本を読もう!!VIVA読書!

【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

『物語の役割』 小川洋子

2007年04月09日 | 新書教養
 

物語の役割.jpg


“人間は、なぜ物語を必要とするのか?”  と帯に書かれています。私は今でも小説を読む割合は10冊に1冊くらいでしょうか。つまり、好きではあっても、あまり読む方ではないのです。


自分にとっての良書というものは、きっといつ読んでも価値が失われることはないのでしょうが、“小説” は特に、“いつでも読める” という気になってしまうので、ついつい後回しにしている気がします。高校生くらいまでは、なぜみんな小説に夢中になれるのか本当に不思議でした。


みなさんはどう思われます。 いったい人はどうして物語を必要とするのでしょうか。


以前、ある英文(英字新聞か入試問題)にそのことについて書かれていたのを読みました。以下のような内容でした。



およそ人の集まりであれば、物語を作らない社会はない。

小さな部族であれ、近代社会であれ、すべて物語を作っている。

人に何かを伝えたい時に、物語にせずに伝えたとしても、それは水蒸気のように蒸発してしまう曖昧なもので、相手の心に残らない。

ストーリーにすれば、人に訴えかける力がある。

昔から、偉大なリーダーたちはストーリーの力をよく知っていて、みなそれを利用している。



なるほど、そう言えば、聖書だって物語かもしれないですね。また、“愛がすべてだよ” と直接言うより、スリリングで感動的な愛情物語の方が心に残るに決まっています。その時はなるほどと思ったのですが、本書ではもっと根源的なことに言及しています。


どんな人でも、物語を心の中で作っていて、それがあるからこそ生きていけるのだというのです。特に受け入れ困難なことに接した時、その現実を誰でも自分の心に合うように転換しながら生きているのだと。

例えば、最愛の子が交通事故で死んでしまった人がいる、実際には飲酒運転をしたドライバーに100%責任があっても、親はおつかいに出した “私のせいで死んだのだ” とか “今は星になって見守ってくれている” そして “残された私の使命は○○をすることだ” というような考えはすべてストーリーを作っているというわけです。


誰でも物語を持っているので、普通の人と小説家の違いは、それを文字に残して表現しているかどうかに過ぎないということになります。「みんな知っていることだけど、言えないことを発見している」 だけだと。そして、ホロコースト文学や日航機の墜落事故のときの遺族のエピソードなどから、人々が作り出している物語を紹介します。


ポールオースターの ナショナルストーリープロジェクト は、拙ブログでも紹介しましたが、本書でもそれを題材にそのあたりのことを説明してくれます。ありとあらゆる困難や逆に楽しいできごとを、みな心で、ある形にして残している。

つまり、小説のストーリーはすでに人の心にあって、それを逃さないようにキャッチするのが小説家だというのです。


そういう意味では、小説家はみんなの後を追いかける役割であって、自分がぐいぐい引っ張る小説などおもしろくないと言い切ります。想像力や空想力もある程度必要だが、むしろ現実に対する観察力や注意力が決定的に重要になってきます。


小川氏の博士の愛した数式 は心に残る名作でしたが、それを例にキャラクターである博士や家政婦さんやルート君が、作者の小川氏より先を行っていて、物語を作っていく様子が感じられると思います。小説の作り方を非常に興味深いたとえで示してくれます。

目次は


第1部 物語の役割(藤原正彦先生との出会い;『博士の愛した数式』が生まれるまで;誰もが物語を作り出している ほか)

第2部 物語が生まれる現場(私が学生だったころ;言葉は常に遅れてやってくる;テーマは最初から存在していない ほか)

第3部 物語と私(最初の読書の感触;物語が自分を救ってくれた;『ファーブル昆虫記』―世界を形作る大きな流れを知る ほか)



もちろん小説家によって考え方も、作り方も違うでしょうが、本書は実におもしろかったです。小説家の心が手に取るように分かりますし、人に対して、人生に対してどこまでも謙虚な姿勢が印象的です。

もっと小説を読もう、という気にさせてくれました。講演の内容をもとに書かれている本ですから、一般の人がその場で聞いて理解できるような分かりやすい言葉遣いです。


多くの人が読んで欲しい一冊です。

物語の役割

筑摩書房

詳 細


P.S. 本書は、大変な読書家で、受験生の母でもある相互リンクの bucky さんに教えてもらいました。ありがとうございました。

buckyさん、絶対一緒に 【中学入試サクセスストーリー】 作りましょうね!



 ブログランキングです 

絶対、あきらめないというストーリーです!
記事が参考になりましたら、クリックをしていただけるとありがたいです。
 

(2位)

にほんブログ村 本ブログへ (1位) 

ブログランキング (2位)

  (7位)


  (お試し)
  

  
http://tokkun.net/jump.htm 【当教室HPへ】



 

『本』 ジャンルのランキング
コメント (10)   トラックバック (1)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 『キクジュク―聞いて覚えるコ... | トップ | 『英文法ファイナル問題集-... »
最近の画像もっと見る

10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
これは是非読んでみたいです (すず)
2007-04-09 09:02:43
 「何故人には物語が必要なんだ」とは、考えた事がなかったです。退屈を紛らわす為、孤独を癒す為、現実から逃れる為・・・子どもの頃は、そんな気持ちで物語を読んでいたように思います。今は、物語の与えてくれる一瞬の非現実感や感動や哀しみや喜びが、現実に向かうエネルギーになっていると強く感じます。
すずさん (VIVA)
2007-04-09 10:56:21
おはようございます。これは薄い本ですぐに読めますが、内容は記事にした通りで、なかなか深いと思います。

すずさんのように、なぜ小説を読むかということを考えなくても読む習慣のある人はすばらしいのですよ、きっと。私などは子供の頃から、人から読めと言われれば言われるほど“どうして”っという気になってしまいました。

おっしゃるようにエネルギーになれれば最高の時間を過ごしたことになるんでしょうね。でも受け取り方は千差万別なので、小説を人に薦めるのはいまだに苦手です。はい。
毎度ご紹介いただいて (bucky)
2007-04-09 12:10:20
ありがとうございます。本日は知事選の結果を知り?朝、ウォーミングアップする間もなく忙しく、息子の今朝の態度に怒り、気持ちはちぢに乱れてオリマシテ・・・

サクセスストーリー作りたいです、ホント。help me!

しかし、この本本当に良かったですよね。その後、小説を多く読んでいるか否かは別としてですが。
博士の愛した数式 (伊藤)
2007-04-09 13:40:13
確かに名作と呼ばれる一冊ですね。
ストーリーが面白いのはもちろんとして、数学のまつわる美しさや不思議さにも私は惹かれました。算数と数学を教える立場の者として、『博士の~』を生徒にも随分と読むことを薦めました。
小川洋子氏と藤原正彦氏の『世にも美しい数学入門』も読みましたが、こちらもとても興味深く、面白かったです。
小川氏の他の小説は・・・『薬指の標本』は読みました。不思議な、ちょっと怖いような内容だったように記憶しています。

うーむ (ふる)
2007-04-09 17:46:06
>ストーリーにすれば、人に訴えかける力がある。

ふむふむ。

>どんな人でも、物語を心の中で作っていて、それがあるからこそ生きていけるのだというのです。

それは確かにあるでしょうね。
感情移入による、追体験が大きいかと思ってましたが、記事読んでみてなるほど。

私の心の中にある物語り・・・
モノが足り・・・ません
buckyさん (VIVA)
2007-04-09 17:55:42
知事選、石原慎太郎強かったですね。というより民主党がだらしないと思いません。もう少し白熱してくれた方が、生徒たちも関心を払ってくれるんですけど…。

それはともかく、まぁまぁ落ち着いて(笑)。

良い本を教えて下さってありがとうございました。前向きに行きますよ、中学受験!
伊藤先生 (VIVA)
2007-04-09 17:59:28
こんにちは、何か固いこと書いてますねぇ~(笑)。

みなさん!伊藤先生はボクと20年以上一緒に仕事してるんですよ(マジ)。

↓のふるさんのなれなれしさ、見習ったら?会ったことすらないのに(爆)。うそうそうっそ~。
ふるさん (VIVA)
2007-04-09 18:06:29
ふる殿。ランキング押してくれましたか!早くアベック制覇しましょうよ。

ところで『博士の愛した数式』読みました?ふる殿の人並みはずれた、常人には理解不能な、とんでもない感性に合うかどうかわかりませんが、わたしにはお気に入りの一冊です。

わたしの場合、ものは足りております。不足しているのは…、時間、お金、数学講師…なんてね。
Unknown (milesta)
2007-04-10 01:09:46
私は子供の頃は小説ばかりでしたが、だんだん読まなくなっていました。最近流行の小説を読んでもあまりピンと来るものがなくて、そんな時に出会った『博士の・・・』は感動しました。これぞ小説!という感じでした。

>想像力や空想力もある程度必要だが、むしろ現実に対する観察力や注意力が決定的に重要になってきます。

という力が小川さんにはあるのでしょうね。だから荒唐無稽な設定のようですごくリアリティがありましたね。そういえば、私がピンと来なかった小説は皆、身近なことを書いているようでいてリアリティのないものでした。
milestaさん (VIVA)
2007-04-10 09:56:12
なるほど、なるほど。そういう言い方が的を射ているのでしょう。本書を読んで、小説というものが少しわかった気がしました。少しですけどね。コメントありがとうございます。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。
小川洋子『物語の役割』 (itchy1976の日記)
物語の役割 (ちくまプリマー新書 53)小川 洋子筑摩書房このアイテムの詳細を見る 今回は、小川洋子『物語の役割』を紹介します。本書は3つの公演で物語について語ったことを書籍にまとめたものである。本書は125ページほどですが、自分の物語の役割について考えさせられ...