<フィールド学習会番外編> 足廻間池の自然を楽しむ
(美浜町、17世紀後半~19世紀前半に構築)
フィールド学習会に行けない方や、雨で中止の場合のプログラムです。
◆足廻間池とは、ため池シンポジウム会場の日本福祉大学美浜キャンパス内にある小さなため池です。野球のグラウンドが隣接しているため、ボールが散乱しており、きれいなため池ではありませんが、大学キャンパス内にあることでそれなりに守られています。シンポジウムの会場からは、歩いて5分ほどのところです。
シンポジウム当日(16日)には、カメなどの生き物が観察ができるように準備を行います。以下は、実行委員のコメントです。
◆足廻間池は、小さな谷池ですが、堤体側以外は照葉樹の森に囲まれ、自然が保たれています。今回のシンポジウムをきっかけに、大学内に足廻間池を研究・保全のサークルを発足させたいという話も出ています。将来的には、大学や学生たちによる地域のため池の支援組織に育てばよいと思います。
足廻間池にはアンペライなどの水草もあり、トラフトンボの姿も確認できました。この池はキャンパス内にあり、釣り人が入らないので、周囲の森なども含め、上手に保全すれば、多数のトンボの舞う、自然豊かなため池になりそうです。冬にはカモなども入りそうですので、彼らによって浮葉性の水草も増えそうです。足廻間池の脇にはノバラとアザミも咲いていました。
大内秀之(NPO『カエルの分校』)
◆「日本福祉大学美浜キャンパスの中にため池がある」と聞いて、まず思い浮かべたのは、しっかりとコンクリートで護岸され、キャンパス内の施設然とした人工的な池でした。しかし、実際に見学すると、その予想は大きく外れました。背後にはこんもりとした森林を抱き、水際は土のまま。下流こそグランドとなっていますが、堰堤も草地として維持されていました。このような生物多様性を支える素地のあるため池がキャンパス内に残されていることは、生きた教材として大変貴重であると感じました。
私は地理学出身なので、足廻間池とその周辺が現在までにどのように変化したかが気になりました。キャンパス造成のため、ため池周辺の地形や水系が現在はわかりにくくなっています(写真1)。そこで、キャンパス造成前の1978年の空中写真を見ると、このため池は伊勢湾にそそぐ山王川の水源の一つにあたり、谷戸(谷に開けた水田)の最も奥まった場所に位置していたことがわかります(写真2)。また、周囲には所々がミカン畑として切り開かれた里山の森林が広がっているのも見えます。この様子から、かつては下流の水田の貴重な水源であったこと、背後の山林がため池を潤していたこと、そして山林・ため池の水域・水田が一体となった豊かで健全な生態系が存在しただろうことが想像できます。この景観の一部が、そっくりそのままキャンパスの一部となって残されていることは、やはり貴重です。
今後、植生学の立場からは、池上流の森林・堰堤の草地それぞれについて、フロラ(植物相)と群落の調査を行い、基礎的なデータを得ることが大切だと感じます。これにより、このため池の貴重さや地域の自然環境の中での位置づけを客観的な目で明らかにすることができ、また、保護の指針も提案することができるでしょう。
写真1: 1988年(キャンパス造成後)の足廻池周囲
写真2: 1978年(キャンパス造成前)の足廻池周囲
*本記事中に掲載の空中写真は、いずれも国土交通省の国土画像情報(カラー空中写真)によるものであり、ため池周辺を切り出して使用している。
富田啓介(名古屋大学大学院環境学研究科)
(美浜町、17世紀後半~19世紀前半に構築)
フィールド学習会に行けない方や、雨で中止の場合のプログラムです。
◆足廻間池とは、ため池シンポジウム会場の日本福祉大学美浜キャンパス内にある小さなため池です。野球のグラウンドが隣接しているため、ボールが散乱しており、きれいなため池ではありませんが、大学キャンパス内にあることでそれなりに守られています。シンポジウムの会場からは、歩いて5分ほどのところです。
シンポジウム当日(16日)には、カメなどの生き物が観察ができるように準備を行います。以下は、実行委員のコメントです。
◆足廻間池は、小さな谷池ですが、堤体側以外は照葉樹の森に囲まれ、自然が保たれています。今回のシンポジウムをきっかけに、大学内に足廻間池を研究・保全のサークルを発足させたいという話も出ています。将来的には、大学や学生たちによる地域のため池の支援組織に育てばよいと思います。
足廻間池にはアンペライなどの水草もあり、トラフトンボの姿も確認できました。この池はキャンパス内にあり、釣り人が入らないので、周囲の森なども含め、上手に保全すれば、多数のトンボの舞う、自然豊かなため池になりそうです。冬にはカモなども入りそうですので、彼らによって浮葉性の水草も増えそうです。足廻間池の脇にはノバラとアザミも咲いていました。
大内秀之(NPO『カエルの分校』)
◆「日本福祉大学美浜キャンパスの中にため池がある」と聞いて、まず思い浮かべたのは、しっかりとコンクリートで護岸され、キャンパス内の施設然とした人工的な池でした。しかし、実際に見学すると、その予想は大きく外れました。背後にはこんもりとした森林を抱き、水際は土のまま。下流こそグランドとなっていますが、堰堤も草地として維持されていました。このような生物多様性を支える素地のあるため池がキャンパス内に残されていることは、生きた教材として大変貴重であると感じました。
私は地理学出身なので、足廻間池とその周辺が現在までにどのように変化したかが気になりました。キャンパス造成のため、ため池周辺の地形や水系が現在はわかりにくくなっています(写真1)。そこで、キャンパス造成前の1978年の空中写真を見ると、このため池は伊勢湾にそそぐ山王川の水源の一つにあたり、谷戸(谷に開けた水田)の最も奥まった場所に位置していたことがわかります(写真2)。また、周囲には所々がミカン畑として切り開かれた里山の森林が広がっているのも見えます。この様子から、かつては下流の水田の貴重な水源であったこと、背後の山林がため池を潤していたこと、そして山林・ため池の水域・水田が一体となった豊かで健全な生態系が存在しただろうことが想像できます。この景観の一部が、そっくりそのままキャンパスの一部となって残されていることは、やはり貴重です。
今後、植生学の立場からは、池上流の森林・堰堤の草地それぞれについて、フロラ(植物相)と群落の調査を行い、基礎的なデータを得ることが大切だと感じます。これにより、このため池の貴重さや地域の自然環境の中での位置づけを客観的な目で明らかにすることができ、また、保護の指針も提案することができるでしょう。
写真1: 1988年(キャンパス造成後)の足廻池周囲
写真2: 1978年(キャンパス造成前)の足廻池周囲
*本記事中に掲載の空中写真は、いずれも国土交通省の国土画像情報(カラー空中写真)によるものであり、ため池周辺を切り出して使用している。
富田啓介(名古屋大学大学院環境学研究科)