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『それでも私は腐敗と闘う』 イングリッド・ベタンクール 永田千奈・訳

2007年04月19日 | ノンフィクション


イングリッド.jpg

 

アメリカのバージニア工科大で起こった韓国人留学生による銃乱射事件、32人もの人が亡くなったそうですね。前途有望な若者たちが、実に理不尽なことに戦場ではなく、学校で命を絶たれたこと、そしてその遺族の方々の心情、友人を奪われてしまった人々の無念を思うと、言葉を失います。


ただでさえ韓国・アメリカの関係が微妙な時の事件だけに、両国の一般国民が受けた衝撃は想像に余りあります。銃を持つのは自衛のための権利、というアメリカ社会の伝統、やはりこれすら受け入れるのでしょうか。


これだけでも銃社会の非情な現実を思い知らされるのに充分ですが、対岸の火事ではありませんでした。

単なる偶然ですが、逆にいえば現代の象徴的な事件なのか、この日本でも、長崎市の伊藤一長市長が銃撃されて亡くなられました。表現のしようのないほどの怒りがこみ上げます。ご冥福をお祈りする、それしかありません。


無論、殺人犯が捕まらない事件は不気味で恐ろしくなるのですが、あっさり暴力団の仕業だ、異常な連中が起こしたものだと片付けるのも納得しかねるところがあります。特に政治がらみの事件は、底知れぬ違和感が残ります。
 

つまり、知性の無力さを、ペンや正義の弱さを思い知らせてやるという暴虐性は絶対に許してはいけないと思うのです。


そして、ペンも正義も弱いということを知らない青二才とからかわれながら、それでも、きっと勝てると信じて、目に見えない巨悪と闘っている人の姿が思い浮かべられれば、みんな勇気が出てくるのではないでしょうか。


本書の著者、コロンビア人のイングリッド・ベタンクールがまさにそういう人で、今もまだ生きていることを信じて紹介します。


以前取り上げた、『エメラルドカウボーイ』 を読めば、外国人から見たコロンビアがどれほど危険なのか、よくわかります。同じ悲惨な国情であっても、北朝鮮の独裁政権の方が、ずっとわかりやすい構造です。

また、そのコロンビアの政界や軍やマスコミまでも牛耳ってしまうマフィアのボスを扱った『パブロを殺せ』 を読めば、まともな人間なら、本当に絶望の国としか表現しようの無い実体がわかります。

北朝鮮なら、独裁者さえいなくなれば、少なくとも政治はかなり変わると期待できると思いますが、コロンビアは違いますね。実際、確かに極悪非道のパブロ本人は殺されましたが、第2、第3のパブロができてしまう。そうでなかったはずの人がパブロにばけてしまいます。


私が『パブロを殺せ』を読んだ後です。調べてみますと、実はコロンビア政府がパブロを追っているころ、コロンビアの政治家で唯一命がけで政治改革に取り組んでいる女性がいることを知りました。

それが本書の著者イングリッド・ベタンクール。


名家の一令嬢であった彼女が、ノブレスオブレッジに目覚める姿は信じられないほど勇敢です。別の言葉なら無謀です。アッパークラスであったがゆえに知ってしまった祖国の裏。その現状に心動かされ、資金も知名度も無いまま愛国心をたぎらせ、政治腐敗の一掃だけを掲げてフランスから帰国、コロンビアの国会議員に立候補、なんと当選してしまいます。

選挙運動の間も、当選した後も、とにかく政界実力者やら、裏組織からさまざまな妨害、裏切りを繰り返し受け、その詳細が現役政治家の実名ではっきりと明かされています。

自分が動けば動くほど、結局自分の周囲に迷惑がかかる、迷惑どころか危険が及ぶため、まず彼女の下した決断はなんと夫と離婚。子どもも海外へのがしてまでやり遂げようとする改革に対する使命感。ものすごいです。


そこまでやれば、もちろん成果はあります。たびたび訪れる危機を戦士の覚悟と、抜群の知性を発揮して切り抜けます。しかしどうしても一枚だけ破れない壁は国家権力そのもの。物言わせぬ圧力です。

ここで、結局ついには自分が大統領になるしかない、本丸を直接自分がのっとり、権力を手に入れる以外に方法が無いわけです。そう新たな決意を固め、本書をしたため、同じ年の大統領選に立候補するのです。


ところが本書を上梓したあと、行方不明、誘拐されてしまいます。選挙期間中に注目の大統領候補が誘拐される国があるのか。当然、彼女の勢いを恐れた候補やその陣営が怪しいに決まっています。みんなそれを知っているか、感づいているにもかかわらず、やはりその候補が大統領になってしまう現実。

すでに6年経った現在もそのまま安否は分かっていないのです。本書ももちろんコロンビアでは出版できなかったのですが、ベタンクール家とつながりのあるフランスでやっと出版にこぎつけ、その後日本語に翻訳されました。


高校生で充分読める内容ですが、その前に日本のすべての政治家に読んで欲しいと感ぜざるをえません。間違いなく衝撃と感動の一冊です。




『それでも私は腐敗と闘う』イングリッド・ベタンクール
草思社:277P:1890円



P.S.他のブログなどで、本書のレビューを探したのですが、残念ながらほとんどありません。何でも載っているはずのWikiにもありません。おかしいと思いませんか。

フランスのドビルパン首相がフランス軍をもって救出作戦までしたそうですが、日本ではまったく報道されません。

私の拙いレビューよりも、アマゾンのカスタマーレビューや本書の説明を実際に読んでいただきたいと思ったので、アマゾンのIDを取得し、アフィリエイトリンクを貼らせてもらいました。ぜひ関心を向けていただけますよう。

それでも私は腐敗と闘う

草思社

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14 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
すごい! (ysbee)
2007-04-19 12:36:51
世界にはすごい女性が存在するんですね。
本当に政治家全員に読んでほしいものです。

ここ数日ヴァージニア工科大の事件をせっせと紹介していたので
コメントが残せませんでしたが、ポチポチは忘れずに押してましたよ。
JRANKももう少しでトップに行きそうですね。
ワンモアプッシュ!
今、アマゾンから (bucky)
2007-04-19 13:59:02
注文しました。私も読んでみることにします。

今朝の新聞のイラクの惨状も相変わらずです。

いったい世界はどうなってしまうのでしょう・・・
ysbeeさん (VIVA)
2007-04-19 16:03:15
お忙しいところ、わざわざ恐縮です。

本当にこの女性はすごいです。豊かで平和な自分の暮らしや家族まで捨てて、母国を救おうというのですから。並大抵の人物ではありません。

すべては麻薬がもたらす富の争いなんです。アメリカの特殊部隊まで投入して、パブロを殺さざるを得なかったのですが。全部、買収されてしまっている印象です。

サッカーでコロンビアが出てくるといつも複雑な思いがいたします。
buckyさん (VIVA)
2007-04-19 16:06:20
ありがとうございます。ぜひ読んでみてください。文章がうまいとか、何とかいう次元を超えて、書かれている内容が信じられないほどです。

そうですね、イラクも詳しいことはわかりませんが、ニュースを聞いているだけだと、どうやら治安は悪化する一方のようですね。
読みます (Dan)
2007-04-19 20:40:30
買います。読みます。
VIVAさんのご紹介って、とてもわかりやすくて、
その本の本質を伝えてくださいますよね。
も~、猛烈に読みたくなりました。
私は、いつも自分だったら、と思いながら読むのですが、とてもとても、彼女のように強く生きてはいけません。
自分のことも大事ですけど、なんと言っても子どもに被害を与えためないために、危険な橋は渡ることはできません。
彼女の祖国への愛が、行動を起こさせるのでしょうね。
彼女が、どこかで生きていてくれることを祈っています。
Unknown (milesta)
2007-04-19 21:00:22
VIVAさんの記事を読んだだけで、この女性がどんなに強い純粋な人かがわかりました。本を読んだらもっとすごいのでしょう。とっても読みたい。だけど今は読む時間がない。あ~悔しいです。
Danさん (VIVA)
2007-04-19 21:19:24

そうなんですよ。もちろん個人的にまったく関係のない国のことですが、あまりにもひどいですよね。それに関係がないとは言っても外交関係がありますから、我々日本人の税金も援助に使われているわけです。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/honsho/fuku/kaneda/clb_mrc_06/gaiyo.html

フランスのようにはできないにしても、何とか力になれないものでしょうか。
milestaさん (VIVA)
2007-04-19 21:21:44
そうですか、残念。本当かどうか知りませんが、今の大統領になって、徐々に治安は安定しているそうです。

それでも筆者は帰ってきませんからね。子どもさんたちや家族の心配はいかばかりでしょう。
政・官・財・ヤクザ (山ちゃん)
2007-04-20 14:40:01
ベンジャミン・フルフォード氏によると、日本も政・官・財・ヤクザの癒着が激しいと書いていますので、あまり他の国のことは言えないのかもしれません。



コロンビアに友人がいたので、ボゴタと数都市まわったことがありますが、外出時の友人の警戒は尋常ではありませんでした。



タクシーを使って彼の自宅に帰った時、夜なのにタクシーを自宅の前に横づけさせず、自宅の近くで降り、暗い夜道を200メートルほど歩きました。タクシーの運転手が泥棒に早変わりする可能性のほうが夜道で襲われるより怖いとのことです。
山ちゃんさん (VIVA)
2007-04-20 18:01:25
いつも貴重なコメントありがとうございます。

ただ、日本とコロンビアの政治状況を比べる気はありません。

私は生徒たちに日本を好きになってもらいたいと思っておりますので、できれば批判は別のところでお願いします。
日本が好き (山ちゃん)
2007-04-21 05:52:27
VIVAさん



そういった嫌な部分も含めて、私は日本が好きです。



さて、彼女こそ、愛国者と言えるでしょう。
山ちゃんさん (VIVA)
2007-04-21 11:53:58
自分の国を好きでないという生徒が増えているようですから、少し心配です。どの国にも、人間と一緒で、はたから見れば、良い面も悪い面もあるでしょうが、それをわきまえながらも、自国に誇り持つ。そうでないと子どもが不幸になるような気がします。
救出されましたね (アロンソ)
2008-07-05 23:23:49
7/2に救出されました

http://www.youtube.com/watch?v=b094PuQmhmY&feature=related
アロンソさん (VIVA)
2008-07-07 01:41:12
今、確認しました。まったくこのニュースに気付きませんでした。情報、本当にありがとうございます。正直、もうとっくに亡くなっているのではないかと思っておりましたので、心底、驚きました。

救出された経緯はともかく、数年ぶりに自由の身になるとは、どういう気持ちでしょうね。この経緯がまた何らかの本になると良いのですが…。

日本では到底考えられない展開ですね。

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