東京恋愛物語

Tokyo Short Story

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孤島の野犬31

2011-09-01 14:11:00 | Weblog
銀行から人影が無くなるのを待つ間、風は考えていた。


『果たして俺は、本心から「雷」の仇を討ちたいと思っているのだろうか?』


やるべき事だというのは分かっている。しかし、それが本心なのかどうか?が分からずにいた。


人間というのは、他人の事で涙を流すという。よっぽど平和な動物なのだろう。食糧が10個しかなく、11匹、いや11人というのか、いた時、1人減ったら涙を流すのだろうか?助かったと思わないのだろうか?


自分が人間の言葉を聞き、何故話せるのか、そんな事はあまり考えた事はなかった。しかし、おそらく子供の頃、人間と接触した事が俺をそうさせたのだろう、と思っていた。


「狼狩り」と呼んでいた人間達が山に入ってきたとき、子供だった俺だけ救われた。その時に一時期俺は人間と一緒に暮らした。ただ思い出そうと思っても、いや思い出そうと思っていないからか、その記憶は霧に包まれている。



この世に神なんかはいない。それははっきり言える事だ。もし神がいるのなら、祈れば助かるという事だろう。俺の前で命尽き果てていった奴らは、果たして祈っていたのだろうか?無駄だと思いつつも祈ったのだろうか?おそらく人間はそうするのだろう。しかし、神はいない。


己が何者なのか?そんな事を考える事すら、人間に近いのかもしれない。ただ生きていく事が、俺達の使命なのだから。


では俺が今からしようとしていることは何だ?俺が生きるために決して必要な事ではない。食糧を確保して、それに邪魔な者がいれば倒す。ただそれだけが俺の使命ではないのか?


それなのに、俺は今自分の命と引き換えになる事もあるだろう事をやろうとしている。何故だ?



そう思った時、最後の人影が建物の外に出て、厳重なロックを掛けようとしていた。


(つづく)
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孤島の野犬30

2010-07-30 16:14:02 | Weblog
「なるほどな。」


「銀」が今までの経緯を一通り話し終えると、「蜂」はゆっくり頷いた。


「だが、その薬草が何で必要なんだ?」


「それは分からない。ただ、おばあさんは皆を集めるために必要なんだ、って。島を守るために必要なんだ、って、それだけしか言わなかった。」


「うーん。」「蜂」はあまり納得がいかなかったが、それ以上は問い質してはこなかった。


「ところで、「風」の目的は何だ?何故島を出ているんだ?」


「それも分からないんだ。多分聞いても教えてくれないだろうし。」「銀」は改めて知らない事ばかりだと、少し憂鬱な気持ちになった。


「いずれにしても、「風」が吹いたら嵐の前触れって事だな。おそらく他の隊長達も何かしら察知しているだろう。いや、俺も含めて、(元)隊長だな。」「蜂」は冗談とも真面目とも取れる言い方で、半ば自嘲的に笑った。


「つーか、隊長は良いんだけどさ、俺の体調が嘆いてるんだけど。何か食い物無いの?」「枯葉」は真面目な顔で空気を乱した。


「お前は、本当に空気を読めないなぁ。今、真面目な話してるんだろ?俺の唯一の欠点はお前と知り合いだという事だ。」「雲」は、「銀」に対して申し訳無さそうに言った。


「あぁ、どうせお前みたいに空気を操る事は出来ねぇよ。でも腹が減ったら何もならんだろ?俺は世界が明日終わるって言っても飯を食うぞ。」


「全然意味が分からないなぁ。」「銀」も笑いながら茶化した。


「ははは。お前ら面白いな。こういう仲間が居るのも「銀」の能力の一つかもしれんな。すまんな、カメレオンさん。気が利かなかったよ。おい、「蝶」、飯を持ってきてくれ。」


「俺の名前は「枯葉」だっつーの。まぁどうでもいいけど。」


群れの仲間も加わり、しばらく皆が食事に夢中になった。岩山に似つかぬ程、贅沢な食糧の数々だった。この建物に残った食材や、この建物の周りに娯楽用に作った畑などのおかげだと、「薔薇」が説明してくれた。



皆が食事を終えた頃、聞いてくれ、と「蜂」が注目を集めた。


「俺はしばらく山を降りる。「銀」と共に薬草を探し、島に戻る。」


それは、やわらくであったが、反論を許さない口調だった。


「「蝶」、しばらくはここを頼む。」


「蝶」はそう言う事が、まるで分かっていたかのように頷いた。


「大丈夫だ。すぐに戻る。」


直感的に「薔薇」は「蜂」の娘なんだと、「銀」は理解した。「蝶」と「薔薇」の目を見ると、果たしてこれが正しい選択だったのかどうか、「銀」は不安になった。ここには少なくとも、あの島より平和があり、そしてそれが長続きするように思えたからだ。


それを見透かしたかのように、「蜂」は「銀」に言った。


「大丈夫だ。おそらくこれは俺の運命だ。そして俺は生きてここにまた戻る。準備が出来たら行くぞ。」


(つづく)
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孤島の野犬29

2010-07-16 15:42:23 | Weblog
「え?ここ?」


「枯葉」が、そう声を上げたが、「銀」も「雲」も同じ事を思っていた。


「蝶」と「薔薇」に案内されて連れて来られた場所は、周りこそ緑に囲まれているが、人間が作った2階建ての建築物だった。


「そうよ。ここで群れが暮らしているわ。」「薔薇」は、彼らが驚いているのが、ちょっと嬉しそうに笑いながら言った。


「ここは元々『老人ホーム』だったらしいわ。でもこんな所に作ったんじゃ、『姥捨山(うばすてやま)』も同然だけどね。」


「蝶」は、それが殊更面白い事のように言った。


「銀」には、『老人ホーム』も、『姥捨山』の意味も分からなかった。それを理解しているように、「枯葉」が、説明した。


「人間はよ、年をとると邪魔になっちまうんだよ。俺達は、長老として崇められる事が多いけどよ。まぁ、年取る前に死んじまうのが殆どだけどな。人間っつーのは長生きなんだと思うぜ。だからよ、必要以上に老人が余っちまうんだよ。もしかしたら寿命を延ばす薬草なんてのを発見したのかもしれねぇな。」


「象という動物は死期が近づくと、自ら群れを離れて死に場所を探すらしい。この建物は、言わば人間のそれかな。」


「雲」にそう付け加えられて、「枯葉」は面白くない顔をした。


「でも何で今は、もぬけの殻なんだ?みんな同時に死んじまったのか?」「枯葉」は面白くない顔のまま続けた。


「さぁ、それは知らないわ。」「薔薇」は、正直に答えた。




年を取ると邪魔になる、かぁ。長老は邪魔にはされてなかったけど、ボケてるって馬鹿にはされていたなぁ。人間と同じかもしれない。そんな事を「銀」はぼんやり考えていた。


しかし、2,、3歩、壊れた自動ドアから中に入っていった瞬間、恐ろしい殺気を感じた。そして、また、『それ』が見えた。おそらく誰も見えていない、牙と爪が2時の方向から向かってくる、それが。


『ドカッ』という音と共に、その頑丈そうな床に丸い穴が開いた。「銀」が今まで立っていた場所だったが、今「銀」はそこから2歩程右にいる。


「久しぶりだな、「銀」。そして、成長したな。」


「蜂」はゆっくり、そして笑いながら、そう言った。


(つづく)
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孤島の野犬28

2010-07-15 13:11:11 | Weblog
「銀」の持つ能力への畏怖か、もしくは戦意を喪失させる他の要因があったのか、グレーと純白は、意外にあっさりと敗北を認めた。


「さぁ、どうしてやろうか?」と枯葉が言うのと、「薬草のことなんだが、」と「雲」が言ったのは、ほぼ同時だった。しかし、その両方を「銀」は制し、「ちょっと待って、」と続けた。


「僕の名前は、「銀」。こっちは「雲」でこっちは「枯葉」。ここからだいぶ離れた南の島から船に乗ってやってきたんだ。」


しばらく沈黙が続いたが、グレーが先に口を開いた。


「私の名前は「蝶」。仲間からは「アゲハ」と呼ばれているわ。こっちは、娘の「薔薇」。私たちは、先祖代々、この山を守っている。」


「お母さん。」と、「薔薇」が不満気に声を漏らしたが、今度は「蝶」が、それを制した。


「彼らは、本当に戦いを求めてはいないわ。私たちも同じ。さっき薬草がどうの?って言ってたわね?」


「ありがとう。探し物をしたら、すぐに山を出て行くよ。探し物っていうのは、薬草なんだ。プロミタナスっていう紺碧の花を咲かせる草。」



「プロミタナス?聞いたことないねぇ。青い花なら見た事はあるけど。お前、知ってるかい?」


不意に振られた、「薔薇」は一瞬躊躇したが、


「ううん、知らないわ。でも「蜂」なら知ってるかも。私たちが見えない事まで見えるから。」


「「蜂」?」


「え、どうかしたか?」黙って聞いていた「枯葉」は、喋りたくてウズウズしていたんだよ、という風に大声をあげた。


「銀」は一瞬戸惑った。おそらく偶然同じ名前なだけかもしれないが、バラバラになってしまった隊長の一人、偵察隊長「蜂」かもしれない、と思ったからだ。しかし、こんな離れた山奥にいるわけはない、とすぐに考えを打ち消した。


「いや、別に何でもないんだ。もし良かったら、その「蜂」に聞いてもらえるかな?薬草のことを。」


「そうね。それじゃ一緒に行きましょう。どうせ「蜂」には今の戦いが見えていたんだろうし。機嫌が良ければ、教えてくれるかもしれない。」



「機嫌が悪ければ?」と、「雲」は「枯葉」が思っていた事を代弁してくれた。



「刺されるわ。」


ひときわ綺麗な声で、「薔薇」が答えた。


「ヒエッ。」


そして、いつもどおり、「枯葉」はそれが役目のようにおどけてみせた。


(つづく)
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孤島の野犬27

2010-07-08 17:34:26 | Weblog
「うふふ。お友達が、どうなっても良ければいいけど。」グレーは不敵な笑みを浮かべた。


「ちぇっ。厄介だな。」「枯葉」はおどけて言った。


いつの間にか、「雲」と「銀」の周りに、木のつた(のようなもの)が張り巡らされていた。


「こりゃ、『結界』だな。」「雲」は珍しく真剣な顔で冷静に言った。


「こいつにやられたんだな、さっき。」「銀」はその「つた」から出ている無数の棘(とげ)を見ながら

言った。


「そこのカメレオンさん、分かったなら、おどきなさい。さもなきゃお友達はすぐにあの世行きよ。」


グレーとは別の方向から声が聞こえた。見ると白は白でも「雲」とは違う、光るような白い犬が立っていた。「綺麗な色だな」、「銀」はおよそ場違いな感想を抱いたが、それと同時に「その声」に殺気がこもっていない事も感じた。


「はいはい、分かったよ。どきますよ。つーか、さっきから、『おどきなさい』とか『あの世行き』とか、時代劇じゃないっつーの。」

「枯葉」には緊張感というものが抜け落ちてるのかもしれない、そう思える口調であった。


「でも、逆に危ねぇよ。うちのキャプテンは、すげぇんだから。」


「何の『逆』なんだ」と思いながらも、「銀」は自然と動き出していた。殺気が無かった事での「隙」を見抜いた事もあったが、何故か自然と「いける」と身体が動いた。


「え?」


それが純白の声だったのか、それともグレーか。いや、「雲」も「枯葉」も声をあげていたかもしれない。ただ、どちらにしろ一瞬のうちに、「銀」は、その『結界』を越え、純白の隣に立っていた。


「うそ?この網をくぐれるわけはないわ!私の蔦(つた)は必ず動くものを捕らえるんですもの。」


「っつっても、もう遅いわな。さすがキャプテンだ。」


まったく「枯葉」は調子いいな、と思いながらも、「銀」は諭すような声で言った。


「僕には全ての動きが見えるんだ。だから、もう戦うのはお終い。」


「雲」は、まだ驚きの中にいたが、一人納得したように言った。


「やっぱおいらの目に狂いは無かったな。キャプテンの能力は、確実に覚醒した。」


(つづく)
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孤島の野犬26

2010-07-07 17:00:32 | Weblog
「だからよ、つまりはこの世の中は果たして平和なのかどうかって事だよ?」


「風」は夜になるまで、出来るだけ情報収集をしようとしていた。『裏の情報を得るには、ホームレスに聞くに限る。何より、犬と人間の区別をつけないのだから。』と、以前聞いていた。しかし、今、そのホームレスを目の前にして、「風」は後悔していた。


「『区別をつけない』っていうより、あんた自体が区別をつけられないって感じだな。」


「ん?何か言ったか?」酒臭い息と共に、その老人は言った。


「いや、別に。」


「まぁよ。自慢するわけじゃないが、俺っちらはよ、戦後の焼け野原からそれこそ死ぬ気で頑張ってきたんだよ。お国のためっていうよりよ、これからの未来の世代のためにだよ。」


「ああ、知ってるよ。」別に急いでるわけじゃないので、「風」も話を合わせることにした。


「格好つけてるわけじゃねぇんだぞ。本当なんだとも。それがどうだい?この有様は?食う物には困らねぇ、住むとこだって不自由しねぇのに、何だこの様(ざま)は?え?」


老人は更に大きな声で続けた。


「今や失業率は10%以上だとよ。老人は自分が生きる事だけに専念して、若者は生き甲斐をなくしている。親が子を殺し、子が親を殺してやがる。政治や社会が腐敗してるんじゃねぇんだな。人間そのものが腐ってきちまってるんだよ。日向にみかん箱置いといたら、箱開けたらみんな腐ってるだろ?それと同じだよ。」


「なるほど。」


「まぁ、犬に言ってもしょうがねぇか。でもだから俺はよ、もうやめたんだよ。人間でいる事をさ。いや、それこそ犬のあんたに言う立場じゃねぇな。」


「風」はそろそろ切り上げようと、話を終わらせようとした。


「邪魔したな。まぁ元気で。」


「おい。命は粗末にすんじゃねぇぞ。」老人は、さっきとは打って変わった口調で殊更真面目に言った。


「なに?」


「理由は分からんが、戦うことには意味なんかねぇぞ。こんな腐った世の中だけどよ、でもやっぱり生きなきゃいけねぇんだ。あんたからは今、憎悪とか復讐心しか感じられねぇんだよ。それは、意味の無いことだ。」


「ふふ。肝に銘じておくよ。」



「あと、だ。新三中(銀行)は、店を閉めて内部業務が終わったあとは、19:00と21:00に警備員が巡回する。今日だったら、19:30には社員は追い出される。定時退社日だからな。」


「風」は驚き、「あんた酔っ払ってんじゃなかったのか?」と言っていた。


「俺がいた頃と変わってなければ、の話だがな。残念ながらそれ以上は知らんよ。東京も行ったこたぁねぇしな。」


「いや、助かるぜ、じいさん。きびだんごぐらいあげたいとこだが、それは逆だな。」


笑っている老人を背に、「風」は走り出した。

(つづく)
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孤島の野犬25

2010-06-30 17:10:23 | Weblog
「厄介だな」枯葉がその口癖を言った瞬間だった。目の前の空気が揺らいだ。


「雲」が作り出す、空気の割れ目のそれとは違い、不規則な螺旋(らせん)を描くように目の前の光景が歪(ゆが)んでいった。


「キャプテン!」「雲」が叫んだと同時に、その意味を理解した「銀」はすぐに「雲」から離れた。一緒にいれば、一緒にやられるからだ。


「これはいったい何だ?」立ち止まった「銀」は目の前の光景に自分の目を疑った。もはや「雲」も「枯葉」も(もっともカメレオンは最初から見えていないが)、視界には入らなかった。大地は真っ白な粉で覆われ、どこまでも地平線が続いていた。上には太陽のような物が、眩(まぶ)しい光を放っている。


何も無いはずなのに、「銀」には何故かそこは安心出来る場所のような気がした。見た事もない風景なのに、どこか懐かしい感覚があった。


誰かが呼んでいる。「怖がらないで」「こっちにいらっしゃい」と。段々とその声は明瞭(めいりょう)になってきた。それは、会った事の無い母親の声なのではないか?いや、この時点で、既に「銀」は母親が呼んでいるのだ、と確信していた。


「危ねぇ!」声と同時に「銀」の身体が浮いた。浮く瞬間に、左腕に電流のような刺激を受けた。目の前の光景は先程の岩だらけの山に戻っていた。そして、左腕からは血が噴き出していた。


「雲」は「銀」の周りの空間を切り取り、身体を浮かせるのがやっとだった。「ちきしょう、派手な事しやがんな。」


「おーい。出て来いよ。正々堂々勝負したらどうだい?」


「この山は私たちの山だ。出て行きなさい。」おそらく、姿が見えないのは、まだ幻覚を見ているからなのか、声だけは聞こえた。


「『私たち』か。一匹じゃねぇってことだな。」「雲」は「銀」の傷を見ながらも近寄れずに呟(つぶや)いた。


「僕達は、この山で何かしようってわけじゃないんだ。ある薬草を探してるんだ。それを見つけたらすぐに出て行く。」


「銀」は左手を岩に押し付けながら叫んだ。


「薬草?信用できないねぇ。」目の前にグレーの犬が現れた。「申し訳ないけど、この山に入ったのが運が悪かったわね。」


空気が歪み始めたその瞬間だった。


「おい、動くんじゃねぇよ。」「枯葉」がそのグレーの首根っこを掴まえていた。


(つづく)
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孤島の野犬24

2010-06-10 13:45:01 | Weblog
「風」がこの街で行くべき所は一つだけだった。新三中(みなか)銀行は、本社を大阪に置いているが、西日本、特にこの九州地方に多くの支店を持っている。



あの渡瀬地組の組長が言っていた事が真実だとしたら、ここの支店でも話を聞けるかもしれない。東京支店の支店長の逆瀬沼(さかせぬま)が、どういう人物なのか。もしくは、表に出ない裏の顔はどういう物なのか、を。



しかし、相手が銀行となると厄介だった。人間がどうなろうと知ったことじゃないが、無闇に傷つけるわけにもいかない。そして公の場で騒ぎを起こせば、話がますますややこしくなる。



そこで、「風」は夜になるのを待つ事にした。誰も居なくなったのを確認して忍び込み、情報を取るしかないからだ。銀行に入って金を盗まないのは犬ぐらいなもんだろう、と自嘲気味に独りごちた。



その頃、「銀」たちは、近くの鉱山跡に向かっていた。おそらく、その鉱山自体にプロミタナスは咲いていないだろうが、その周りには現存している可能性があるからだ。


「キャプテン、あの山なんか怪しいな。」「雲」は、真剣な顔つきで言った。


「え、どうして?」


「いや、なんとなくだけんど。」


「でも、「雲」のなんとなくは結構当たるぜ。」「枯葉」は姿も見せずに、どこからか叫んだ。


「ふーん、じゃ行ってみようか。でも、それにしてもここの山はすごいね。本当に山だったの?」


そこは、ただ削られた土と砂利で固められた岩のようだった。所々に戻ることさえも許されなかった、ショベルカーやダンプの残骸が横たわっていた。


「そうだ。人間ってのは、自然を破壊する事しか出来ないのさ。自分達が生きるために何かを壊すけど、自分達は自然の何の役にも立たないんだからな。生態系の中で、唯一規律を乱している動物だな。」


そう「雲」が言うと、「銀」は彼らには聞こえぬような声で言った。


「もしかしたら、本当は動物じゃないのかもしれない。おばあさんの言っていたように。」


しばらく走っていると、突然「枯葉」が声を上げた。


「おい。」


「あぁ、分かってる。つけられてんな。」「雲」は「枯葉」に答えた。


(つづく)
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孤島の野犬23

2010-06-01 16:20:28 | Weblog
昔は炭鉱などで栄え、鉄などもこの港から世界に向けて運んでいたという。今は復興事業等に力を注いでいるらしいが、その寂(さび)れた感じは拭えない。


乗船客は、おそらくこの街に用があるわけではなく、素通りして温泉郷や隣の商業都市まで向かうのだろう。また、停泊期間が長そう(多くの客が大きなトランクを抱えている)である事から、鎖国時代に唯一の交流場所(事実は異なるそうだが)となった街まで、足を伸ばすのかもしれない。



ともあれ、「銀」たちにとっては、時間がある事は好ましいことだった。しかし、「風」にとっては、ここで足止めを食う事は、あまり歓迎すべき事ではなかった。



「さぁ、行きますか、キャプテン。」「雲」はいつものように軽い調子で声をあげた。


「やめてよ、そのキャプテンっていうの。船を操縦する人間の事を言うんでしょ、それって?」


「いや、リーダーって意味もあるんじゃないの?でもまぁ宝探しだからね。海賊のキャプテンって意味で良いんじゃないの?『キャプテン・シルバー』ってカッコいいじゃない?」「枯葉」も調子を合わせておどけた。


「銀」は呆れて言い返す気にもならなかったが、彼らのこの調子は居心地がよく、また彼らの事を好きになっている自分に不思議な感じを覚えた。おそらく、「風」とは全く正反対であろう、彼らの事も、「風」を好きなのと同様に、好きな自分に。


そう思いながら振り向くと、既に「風」は倉庫から出ようとしていた。


「おい、途中まで一緒に行かねぇか?空気の切れ間を走った方が、早く走れるぞ。」



「雲」は誰にでも、この調子で話すのだろう。「銀」は、それは、ある意味「雲」の強さの秘密だと思った。敵も味方もなく、自分を変えないのは、それは「強さ」であると、おばあさんは教えてくれた。



「いいや、これ以上『借り』を増やすわけには行かねぇからな。俺は用事を済ませたら船に戻ってる。何かあれば知らせてくれ。特に『借り』を返すチャンスがあれば、な。」



そう言うと、「風」は、まさしく風のように走って行った。まだ「風」の事を何も知らないのだが、少なくとも「雲」の調子に合わせる(もちろん勘違いかもしれないが)ような、その口調にまた少し親近感を覚えた。



「何か暗いのよね、彼。もしかして、ちょっとハードボイルドに憧れてんじゃないの?」


「ハードボイルド」の意味は分からなかったが、「銀」はその「枯葉」の口調だけで笑ってしまった。笑いながら、「雲」と「枯葉」に声をかけた。


「じゃ、僕らも行こうか。」


「了解、キャプテン!」


「雲」はそう言うと同時に、空気を切り裂いた。一瞬、このうらぶれた港が辿ってきた繁栄と衰退の歴史を瞬間的に垣間見たような気がした。それはただの幻であったのだろうと思いながら、「銀」は走り始めた。


(つづく)
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孤島の野犬22

2010-05-31 16:15:05 | Weblog
「いや、時間を止められるのかどうかは、正直分からんな。」


しばらくして、いつの間にか起きていた「風」は独り言のように呟(つぶや)いた。


「お目覚めですな。これは主観だけど、時間が止まったとしか思えないよ。」


「雲」はまたおどけて言った。


「本当に「自分でコントロールしてる」という認識は無ぇ。速さを追求して能力を伸ばす訓練をしていたのは確かだ。だが、そのうち周りが止まったように思えてきたのさ。最初は錯覚だと思っていたがね。空間を飛び越えるというか、その時間ごと飛び越えるような感覚だった。」


「それを「時間を止める」って言うんじゃないの?全てが止まっているうちに攻撃出来るんなら、やっぱり無敵だよ。」


「銀」も半ば興奮しながら言った。


「だが、コントロールは出来ない。しかもどのくらいの時間止められているのか、どのくらいの距離までこの能力は有効なのか、まだ掴みきれないのさ。そんな能力は、いざというとき役に立たん。よっぽどお前さんの「空間を利用する」能力の方が役に立つ。実際俺は助けられた。」


「ははは。あれも実は自分の思うがままにコントロールしてるとは言い難いなぁ。実際空気は見えんしね。そういえば、改めて。俺は「雲」だ。あの島で生まれ育った。この能力は島の神からの贈り物だと言われて、山を守ってきた。」



「そうか。俺は「風」と呼ばれていた。生まれは分からんが、ここから南の島で育った。そこにいる「銀」と一緒だ。あと、その奥にいる奴も、お前の仲間か?」


「あはは。バレてたんか。駄目だな、お前の能力自体落ちてんじゃねぇのか?」


「雲」は笑って振り向いた。


「いや、バレるはずねぇと思ったんだけどな。俺は、「枯葉」って呼ばれてる。俺もお供させてくれよ、キャプテンさん。一緒に探させてくれや。」


「いつの間に乗ってたの?」


「銀」は驚きながらも笑って言った。


「お前はいったい何を探してるんだ?別に言いたかなきゃ、言わなくても良いが。」


「風」は「銀」に向かって質問した。「銀」は正直に今までの経緯と目的を話した。その間、たまに頷き「風」は黙って聞いていた。


話し終え、「銀」が「風」の目的を聞こうとしたとき、「風」が言った。


「もうすぐ次の港に着くな。俺の目的はこの港じゃないが、情報収集のために降りる。あんたらは好きにすると良い。」


(つづく)
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孤島の野犬21

2010-05-24 17:50:21 | Weblog
「影(であった)」の手元には消音機を付けたS&Wオートマチックが転がっていた。「雲」は、こんな大きな音がするのに、何故「消音」と呼ぶのだろうと思っていた。しかし、周りに居る人間は誰もこの事態に気づいていないようだった。

船の灯りの反射が強く、またパーティーの雑音に消されていたのかもしれないが。


「お前には『借り』が出来たな。」


しばらく、何者かを聞き出そうと「影」の意識を確認していたが、反応が無い事を確認し、「風」は「雲」に、そう言った。


「いや。あんたなら俺が居なくても避(よ)けてたろ?」


「雲」は笑いながら言ったが、「風」は殊更真面目に、


「間違いなくやられてたな。」と、首を振りながら答えた。


「彼は、「雲」って呼ばれてる。これから一緒に旅をしてくれるんだ。」


ようやく事の次第を飲み込みつつあった「銀」は、なるべく明るくそう言った。


「俺は別に旅をしてるわけじゃぁない。でも、『借り』を返すまでは、一緒に居てもらわないとな。」


おそらく「風」なりの返事なのだろうと、「雲」と「銀」は微笑んだが、汽笛の音で皆一斉に走り出した。




「話はゆっくり船に乗ってからだ。」


と、「風」は走りながら言っていたが、倉庫の中に着いて間もなく、「風」は寝てしまった。


「多分、あの能力は相当体力を奪うんだろうな。」


しばらく横たわった「風」を見ていた「雲」は、独り言のように言い、「銀」に顔を向けた。



「さっき言ってた、『時間を止める』って本当なの?信じられないけど。」


「銀」は、先程からずっと思っていた疑問を口にした。


「ああ。多分間違いねぇな。例え想像を超える速さであっても、速いだけなら、俺の歪めた空気が振動するはずだ。だが、あの時、あの「影帽子」までの空間は微動だにしなかった。」


「すごい。そんな能力があったら無敵じゃないか。」


「そうさな。だが、おそらく相当なパワーを使うんだろうな。それと、その能力の継続時間と射程距離は、そう長くは無いだろう。そこが唯一の弱点ってとこか。」


「俺の場合は、空気を動かすだけだ。もちろん結構パワーは要るんだけどよ。ただ、一度コツを覚えちまえば、かなりの時間と距離で使えるんだ。所詮空気だからな。」


「いや、それも相当すごいと思うけどね。」「銀」は本当に感心しながら、そう言った。


「ははは。だが、俺が一番怖いのは、そのお前さんの能力だな。まだ発展途上だからよ。おそらくこれからの覚醒(かくせい)の仕方で、とんでも無い能力に成り得るからな。」


笑いながら、「雲」がそう言ったので、「銀」は冗談だと思って笑ってすましていた。しかし、後にこの「雲」の言葉に嘘は無かった事を自分で思い知る事になる。


(つづく)
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孤島の野犬20

2010-05-21 16:47:15 | Weblog
それは、一瞬の出来事であり、残念ながら「銀」には、その全てを瞬間的に把握することは出来なかった。しかし、一瞬であるが故に、それらはスローモーションのように映ったのも事実である。




「雲」と「銀」は、ちょうど船上パーティーが始まる、乾杯の合図の際、既に桟橋に着いていた。


「その「風」さんとやらは、来ない可能性もあるんだろ?先に乗ってた方が良いんじゃないかい?」


そう「雲」が言うと、「銀」は、その通りだと思いながらも、


「多分、、、分からないけど、必ず来ると思うんだ。だから、もう少しここで待ってるよ。」


と答えた。


「雲」は、しょうがないという顔をしながらも、早く旨いものでも喰いたいなぁ、と喉を鳴らしていた。



その矢先だった。「銀」が「雲」を呼んだ。


「来た!やっぱり来たよ!」


「雲」は「風」を目で捉える瞬間、いや、むしろ「風」を認識する前に、後方の「影」を察知した。


「危ねぇ!」


「え?」


「銀」は、「雲」が叫んだのを聞いたと同時に、空気が歪(ゆが)むのを感じた。


闇を切り裂いて飛んできた弾丸が、「風」の横で急に方向を変え、コンクリートに穴を開けた。



次の瞬間、「雲」はその影に向かって走ったが、いるはずのないその「影」の前に、「風」が既に立っていた。


「なんだ、こいつ、速すぎるぞ。」思わず、「雲」は口にした。


おそらく、さっきのボスからすぐに連絡を受け、「風」を狙ったのだろう。ただその「影」はそのミッションを失敗し、今首から血を流し横たわっている。多分、標的をはずしたまでは、記憶があったろうが、何故今自分が血を流して地面にうつぶせているのかは分からないだろう。


「雲」は、その能力ゆえか、もしくは、元来の察知力なのか、全てを悟った。


「お前の、その能力、、、」



「時間を止められるのか?」


(つづく)

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孤島の野犬19

2010-05-21 16:15:42 | Weblog
「風」が部屋を出ようとする時、ボスは聞いた。


「お、おい、お前、俺の仲間にならんか?」


人間のボスというのは、所詮この程度の事しか考えられないのか?と閉口しながら、黙ってエレベーターに乗った。


収穫は予想以上にあったが、思ってた以上に時間が掛かってしまった。既に辺りは暗くなってしまっている。出港時間までは、まだあったが、怪しまれずに乗船するためには、人間の出入りの少ない時間を狙わなければならない。


先程、「能力」を使い過ぎたせいで、体力はだいぶ落ちていた。何か喰って、栄養を補給する必要があったが、今はそれに割いている時間は無いと判断した。



時間を気にし過ぎたせいか、もしくは、能力の使い過ぎによる集中力の欠如か、もしくはこの慣れない土地での油断なのか、「風」は後を追ってくる影に気がつかなかった。



もっとも、その影はプロであり、「風」よりも上手(うわて)で、あったのかもしれない。



「風」が桟橋に着いた頃には、船の灯りは煌々(こうこう)と点(とも)り、船の上ではパーティーが行われているようだった。


「都合が良(い)い」



「風」は、うまくそのパーティーの喧騒を利用して、船に乗り込もうとした。



その瞬間だった。


闇夜から、一発の乾いた銃声が響いた。

(つづく)
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孤島の野犬18

2010-05-14 15:55:43 | Weblog
さっきはあれだけ時間かかったのに、あっという間に街が見えてきた。「銀」は空気の切れ間の威力を改めて感じながら、「雲」のあとに続いた。


「もうすぐだ。あそこのホテルの裏だ。」「雲」は少し嬉しげに、後方の「銀」に伝えた。


港に近い大きなリゾートホテルの裏手に回ると、社員通用口を通り過ぎ、搬出入用の車寄せに出た。また更に奥に行ったあたりで、「雲」は足を止め、こう吠えた。


「おい、俺に『隠れんぼごっこ』は意味無いぜ。」


「そんなこたぁ知ってるっつーの。でも、その坊やは誰だい?」リネンが詰まった袋が摘んである、大きなコンテナの向こうから声がした。


「こいつは、俺らのキャプテンだ。一緒に海賊船に乗り込むんだよ。」


それは「雲」なりの冗談なのだろうが、「銀」には笑うことが出来なかった。もしかしたら、本当に帰れない旅になるかもしれないからだ。

次の瞬間、また「銀」は驚かされることになった。なんの前触れも無く、目の前に斑の犬が現れたからだ。


「こいつの名前は「枯葉」だ。カメレオンとも呼ばれてっけどな。お前さんは、こいつが向こうの影に居ると思ったろ?最初から目の前に居たんだぜ。」「雲」は自慢でもするように笑って言った。


「うーん、すごい。」


「へぇーキャプテンねぇ。かっこいいじゃない?そんでどこまで旅すんのさ?」「枯葉」は品定めするように、「銀」をジロジロ見た。


「銀」の代わりに「雲」が、その目的を話し、そして続けた。


「つーわけでだ、しばらく俺と会えなくて寂しいと思うが、我慢しろよ。」


「お前がいなけりゃ、俺は隠れんぼの王様だっつーの。とっとと行って、二度と帰ってくんなよ。」笑いながら、「枯葉」は答えた。


「ははは。んじゃ行こうぜ、キャプテン。」と、「雲」が促した。


「おい、これ餞別(せんべつ)だ。持ってけ。」「枯葉」は手に持っているものを投げてよこした。


「何だこりゃ?首輪じゃねぇか?俺は飼い犬じゃねぇぞ。」「雲」は不満げに手に持った。


「知ってるよ、そんなこと。でも、これが意外に役に立つんだよ、人間の世界では。まぁ持ってって損は無ぇから。んじゃ、あばよ。」


そう、話し終え、「枯葉」はまた姿を消した。「雲」は、まだ不満げだったが、「銀」には彼らの関係がとても気持ちよく思えた。と、同時に、おそらく他の者には言えないような、多くの傷をお互いが知っているのだろうと、彼らの目から感じる事が出来た。


(つづく)
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孤島の野犬17

2010-05-14 15:00:37 | Weblog
最上階にもうすぐエレベータは到着する。大体ボスと呼ばれる奴は、高い所に居座りたがる。そう思って、迷わず「風」は一番上のボタンを押していた。


扉を開くと、2人の男が待ち構え、既に銃を抜いていた。先程下に来たチンピラ達とは、雰囲気が違う。明らかにボスの側近である事が分かった。


「お前らには用は無ぇ。ボスに会わせろ。」


黒いスーツの二人の男は、唖然とした。


「お、おい、今この犬喋ったぞ。」


「何だ、レコーダーか何かで喋らせてんのか?」


「風」は、ゆっくり、それと分からせるように男達に言った。


「俺が喋ってんだよ、三下。そこをどけ。」


カッとなった男の一人が指をトリガーにかけた瞬間だった。前方の部屋の奥から、くぐもった声がした。


『おい、その犬を入れろ。』


「し、しかし、、、」男はもう一人と顔を見合わせたが、ボスの命令は絶対らしい。


男は引き金から指を離し、部屋の扉を開けた。「仁義」という掛け軸さえ無ければ、一見どこかの中小企業の社長室と言っても、まかり通るような部屋だった。その部屋の一番奥の窓際、机の向こうに、黒い椅子に座った人物が居た。


「犬が喋るのはCMの中だけだと思ってが、最近じゃ本当に喋るんだな。俺に何の用だ?」ボスは笑いながら、聞いた。



「さすが組長さんだな、話が早い。『アクア・ホライズン』の責任者は誰だ?それを知りたい。」「風」は半分笑みを浮かべながら(もっとも人間にはそれと判断は出来ないが)、そう答えた。



「がっはっは。喋る犬が何を聞くと思ったら、そんな事か?こりゃ傑作だな。何故知りたいんだ?え?」まだ笑いを噛み殺しながら、ボスは聞いた。



「仇(かたき)を討つためだ。」こんな回答は意味が無いとは知りながら、わざとボスに調子を合わせた。


「仇だと?俺には恨みを買われる事がたくさんあるがな。リゾート会社が何の恨みを買われるんだ?もし教えたとして、俺には何のメリットがあるんだ?」


掛け軸とはほど遠い、いまどき残った組らしい質問だった。くだらないと思いながらも、今は目の前のこいつしか糸口が無いため、「風」は続けた。


「少なくともお前は死ななくて済む。」


「ははは?誰が俺を殺せるんだ?あ?」


そうボスが答えた次の瞬間、首から血を流した、黒いスーツの男二人がボスの机の上に横たわった。ボスには何が起きたのか分からなかったが、さすがに経験から殺気を感じる事ぐらいは出来たらしい。青褪(あおざ)めた唇が、それを物語っていた。



「早く病院に連れていかねぇと、こいつらホントに死ぬぞ。もう一度だけ聞く。『アクア・ホライズン』の責任者は誰だ?」


「し、新三中(みなか)銀行の逆瀬沼(さかせぬま)だ。と、東京支店の支店長だ。」ボスはやっとの思いで声を絞り出した。


ちっ東京か。また長旅だな、と思いながら、何も言わず「風」へ部屋を後にした。

(つづく)
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