ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはんbyFB…箱根・ポーラ美術館 『レストランアレイ』の、ルノワール家のごちそう

2012年02月21日 | ◆旅で出会ったローカルごはん


 1月21日から始まったポーラ美術館の企画展だが、印象派の「行
方」と称するだけに、ルノワールやモネが印象派展を離脱した、1880年以降の動きに着目したのが珍しい。
 点描のスーラにポスト印象派のゴッホ、色彩が強烈な「フォービズム(野獣派)」のヴラマンクらが台頭する一方、堅固な印象派を保持するセザンヌ、印象派後期作品に影響を受けたマティスやボナール、ルノワールの裸婦画を買っていたピカソら、印象派と関わり活躍した画家たちも。
 柔らかな印象派が、理論派・前衛的作風に押されていく。その中で回帰や継承という形で、印象派の流れが後世へ繋がる。こうした動向が、絵の比較や画家同士の関わりをもとに解説された、ちょっと珍しい意匠の印象派絵画展だった。

 鑑賞後にはレストラン「アレイ」で、企画展限定のコースメニューによる懇親会が催された。ルノワールら印象派にゆかりがある品が並び、メインの鶏のローストは、ルノワールの妻アリーヌの得意料理。静岡産の若鶏が皮はパリッ、身のふっくら優しい柔らかさが、家庭料理ならではの慈愛にあふれる。
 上にかかるクリームソースはシェリー風味で、チーズとの重奏な酸味が肉の味を膨らませる。食材個々が際立たないのに味が立体的なのは、輪郭をはっきりさせずに風合いを出す、印象派の真骨頂らしい趣がある。

 スープはルノワールが晩年過ごしたプロヴァンスの名物、ブイヤベース。南仏の太陽をたっぷり浴びたトマトの際立つ酸味に、エビ、ムール貝、鯛など海鮮のダシが加わったスープは、ルノワールとセザンヌが連れだって、料理店「エクスバン・プロヴァンス」に習いに行ったエピソードもあるとか。
 具材の煮え加減が絶妙で、魚介それぞれに合った熱の加え方が考えられている。こちらは点描や輪郭の明確化といった、理論派絵画的な味わいか。

 20世紀に入ってから印象派は置き去られたのか。それとも今もなお、形を変えて継承されているのだろうか。独特な印象派企画展の結論は何とも言えないが、同時代の南仏の食文化がしっかり継承された答えは、この皿にきちんとあり、だ。

街で見つけたオモシロごはんbyFB…上大岡 『らあめん花月 嵐』の、嵐げんこつらあめん

2012年02月20日 | ◆町で見つけたオモシロごはん


「笑うせぇるすまん」の喪黒さんが、最近テレビCMでよく現れる。お食事中のタレントに向け、例の名セリフ。最新バージョンは飲んだ締めラーに「ドーン‼」とやってるが、就寝のちょっと前にボリューミーでオイリーでソルティーで炭水化物ュアル。翌朝起き抜けの重い胃袋に、「ひぃ〜」としっぺ返し食らった覚えがある方も多いのでは。
 近頃は年相応に、体が締めラーを求めなくなってきたが、先日久々に最寄駅の「花月」に吸い込まれた。比較的シンプルな嵐げんこつラーメンをオーダー。ライトとんこつのスープがまろやかで、中太麺がお腹にほどよい量。

 そして締めラーの怖いのは、つい濃いめの味を求めてしまうこと。
花月といえば粒ニンニクのクラッシュが有名だが、以前お腹にしばらく激痛が走るひどい目にあったことがある。

 強壮効果があるニンニク主成分のアリシンは、粒の状態でゆっくり加熱すると活性化するが、潰したりおろしたりして発生するアリナーゼは匂いと刺激がきつく、弱った胃腸を痛めることがある。飲み会続きの締めラーにたっぷりニンニクにはご注意を。

 この日は薬味壺の唐辛子和えのニラをつゆにたっぷり加え、締めはとんこつニラスープでいただいた。ニンニクのアリシンが即効性なのに対し、ニラのビタミン系は効能に持続性があり、これから休んでじっくり滋養には向いている。
 おかげで翌朝はさほどもたれず、ニラ効果か体調もまずまず。しかし部屋中のニラ臭いことといったら。牛乳飲みまくりリンゴもかじって対処したがまだ怪しく、電車で周りの客が背を向けているような気も。

 するとどこからか「懲りない人ですねぇ」との高笑いが聞こえたような。「口臭にドーン‼」みたいなのはないですか、喪黒さん?

街で見つけたオモシロごはんbyFB…新横浜 ・日産スタジアムイベントの、鴨まんと亀山みそ焼うどん

2012年02月18日 | ◆町で見つけたオモシロごはん



 先日、B-1グランプリでゴールドグランプリを獲得した甲府鳥モツ煮の話を聞いた。PRを展開する市民団体の、鳥モツ煮の知名度が上がることで来訪者が増え、かつての賑やかな街にしたい思いが受賞につながったのではないか、と話していた。
 一方、この大会で賞をとることの経済効果は数十億単位だそうで、受賞はご当地グルメの枠を超えた全国区となるきっかけでもある。確かに人気ご当地グルメの中には、今や東京周辺の一般の料理屋や居酒屋のメニューになったり、食イベントの常連になったりするものも少なくない。

 新横浜の日産スタジアムで開催のフリマを覗きがてら、露店を取り巻くキッチンカーを冷やかすと、ご当地グルメの目立つことといったら。宮崎の肉巻きおにぎり、八戸のせんべい汁、横須賀カリーパンなど、「B-1グランプリで…」「◯◯イベントで…」と貼り紙が掲げられ、PRに力が入っている。
 それらに混じり「新横浜名物」と名乗るブースもあり、地元愛に敬意を評して寄ってみた。新横浜町内会が考案した中華まん「鴨まん」で、餡には鴨肉を100パーセント使用。オイスターソースで味付けした鴨肉の、澄んだジューシーな肉汁がたまらない。

 ハッピで頑張るお兄さんに聞いたところ、スタジアムのある鶴見川河川敷はかつて鴨の猟場だったことに所以があるそう。売り出してまだ8年ほどだが、新横浜のご当地グルメとして定着すべく頑張っているようだ。
 具はほかにシイタケ、玉ねぎ、そして鴨といえば長ネギ。幟に描かれたゆるキャラも、親子鴨がそれぞれネギをくわえている。

 ついでに、先日の東京ドームのふるさとイベントで食べ損ねた、亀山みそ焼きうどんもいただいた。三重県亀山は物流の拠点だけに、トラッカー向けの食堂で出していた焼肉とうどんの合体料理が起源だそう。名古屋系の甘辛い赤味噌に唐辛子、ニンニクのパンチが効き、これは労働メシ系の御当地グルメだ。
 ガツメシ系の亀山うどんも上々だったが、比べると吹きっさらしで食べる、熱々の鴨まんに軍配が挙がる。加えてスタジアムの向かいは、もと鴨場の鶴見川河川敷。イベント向けの展開も楽しげだけれど、ご当地料理はやはり、その土地の気候風土や佇まいに身を置いて食べてこそうまいのを、再認識した気がする。

街で見つけたオモシロごはんbyFB…四谷 『わかば』の、たい焼き

2012年02月18日 | ◆町で見つけたオモシロごはん

 四ツ谷は名の通り谷間の地形のせいか、道幅の広い新宿通りも日差しの差し込みが今ひとつ弱い。先日積もった雪も未だに、歩道の片隅に凍結して残っており、寒波のピークに加えいっそう底冷えを厳しくしている。
 そんな中、四ツ谷駅に向けて歩いていると、下校途中の小学生が、凍った雪をサッカーの要領でポンポン蹴っては追い抜いていき、路地へと入っていく。自分も差し掛かった途端、奥の方から漂うこんがりクリスピーな香り。発信元はどうやら「たい焼き」の看板らしく、5人ほどの列ができていた。

  熱々のたい焼きは、食べれば中からあったか、持ち歩けばカイロがわり、ということで列につき、ガラス越しに焼いている様子を眺めて待つ。二人の焼き手が焼き上がりを型鉄板からどんどん外し、年配の職人がハサミではみ出した「耳」をきれいに切り取って仕上げていく。
 ものの本によれば、麻布十番の「浪花屋」に人形町の「柳屋」とここ「わかば」が、東京たい焼き御三家なのだとか。店内のテーブルでお茶と一緒にいただくこともでき、焼きたてをバクッといけば薄くカリカリの皮の下は、すぐにたっぷりの餡がパツンパツンに詰まっているのがうれしい。

 たい焼きといえば、甘党を頭の先からつま先まで痺れさす、一撃必殺の激甘が身上だが、ここの粒餡はアズキの豆風味がこってり濃厚で、砂糖甘さがきつくない。いわば「おかわりできる甘さ」で、数尾テイクアウトする若い女性や、皿にふたつみっつ載せている男性ひとり客の姿もうなづける。
 ホクホクと食べ進み、「鯛焼のしっぽには、いつもあんこがありますように」との皿の文字が現れてごちそうさま。熱いお茶で舌を締めたら、おかげですっかり暖をとれた。

 店頭を見ていると、箱でまとめ買いする主婦らしい客がちらほらやってくる。どうやら子どものおやつ用らしく、店頭では蒸れない持ち帰り方の説明がていねいだ。
そういえば子どものころ、冬の寒い日に母親の買ってきた熱々のたい焼きは何よりのおやつだったな、などと思ったら、足は再び行列に。家族の持ち帰り分用に、冷めてもおいしい食べ方も聞いておこうか。


街で見つけたオモシロごはんbyFB…銀座 『天龍』の、餃子ライス

2012年02月17日 | ◆町で見つけたオモシロごはん


 ドラマの合間にたまに流れる、綾瀬はるかの生保のCMが近頃気になる。仕事に一生懸命なのに、うまくいかず失敗してひとり泣き。勤めていれば誰でもあることで、空きの会議室や屋上とかに決まった「泣き場」がある人もいるのでは?

 自分はやなことがあったらヤケ酒ふて寝すりゃ大抵スッキリだが、真っ昼間だとそんな訳にもいかず昼飯ドカ食いでスッキリ、なんてこともたまには。その定番の店とメニューといえば、銀座「天龍」の餃子ライスである。
 
 名前の通り、小鉢のごはんに餃子が8つのった皿のみで、スープとか野菜とか余分なものはまったくつかない、質実剛健な男飯。にしても餃子のでかいことといったら。長さ15センチはあるのに二つ三つとバクバクかぶりつけば、大概のやなことは吹っ飛ぶパワーがもらえる気分になるから不思議なものだ。

 この餃子は店の看板メニューだけに、多い日は一日で600食は出るとか。もちろん誰もが鬱憤晴らしのドカ食い用な訳はなく、その味の良さのおかげだ。昭和24年の開店時、店名ゆかりの力士が店の名物に考案したとの由緒もあり、よく練った粗挽き豚肉からのあふれる肉汁が涙もの。ボリュームありげだがたっぷりの白菜のおかげで、楽々完食できてしまう。

 今日のお昼は単に底抜けの空腹だったために訪れたが、完食まで意外に大苦戦。ヤケ食いの時の勢いってすごいものだな、と改めて思ってしまった。でも綾瀬はるかが涙目で餃子にかぶりつく姿は、イマイチ画にならないか?