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『南十字星に抱かれて』 福冨健一

2006年07月21日 | 歴史
 
 
昭和天皇の、A級戦犯や靖国神社に関するメモが見つかったことが、大きな話題になっています。主要新聞はすべてこのことを社説で取り上げました。それにしても、このタイミングでメモが出てくる事情が知りたいですね。

このブログでは、三土修平氏の『 靖国問題の原点 』 をご紹介しました。非常に緻密に調べて分析をしており、大作と呼べると思います。論点整理もできるのですが、最後、解決策はゆいいつ、首相が参拝をやめるしかない、すべて解決するには、まだ何十年もかかるというもので、“もう少し何かないのかな” と思いました。

本書はまったく逆です。分祀などとんでもないという立場です。こちらも京都大学の中西輝政教授が、「一級の資料的価値のある」 と述べたように、調査はものすごく綿密です。「“凛として死んだBC級戦犯の「遺言」” という副題からもわかるように、B級、C級戦犯とされた人々の記録をもとに、裁判の不当性を訴えたものです。

例えば、ワールドカップで負けると、『A級戦犯は○○だ 』 というような言い方をされるため、誤解している人が多いのですが、A・B・C級というのは罪の重さではなく、種類の違いです。ですから、A級で釈放された人もいれば、B・C級で死刑になった人もいるわけです。(人違いで死刑になってしまった人までいるそうです)

一応、A級が政治指導者、B級が軍部の指導者、C級は犯罪の実行者ということになっていますが、本書によれば、これすらかなり曖昧だということです。日本人を裁いたのは、アメリカ軍、イギリス軍、フランス軍、フィリピン軍、中国(国民政府)軍、オランダ軍、さらに記録が正確ではないのですが、ソ連、中国共産党の対日戦犯裁判もありました。裁判地も数十に及びます。

本書は死刑約千人を含め、裁かれた5千を超える人々の中から、本間雅晴中将と山下奉文中将、後藤大作大尉などを詳しく取り上げます。遺書なども紹介されますが、自らの命を惜しむのではなく、『戦争犯罪人』 の烙印を押されることの無念さがにじみ出ています。残される家族はもちろん、日本の将来を心配しているわけです。

実際に戦犯とされてしまった人々のその後の生活は悲惨だったようです。就職を拒否されたり、婚約解消、村八分などなど…。当時、これらの裁判に批判的な声はアメリカ内部にも相当あったにもかかわらず、それが報道されず、現在まで戦犯として扱われている人々に対する無念さが筆者から感じられます。
         
明らかに不備な裁判で、自分が無実だと主張しながらも、死んでいく姿は、涙を誘います。筆者は、自虐史観を痛烈に批判していますが、では日本国内の戦争責任の所在は?ということになると、触れられていません。そこを書いていただきたかったと思います。


http://tokkun.net/jump.htm


『南十字星に抱かれて』 福冨健一
講談社:270P:1600円



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南十字星に抱かれて―凛として死んだBC級戦犯の「遺言」

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6 コメント

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もうすぐ来るかな? (milesta)
2006-07-21 20:41:42
何とこの本、日本からこちらに向かっているところです。

私は上坂冬子さんの『巣鴨プリズン13号鉄扉』を読んで、不当な裁判で裁かれたB級戦犯のこと、その遺族の方々がどんな思いで戦後を過ごされたかを知りました。そしてせめて本当のことを知り心の中で名誉回復して差し上げなければならないと思い、このご紹介の本の購入も決めました。記事を拝見すると充実した内容のようですので、到着が待ち遠しいです。
おや、また (VIVA)
2006-07-21 21:14:25
またまた、奇遇ですね。すらすら読めますが、記事で最後にあげた点を論じて欲しかったなと思っております。また、感想などお聞かせください。
ちょっと主題から外れたTBをいたしました (すかいらいたあ)
2006-07-22 00:12:10
この本とは主題がずれますが、『容赦なき戦争』についての記事をUPしました。



戦犯裁判の背景に、プロパガンダや誤ったイメージがあったように思います。日米の多くの資料を駆使してどんなイメージを互いが抱いていたかを教えてくれています。



分祀問題は、戦犯とされて亡くなった人々の中には無謀な戦争に駆り立て、海外で多くの邦人・外国人を死に至らしめた人々もいれば、他国の一方的な断罪で処刑されたBC級戦犯もいるわけで、その両者がともに靖国に祀られているのは問題でしょうね。



また、就遊館は神社というにはあまりに政治色を帯びすぎており、一宗教法人でありながら過度に政治に踏み込んでいると思ってしまいます。



これらが問題を複雑にしているのでしょうね。
すかいらいたあさん (VIVA)
2006-07-22 19:02:33
まったくおっしゃるとおりで、ジョンダワーはもちろん、種々の本を読みますと、何となく戦争にいたる経緯や、各々の国の実情が判るような気がします。



むつかしいのは、ではどうするか、一部の人だけに責任が押し付けられているとは感じます。子どもたちにどう説明するのか。生き証人がどんどん少なくなりますからね。
読みました。 (milesta)
2006-07-28 00:52:54
記事を書き、VIVAさんのこの記事↑も紹介させていただきました。



全体の感想はそちらに譲るとして、ここでは

「日本国内の戦争責任の所在」についてコメントします。不勉強なので的を射ているかどうかわかりませんが、あの本を読んだ印象としては、あれ以上語るのはちょっと無理がある気がしました。

まず、サブテーマとしては事が大きすぎるかなぁと。あの中にもあるように、一番元を探れば日露戦争でルーズベルトが日本を脅威に感じたということまで遡らなければならず(『ポーツマスの旗』を読んだときにもそう感じました。)、また戦時中のことに絞るとするとA級戦犯についての記述が少なすぎるのではないかと思います。

もう一つは、「戦犯」と呼んでいるけれど実は正しい裁判に基づいていなかったということを検証している本なので、そこで別の犯人捜しをやることが混乱を招くかも知れないということです。一度、日本人の頭の中を白紙にしてから考え直す方が良いのではないかと思いました。



記事にも書きましたが、VIVAさんのように冷静に読めていないので、主観的な意見ですが、ご参考になれば幸いです。
milestaさん (VIVA)
2006-07-28 12:30:57
いや、長くなりそうなので(笑)、簡単に申し上げれば…、筆者が“誰にも責任がない”と書いていただいても、まったく良いのです。それぞれ、どういう考え方を持つのも自由ですから。それを知りたかったということでした。

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