         

    
つまり、いつも言っていますように、着物というものは
「反物から着物を作る」のではなく「反物から『最初は』着物を作る」のです。
振袖や留袖にいたるも、再利用は考えられておりました。
もちろん、いいものはそのまま伝えることも多かったわけですが…。

母は、さすがに羽織を着物にするところまではやりませんでしたが、
つぎまくって寝巻き、とか、半纏とかそんなことはしていました。
そういう話の中で「全部四角いから、必要な寸法分とれたら何でもできる」といってました。
和裁の特徴は、どこまでいっても「長方形」に裁ち、長方形に戻す、です。
そのため、たとえば傷んだところを切ったり、しみのところをよけたりして、
並べた長方形の布の総量が、自分がこれからほしいと思っているものの総量にあえば
後は「組み立てるだけ」なわけです。足りない分はこっちから持ってきて…と、
やりくりして継ぎ合わせればいいわけですね。
だからこそ、着物には「裁って捨てるところ」がないのです。

さっき書きました「やりくり」ということば、これは家計でもいいますね。
「やりくり」って、要するに「これだけある、これをどう振り分けるか」とか
「これしかない、どこから持ってくるか」とか…そういうことですよね。

つまり、洋服のリフォームはほとんどの場合「引き算」が中心ですが
着物のリフォームは「やりくり」なのです。
だから「繰り回し」という言葉を使うのは、ほんとに「言いえて妙」だと感心します。
もちろん、洋服と同じように、引き算になっていく繰り回しも当然ありますが、
最初の段階でのリフォームは、たいがいが「ハデになったから染め直す」
「着物から羽織にする、帯にする」で、当人が着られるものです。
全て長方形に裁ち、縫い代を裁ち落とさないということの利点であるわけです。

この本は、前述のように「昭和8年」の本です。
まだまだ着物が当たり前に着られていた時代です。
当然、生活水準も暮らし方も社会情勢も、今とはいろいろ違います。
この本の作品ほどには繰り回しをしなくても、今の時代着物は着ていかれます。
それでも「着物って、こんなおもしろいこともできる、すごーいもの」だということを、
知っていてほしいなと思うのです。



ご近所の「今朝の蘇鉄さん」、かわいそうにさぞ寒いことでしょう。
蘇鉄の別名は「鳳尾蕉」、鳳凰は架空の鳥ですが、なーるほどこんな形です。


   
     


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10 コメント

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すごい (とうこ)
2010-02-18 16:58:03
そういえば、母も縫い直した着物も最後には、前掛けにしていましたし、
綿入れといって、綿の入った引っ張りみたいな物に変身させたりしていたのを覚えています。
昔の人は、物を大事にしたのですね。
繰り回し・・・勉強になりました。

いいなぁ (チヒロ)
2010-02-18 17:27:23
初コメです。はじめまして。
繰りまわし、というものにとても興味があったのですが、なるほど、リフォーム、ではなくてやりくり、なのだなぁと納得しました。

お裁縫が苦手な私ですが、手元にあるアンティークきものをなにか生まれ変わらせたい・・・洋服でもいいけど、なんかこう、ザクザク切り刻むのじゃなくて、うまくできないかなぁ・・と思っていたところ、「やりくり」の記事は参考になりました〜。またお邪魔させていただきます。失礼しました〜。
Unknown (ゆん)
2010-02-18 17:44:40
素敵です!いや、繰り回しはもちろんなんですが、こういう中着があったことが・ことに!

 こういうのを見ると、つくづく、「着物って重ねて着るのが愉しいなぁ♪」と思います。妻んないですね、綸子のぼかしばっかりじゃ。下着じゃあるまいし!って。
 こんな素敵な布ならば、どうあっても捨てたりなんてできません。使い回しも効くわけですよねぇ、中に楽しめて、外に華やかで…。

 「これはもう派手だから、娘のために…。」って、ため込むばっかりじゃなくて、自分のための繰り回しを考えようかな・って思いました。ありがとうございました^^
羽織→きもの (やのめ)
2010-02-18 17:51:47
こんにちは
今朝も雪でしたね。私の住まいは関東平野の北の端ですので、このところは、本当に寒いです。
昨年、突然きものに目覚めた友人が、伯母さまから譲り受けた古い銘仙の着物を『何とかして』と持ち込んできました。きものとしては、寸法が小さすぎるし、派手なので、羽織にしましょうと解いてみましたら、きもの→羽織→きもの。と繰り回しをされていたものらしく、背の内揚げ位置で接ぎがあり(前落し分を横に接いでありました)羽織には難しいと判断し、帯にしようかと思案中です。
四つ身の着物にはなるかな?小さい女の子がいらしたら選択肢の一つになりそうです。
何度も繰り回しができるというのは、知ってはいましたが、実際に見たのは初めてで、普段している呉服屋さんの仕立物では、洗い張りをしても、またきものに仕立てることが多いので、こういった古い着物を触ると勉強になることが多いです。理数系頭脳ではないので、やりくりのパズルで、頭痛を起こしそうになりますが。
お客様も、こういうことができると、ご存知の方が少ないので、あちこちに接ぎの入る繰り回しは、提案しにくいです。
すごい技ですね (陽花)
2010-02-18 21:31:16
布が簡単に買える今の時代では考えられない事ですが、手に入りにくいと色んな事を考える
ものなんですねぇ。
お友達のお母さんはエプロンから見える所は
いい着物を着ているように見せ、隠れる部分は
継ぎちゃんこの着物を普段は着ていたと聞きました。生活の知恵、手間を惜しまない昔の人は
素晴らしいと思います。
Unknown (とんぼ)
2010-02-19 21:11:02
とうこ様
私の母も、およそ何でも繰り回しましたね。
モノのない時代でもありましたから、
手ぬぐい一枚もムダにしませんでした。
今、モノがあるからといって、
ムダにしてもいいわけじゃないんですよね。
考えて暮らさなきゃと思います。
こちらこそ (とんぼ)
2010-02-19 21:13:40
チヒロ様
はじめまして、ようこそおいでくださいました。

和裁の繰り回しは、昔の本なら
いろいろ出ているのですが、
モノが豊富な今は、洋服に作り変える本ばかりです。
もちろんそれもステキな再利用のひとつですが、
もう少しカンタンな「和の繰り回し」の本が
でるといいなぁと思っています。
Unknown (とんぼ)
2010-02-19 21:15:34
ゆん様
この着物は秀逸ですよね。
これができる手合いのちりめんを
いろいろ持っていますが、着せる娘が
いないのよーです。
やっぱり自分で着よう、ですね。
そう、下着じゃないんですから、
赤く着たいですよね。
Unknown (とんぼ)
2010-02-19 21:17:33
やのめ様
昔のものをよく解きますが、
ないものをどこからどうしてるか、
ほんとにすごいと思います。
おっしゃるとおり、そういう技も、
それを着ることも伝わっていませんから、
「こんなところに縫い目があるなんて」と、
それが困るのですよね。
そのためにも、ちっとずつでも実践と発信をと
そう思っています。
Unknown (とんぼ)
2010-02-19 21:19:30
陽花様
「ない」ということは、知恵を生むんですよね。
必要は発明の母とも言いますし。
私は、あまりにもモノがありすぎる今、
だんだん人間が怠惰になっていく気がしています。
手間をかけることが「時間の無駄」といわれる、
そんなことは、いつまでも続かないんじゃないかと、
そんなこともふっと思います。

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