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今日の筆洗

2016年12月11日 | Weblog

 <笹(ささ)や笹笹 笹や笹 笹はいらぬか 煤竹(すすだけ)を>。江戸の昔でいえば、師走十三日の煤払いの日も近い。端唄の「笹や節」。二上(にあ)がりの三味線の音がわびしい。うたわれているのは雪の夜、煤払いに用いる笹竹を売り歩いている赤穂義士、大高源吾(おおたかげんご)である。歌舞伎「松浦の太鼓」でもおなじみだろう▼両国橋の上。源吾は俳句の師だった俳諧師の宝井其角(たからいきかく)とばったりと出会う。其角は身をやつした源吾の変わりように<年の瀬や水の流れと人の身は>と発句する。源吾も句で応える。<明日待たるるその宝船>。「明日」とは無論、吉良邸討ち入りの日。それをほのめかす句だが、其角はその決意に気づかぬまま別れる▼いい場面だが、後の創作と聞く。一年の汚れを落とす煤払いと主君の無念を晴らす敵討ちが結び付いての発想だろうか▼十三日の煤払いは今では後にずれ、どこの家も大掃除といえば年末ぎりぎりか。あまり急いで大掃除をしたところで、すぐにまた汚れる▼この稼業でいえば、洗い落としたくなる一年のほこりとは、気の重くなる事件や出来事かもしれぬ。本社内で十大ニュースの選出が進んでいるが、今年も熊本地震や相模原市の障害者施設での大量殺傷事件など胸が塞(ふさ)がる数々の出来事が起きた。リストをながめため息が出る▼せめてこれから年越しまでは何もなきよう。そう願い、「笹や節」を口に乗せる。