情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

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朝日新聞パリ支局長に問う、日本の新聞はフランスよりも権力から独立しているのか?

2008-10-12 11:41:06 | メディア(知るための手段のあり方)
 朝日新聞のメディア研究誌「朝日総研リポート」が刷新され、「Journalism ジャーナリズム」として再スタートした。すばらしいタイトルだし、最初の特集として「個人情報保護法と取材の問題」を取り上げるなど意気込みを感じる。今後、さらに充実した誌面となることを期待したい。しかし、最初の号で非常に気になる記事がいくつかあったのは残念だった。

 一つは、NHKの番組改編事件の最高裁判決の紹介記事だ。長谷部恭男東大教授が書いた解説の見出しは、「編集の自由が拘束される余地を大きく限定した判決」。
 社外執筆者による原稿ではあるが、これを再スタートを切ったメディア研究誌の初号に掲載したのは、与党政治家に白旗を上げることと等しい。
 NHKの番組改編の裏には、与党政治家の圧力があったことをすっぱ抜いた朝日新聞は、本来、この最高裁判決に対して、政治家の圧力に屈したNHKの編集権を擁護するのは報道の権力からの独立に反することになる、という批判を加えなければならないはずである。
 それにもかかわらず、Journalismというタイトルに刷新したメディア研究誌の初号で、最高裁判決を歓迎するかのような記事を掲載したことによって、朝日新聞のいうJournalismの程度が透けて見えると言われても仕方ないだろう。猛省を求めたい。


 もう一つは、パリ支局長がフランス新聞事情を紹介した記事だ。「ルモンド紙と経済紙レゼコー 内紛で露呈したフランスの新聞記事」というタイトルがつけられている。

 パリ支局長は、導入部分でこう書いている。「日本の新聞がそれなりの問題を抱えながらも、それが報道の独立にまで影響する段階にはない。しかし、フランスの状況は深刻だ。多くの新聞の経営が軍需産業や有名ブランドに握られ、報道への経営陣の介入と、これを恐れての自主規制が一般的となっているからだ。この国で、報道の独立は危機的状況にある」。

 しかし、本当に危機的状況にあるのは、日本ではないだろうか?

 パリ支局長は、危機的状況の象徴として、まずは、高級紙「ルモンド」の内紛を紹介している。

 ルモンドでは、社長人事に対して、記者会が拒否権を持っている。記者会メンバーが6割以上賛成しなければ、社長は選任されない。このような力を背景に、記者会は、サルコジ大統領に近い人物を社長から引きずり下ろしたり、その後任の社長による大幅リストラに対するスト決行などがなされている。

 パリ支局長はこのような内紛について否定的に書いた上、その内紛の背景にルモンドの外部株主に防衛・メディア産業大手「ラガデール・グループ」がいることを紹介している。

 確かに、ラガデール・グループが支配する新聞・雑誌で、サルコジを擁護する編集方針がとられているのは事実だろう。パリ支局長は、パリマッチ誌で、サルコジが内相時代、当時の妻セシリアが実業家と駆け落ちした際、セシリアと実業家のツーショットを掲載した後、編集長が更迭されたこと、パリマッチ誌がサルコジの腹の贅肉を削った写真を掲載したこと、ジュルナル・デュ・ディマンシュ紙が、サルコジの大統領選の決選投票でセシリアが棄権したことを取り上げ、批判しているが、それは当然だ。

 しかし、パリ支局長の視点には問題がある。すなわち、このようなラガデール・グループに対して、記者会が人事権などを背景に抵抗していることを「内紛」ととらえ、いかにも問題があるかのように書いていることだ。

 そうではない。記者会が一定の権限をもつことで、パリマッチ誌などのようなストレートな圧力を受けないシステムになっていることはむしろ、報道の独立にとって望ましいことであり、内紛ではなく、輝かしい抵抗として、評価するべきだろう。

 パリ支局長が上げるもう一つの事例は、名門経済紙「レゼコー」がルイ・ヴィトンなどを抱える高級ブランドグループ「LVMH」に買収されたことだ。

 パリ支局長は、LVMHによる買収に対し、編集局や記者会が、「経済紙としての報道の中立性が損なわれる」として、反対運動を繰り広げたにもかかわらず、LVMHによって買収され、編集局長が退社した経過を紹介している。
 
 この買収が問題だというなら、それは一理ある。しかし、問題は、買収に当たって、LVMHが記者側の理解を得ようとして、報道の自由を保障する11項目の原則を発表し、記者会が合意する人物を含めた監査委員会の設置や記者の3年間の雇用保障を約束したことについて、「騒動」の一環としてとらえているだけで、このような交渉によって、いかに、記者側が報道の自由を確保することに力を注いだかという視点から捉えていないことだ。

 そのうえで、パリ支局長は、フランスで、ジャーナリストの権利が手厚く保護されていること(/Χ肇献磧璽淵螢好箸了餝覆鯑世襪函雇用元に縛られない記者活動が認められ、給与面や税務面などで優遇されること、⊃景垢諒針が大きく変わった場合、記者は手当を得て辞職できること)を紹介しつつも、それだけは、記者の身分が保障されても、新聞自体の独立性を守ることはできないと評価する。

 そして、日本では、「日刊新聞法」によって、新聞の株式の売買が厳しく規制されており、これをフランスの記者会が導入すべき制度だとして評価していることを紹介し、記事を結んでいる。

 このパリ支局長は、株式の売買が制限されれば、新聞の独立が維持されると主張しているが、日本の新聞とテレビが系列化していることによって、政府との癒着が新聞とテレビ相互間で批判されない構造になっており(たとえば、電波をテレビが安く利用していること、新聞が独禁法違反と言われる再販売価格制度を維持するっために自民党に陳情をしてきたことなどは本来、テレビと新聞の間で批判しあうべきこと)、結果的に、政府から独立していない状態にあることをどう考えるのだろうか。

 基本は、記者個人個人の独立である。記者個人が独立していて初めてジャーナリズムは保障される。

 NHK番組改編問題で、涙の告発をした長井さんや裁判で真実を述べた永田さんは、編集現場を外されるという報復人事を受けている。

 他方、政治家の介入をすっぱ抜いた朝日新聞の本田さんも、一時、編集現場を外された。

 パリ支局長は、こういう状況について、そして、最高裁判決の内容について、フランスのジャーナリストとぜひ、意見交換してほしい。意見交換を通して、いかに、日本のジャーナリズムが危機的な状況にあるかが分かるはずだ(いや、本当は分かっていながら、今回の記事を書いているのかもしれないが…)。

 NHK番組改編事件について、共同通信は、先日、次のような記事を配信した。

「従軍慰安婦を特集した2001年のNHK教育テレビの番組が放送直前に大幅に改編された問題で、NHKの現役職員とOBの有志が、NHKと民放連でつくる放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会に、改編の真相究明を申し入れたことが8日、分かった。」

 現役職員が立ち上がったことは、報道の自由にとって、大きな意味を持つ。しかし、この配信を大新聞が追っかけて記事にすることはなかった。

 このこと自体、パリ支局長のいう新聞の独立が日本では有名無実なものとなってしまっていることを明確に示しているのではないだろうか?

 さて、パリ支局長、あなたは、NHK職員たちが立ち上がったことを報道するべきではないとお考えですか?それとも報道すべきだとお考えですか?

 報道すべきだと考える場合、あなたは、報道するよう編集局長に進言できますか?進言できるような手段(フランスの記者会のような手段)を朝日新聞の記者は持っていますか? 

 

 

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