Tomatopiaの日記帳

クラシック、短歌、旅、思い出、政治

短歌をラテン語で (その2)

2015-10-31 11:59:59 | 短歌

西欧語の世界でも短歌や俳句が受け入れられている、というのはずいぶん前から知っていたが、それに親しむ機会はなかった。今回それがどんなものか見てみようと思い立って、インターネットであれこれ探してみた。

英語、フランス語、ドイツ語で「短歌の案内」が見つかった。この順の頻度と「受容度」で紹介が出てくる。私の語学力のせいもあって、英語についてのみ典型的なサイトを見てみた。

 

日本の短歌はよく理解されているようだ。その「精神」において、そして技法についても――ただし、技法については言語の違いがあって、日本語の構成との違いからかなり自由な展開があるようだ。

日本の「現代短歌」の多くは一行で句読点も空白も入れずに書かれる。英語短歌では四行、五行が一般的な殆ど「定型」になっているようだ。日本短歌でもその形式を実践した(する)人はいる。石川啄木や釋超空などがすぐ思い浮かぶ

 

at the funeral of
one who said
God is dead
God is
dead

 

やはらかに柳あをめる
北上の岸辺目に見ゆ
泣けとごとくに       (啄木)

 

をとめ子の心 さびしも。
 清き瀬に
  身は流れつつ、
   人恋ひにけむ    (超空)

 

日本では短歌を「歌う」あるいは「朗誦する」習慣は多く失われかけているようだが、英語短歌では「音楽性」が重視されている、そして4行、5行での分かち書きが大切な役割を果たしている。どの英語短歌も口に出して読んでも美しく響く――もちろん、日本の現代短歌でもそれが内在するのは暗黙的に必須なのだが、表立ってそれが要求されることは余りないように思う。しかし朗誦して美しく響くことを大切にする歌人は多い。とくに近代短歌ではそうで、歌人もよく朗誦したそうだ。その録音も残っていて刊行されている

 

Just out of earshot,
the periodic blinking
of a night airplane,
not quite far enough away
to be as close as the stars

 

われを見て過ぎたる時の返らざる理(ことわり)をのみ云ふ山河かな  (与謝野晶子)

みなづきの氷小豆のほの赤き家族集へば影絵のごとく  (辺見じゅん)

ささやかに生きたあかしの歌一首弥生の街に残さむとする  (永井陽子)

 

現代短歌技法もずいぶん深く研究、あるいは「叙述」されていて、とても分析的な見方である。これはギリシャの「アリストテレスの詩学」以来の伝統なのだろうか、ストローフ、アンチストローフ、ピボット、ゼウグマ、シーサラスなど、我々にはまったく分からない言葉を用いて英語短歌が分析されている。われわれにとっては分析的な理解よりも、まず無意識的に「いまそこにあるもの」として短歌は口をついて出てくるものなのだか・・・かれらがまったく未知の文化を受容するとき、まずこのような接近方法を取るのは必然かも知れない。「和魂洋才」の変種であろう。

興味深いのは、いまや短歌が「短詩として確立された形式」とされ、「シュールリアル」、「ポストモダン」な詩、としてまで受け取られているらしい。このような詩型はこれまで西欧にはなかったもののようだ――いや、それに近いものはあったのだが・・・「エピグラム」、「アフォリズム」というものがそれに近い(たしかニーチェにもそんなのがあったかな?)。しかしそれは「詩」というより、「寸鉄人を刺す」ような短い諺のようにして使われていたと思う。

その「短詩」の神髄は「日本の短歌と全く同様に」深く理解されており--それを「幽玄である」とまで言われると、少しはづかしい気もするが--、その創作が実践されている。そして、短歌の神髄は他の外国語にも通じるものであり、様々な言語で実践することが勧められていた! これには感激した。

 

英語短歌は「非正式な構文や文型、日常言語の語彙を用いる」 とあり--しかし構文・文型は分かりやすいものでせいぜい「倒置法」が用いられている程度だ--つまり「口語短歌である」との宣言だろう。それならば、「口語ではない文語、つまりラテン語でも歌うことは十分可能」ということだろう。

そのサイトの説明では10首の英語短歌が挙げられているのだが、みなすぐれた日本短歌と同じ「風味」を持っている。

以下、そのいくつかを紹介してみる。  その後につけた和訳は私の逐語訳ならぬ「逐行訳」」)    これについては別ページで。

 

 

 

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