情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

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取り調べの可視化(録画)に反対する土本元検事執筆「正論」の意味不明さ~恥ずかしくないのか

2007-10-25 07:00:28 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 白鴎大学法科大学院院長・土本武司氏が、産経新聞の正論で(※1)、取り調べの可視化(録画)に反対している。しかし、その論考は、まったく、非論理的であり、説得力がない。検察を代弁するのに、こんな稚拙な論考ではずかしくないのか、ちょっと心配になるほどだ。というか、可視化こそが「正論」であり、反対すること事態が無謀だということなんでしょうね。それにもかかわらず、反論しなければならない土本氏には同情するしかない。


 土本氏は、まず、【「犯罪を最もよく知る者は犯人である」との自明の理に立脚して、捜査官は被疑者の取り調べに情熱を注ぐ】という。ここには、疑われた者が犯人でないことを確認しようという視点はまったくない。被疑者=犯人だから、徹底的に取り調べて吐かせる…こういう意図が感じられる。とんでもない話で、だからこそ、可視化(録画)が必要になるわけだ。

 百歩譲って、単に犯人であれば最も犯罪をよく知る者だから…と言い換えたとして、だから何?って感じ。「だから」被疑者の取り調べの必要があるというのなら分かるが、「だから」取り調べ時に録画してはならない、という結論は導きようもない。

 なお、土本氏は、【その取り調べの結果は、取調官自らか立会官が供述調書の形で記録化している。それは逐語的でない半面、冗長な供述を整理して記載してあるため供述内容を把握しやすい】と付け加えるが、それがどうした?分かりやすい供述調書を作るなら作ればいいじゃないですか?でも、同時に録画しても問題はないでしょう?

 次に、土本氏は、

【この問題はまず、欧米諸国と異なり、日本人被疑者の場合は、捜査官への自白が罪責感情を軽減させる機能を果たしていることを知るべきである。
 犯人が被疑者としての取り調べを受けることになったとき、とくに身柄の拘束を受けたとき、その直後は新しい環境に緊張するが、それに慣れ、取調官と親和する心理状態になれば、取調官との間に感情移入により“悔悟”の心情が芽生えて自白がなされるのである。したがってわが国における取り調べは、欧米でのそれのように、取調官と被疑者の対立闘争関係ではない。
 私の体験からしても、自白はむしろ取調官と被疑者が友好的関係になり、心のラポートがかかったとき、すなわち琴線に触れたとき生まれるものであり、対立抗争の関係にある間はそれがないため自白は生まれない。だから怒号とか理詰めの尋問は決して有効でない】

という。

だから、何?怒号とか理詰めの尋問ではないなら、録画しても何の問題もないでしょう?心のコラボレートをかけた感動的なシーンはぜひ、録画しておいてほしいもんだ。

次に、土本氏は、

【第2に、取り調べの録音・録画を実施している諸外国では、取り調べ以外に真相解明のためのさまざまな捜査手段が用意されていることを知るべきである。例えば「司法取引」や「刑事免責」は、重大事件の犯人を逸することのないよう機能しているし、「通信傍受」「おとり捜査」「潜入捜査」なども、「取り調べ」方式に代わる真実発見方法としての機能を果たしている。真実発見も適正な手段によることが強調されるわが国では、それらの代替手段は好まれない】

という。

まずは、通信傍受、おとり捜査、潜入捜査…しているじゃない。①通信傍受は、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」があるし、②おとり捜査、潜入捜査は最決平成16年7月12日が一定のものについては違法ではないとしている。事実をゆがめたんでは「正論」の名が泣きまっせ。

次に「司法取引」や「刑事免責」って、やってるじゃない、現に…。例えば、
【2007/10/12-13:19 捜査員が元組員に便宜=接見禁止中に妻と面会-判決で認定・東京高裁
 強盗傷害罪などに問われた元暴力団幹部関新次被告(55)の控訴審判決が12日までにあり、東京高裁の長岡哲次裁判長は取り調べを担当した警視庁捜査一課の捜査員が、接見禁止中に妻と面会させるなど便宜供与を図った事実を認定し、「刑事司法の公正さを揺るがしかねない行為」と非難した】(時事通信)

取り調べが録画されていないことをいいことに、警察はやりたい放題って知ってるくせに…。

そもそも、犯罪を取り締まるために有効は手段が必要だ、ということと、取調の可視化とは何の関係もない。まずは、取調を可視化して、人権侵害をなくしたうえで、犯罪が増えて困るというなら、別に捜査方法について検討すればよいだけのこと…。


最後に土本氏は、

【また、録音・録画記録制度を採用した先進国であるイギリスですら、同制度には次のような問題があるとしている。(1)取り調べを形式的・画一的な手続きにしてしまう(2)被取調者は将来その内容が一語一句すべて公開されることを覚悟しなければならず、自白がしづらくなる(3)何らかの理由で録音・録画がなされなかった場合、そのことをもって当該供述の証拠価値が低く見られてしまう-など】という。

しかし、(3)は、言語道断、盗人猛々しいし、(1)、(2)なんてのはあったとしても少数意見で、捜査官の多くは、任意性がはっきりするようになり、無駄な争いがなくなったとして歓迎している。

【(英国)政府は、1980年初頭から、録音の試験実施に踏み切りました。すると、録音に反対していた警察側から、録音に積極的な意見が多く出されるようになりました。録音をしても、自白を引き出すことは妨げられず、かえって、取調べ方法に対して、警察官が非難されることがなくなったことなどが、その理由です】

【取調べが可視化されたことにより、取調官の取調べ技術の問題点が次第に明らかにされるようになりました。このため、警察においては、PEACE Mode1という取調べ技法を開発し、取調べにあたる警察官らに教育を始めるなど、取調べ技術が格段に進歩したのです。】(以上、※2)

ここもミスリードだ。

土本さん、どんだけ~、と思ったら、これだけですか?


※1:http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/071019/trl0710190331000-n1.htm

※2: 「取調べの可視化(録画・録音)の実現に向けて-可視化反対論を批判する-」(日弁連) http://www.nichibenren.or.jp/ja/special_theme/data/torishirabe_kashika.pdf










★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
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「美しい」日本の「伝統を保全」したいんでしょ? (田仁)
2007-10-25 11:49:11
右翼誌の「正論」が言う事ったら、一つ覚えのソレしか無いじゃないですか。
「美しい国」の、グレーゾーンを出来るだけ多く保全し「伝統を守る」!
下から読めば「憎いし苦痛」って、ヤメ蚊先生も書かれてましたが。
只、もしかしたら、ついでに米軍利権の保護も有るか知れません!
って、代用監獄とか日本の取調べが世界に遅れてるのを理由に、犯罪を犯した在日米兵がなるべく日本警察に取り調べられる期間を少なくする、例の日米地位協定の運用の件ですが。
性犯罪とか、マスコミに騒がれると早期の引渡しも最近は有るけど、あくまで恣意的な運用ですから!明文化じゃないです!
(前以って右翼の方に言っときますが、「日本の取調べが世界に遅れてる」って、あくまで米国の主観なんで、文句は米国か米軍に是非どうぞ!私は引用しただけですので。)
それで (それで)
2007-10-25 13:15:42
通信傍受やおとり捜査は日常的に行われているんですか?
修正? (川添)
2007-10-25 14:59:51
原文読んでいないのですが、引用が間違いでなければ、コラボレートではなく「ラポート」(信頼感、とかの意)ですよね。
もっと公開すべきかな (wakuwaku_44)
2007-10-25 18:02:14
取調べの可視化は、もっと行うべきでしょうね。
それと、代用監獄の問題もまだまだ解決しておりません。

私はどちらかというと死刑存続という考えですが(廃止論を批判するつもりはない)、別に無実の人を死刑にしろとは思いませんし、冤罪は絶対に防がないといけないのですから、それに必要な措置はもっととらないといけないと思います。
訂正! (ヤメ蚊)
2007-10-25 19:23:58
コラボレートは、ご指摘のとおり、ラポート=(親密な)関係 =でしたので、訂正します。

なお、【通信傍受やおとり捜査は日常的に行われているんですか?】については、実態は明らかにされてないというのが回答です。裏金問題とかで警察は共犯ですから、なかなか正確な情報が出てこないですね。
Unknown (Piichan)
2007-10-25 22:15:57
マスコミが本当に冤罪を無くしたいと願っているのならば、やはり記者クラブを開放してできるだけ多くの人に捜査状況を監視してもらうことと、警察官や検察官の実名を報道するべきでしょう。
実録。。取調べ室。。。 (sakura)
2007-10-25 22:41:49
ある事で、警察での取調べを自ら経験した私。
自慢できる話ではありませんが、こんな体験をすることは普通ないので、参考になればと思いました。

取調べ調書って自分の話した事を記録されると
思っている方。

違うのですよ!!

すでに警察の刑事さんが作文してある調書があり、
それに合わせて、聞き込みをするんです。

そして、「えーーー!!そんなこと言ってないよ!!」なんてざらです。

二言目には「我々は調べて検察に送るだけだから。」と逃げる!!

あくまで、警察は事実を検察に送るだけ。

でも。。。事実とは、「あなたは、犯罪者。」と
いう元につくられるのです。

それを元に検察は捜査をするのだそうです。

そして全ては密室で行われるのです。

9時間~10時間はざらにかかる取調べ調書。
そんななかで、冤罪が作られていくのはこんな
感じなんだと。身を持って体験をしました。

思考力も忍耐力も限界の状態になります。

こんなときに、あなたを守って下さるのは、「有能な
弁護士さんだけなのです。」

どうかこの大切な事実を、今一度皆さんに知っていただきたくここに記すことに致しました。

日常生活に「まさか自分だけは。。。」はないのです。
いつ、自分自身に「まさか」が来るかはわからないのですから。
憲法を考慮せずに言うと (wakuwaku_44)
2007-10-26 00:02:51
通信傍受にしろ、おとり捜査にしろ、犯罪組織自体がスパイ組織を思わせるような高度な状況になりつつあるようですから、これを抜きに捜査をするというのは、技術的に難しいんじゃないかと思います。

だからといって、通信傍受やおとり捜査を是認するわけではないのですが、それをせずとも済む方法があればと思いますね。特におとり捜査は捜査員の生命が危険ですから。

ただし、外交や軍事については、通信傍受は、むしろ「やらないといけないこと」です。軍事面もそうですが、外交において、何の情報もなしに交渉するのは自分を不利にするだけで、貿易や漁業、軍縮会議の分野において、最悪、国民生活が脅かされることにもなりかねません。
特捜○○のファンですか? (田仁)
2007-10-26 13:03:40
ああ、そーでしょうよ!運用するニンゲンに問題があるだけで。
警察の汚職とか、閣僚の汚職とか、地方公務員の特権とか、ああいうのは特殊な一部だけで、裏金作りの慣例とTVの「特捜○○」捜査官は全く関係ないとか、そういう『善良な』市民のお陰で、日本の国債は今日も元気です!
日々育ってます!横にも縦にも成長期!万歳!って感じですか?
旭川の市民も、きっとそんな『善良な』ヒトが殆どだったんでしょうね…。
後ね、「通信傍受」では… (田仁)
2007-11-08 14:19:09
「ガーディアン・エンジェルズ」が警察無線を傍受して「防犯活動」に「役立て」てるって噂があるみたいで。
統一教会系だから、平沢勝共裏警察とか、都知事とかの後押しがあるんで、グレー・ゾーンもお咎め無しと囁かれてます…。

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