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『声の残り 私の文壇交遊録』ドナルド・キーン 金関寿夫:訳

2007年01月12日 | 教養

 

声の残り ドナルキーン.JPG



 “職業:作家” というと、どんな人をイメージするでしょうか。むろん作家といってもいろいろですが、少なくともどんな作家にも人並外れた感受性と表現力は最低条件でしょうし、まぁごく控えめに平たく言っても、普通ではない人々ですよね。

それを “視点が常人と異なり、つきあっていておもしろい” と前向きに感じるか、“変人で付き合いにくい” と敬遠するか、付き合う距離によって意見が分かれそうです。少なくとも家族にいたら大変だろうなという気は正直します(笑)。


さらに、私の場合、作家と聞いて特徴的だと思うのは、自殺者が多いということです。本当に多いかどうか、割合を計算したことはありませんが、自殺した有名作家だけあげても、江藤淳川端康成三島由紀夫火野葦平太宰治金子みすゞ芥川龍之介有島武郎 …でしょうか。多そうだと思いませんか。


本書はドナルド・キーン氏が若かりし頃、交流を深めた作家たちの素顔を描いたものです。どうもキーンさんは日本の作家を “つきあいにくい人” ではなく、“好奇心をくすぐる人” と感ずるようです。

登場する作家は上で挙げた火野葦平、川端康成、三島由紀夫の三氏の他、谷崎潤一郎永井荷風有吉佐和子大岡昇平開高健司馬遼太郎大江健三郎安部公房 などなどです。


キーンさんは以前取り上げた、『仕事の流儀(高任和夫)』にも紹介されていますが、1922年生まれ。18歳のときに偶然読んだ、“源氏物語” に感動して以来、日本文学研究の道に入り、以降は日米両国で翻訳家として、また評論家としてここには書ききれないほどの活躍をしました。

2002年には文化功労者他、数多くの賞を受賞してもいます。川端康成の『雪国』の記事で取り上げました、エドワード・サイデンステッカーと並び、日本文学を海外へ紹介した日本文学の恩人とも呼べる人物です。

コロンビア大学にはドナルド・キーン日本文化センターがありますし、ニューヨークにはドナルド・キーン日本文化財団まで設立しています。


大変楽しく読める一冊で、上で述べたようなセンシティブな作家たちとのフランクな付き合いは、精神的にも肉体的にも大変だと思うのですが、日本文学好きのキーンさんには苦にならないどころか、大きな喜びとしているのでしょう。

むしろ外国人だということが、作家たちの内輪向けの余計な見栄を捨てさせ、緊張を和らげているのでしょうし、その交流振りから、作家たちに、この知性と教養の豊かな外国人に認められれば自分も本物だという意識もあったのではないかという印象まで持ちました。

まぁ、どの作家先生も個性豊かで、思考や行動は実に大胆でエピソードには事欠きません。実によく酒を飲み、大騒ぎしたりふざけたりもする。豪放磊落かと思えば、自著の評判や感想には異常に過敏になったり、賞の選考結果に対して執念を燃やしたりします。

それに付き合うキーンさんの行動や、本書で明かされる感想はともかく非常におもしろいものです。時になだめすかし、衝突し、賞に推薦したり、作家たちの間を取り持ったりと八面六臂の活躍ぶりです。


どの話も非常に人間くさいものです。本書では特に三島由紀夫にページを割いていますが、大岡昇平の言葉として、川端康成ではなく、三島由紀夫がノーベル賞をとっていたら、二人とも自殺せずに済んだという意味の発言をしたことを知り、またまた作家の底知れぬ感性を垣間見た思いがしました。




P.S.
 本書は、相互リンクの tani 大先輩 が紹介してくださったものです。かつては物書きを志したお方ですから、とってもつきあいに…、あっ、いえ、いえ、その~、私が大尊敬する、楽しい大先輩でございます! お~こわ。


 tani先輩の名文 『心に残る思い出や本について』 もぜひぜひご覧下さい。

(三島由紀夫の『若きサムライのために』の記事でも紹介させていただきました)



http://tokkun.net/jump.htm 【当教室HPへ】




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『声の残り 私の文壇交遊録』ドナルド・キーン 金関寿夫:訳
朝日新聞社:202P:1250円

 

 

声の残り―私の文壇交遊録

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6 コメント

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「声」に反応してしまい・・・ (bucky)
2007-01-12 13:54:35
そのままtani大先輩の文章に引き込まれていってしまいました。(ごめん、VIVAさんのも素晴らしいのですが)
それにしても、キーン氏の日本人をはるかにこえた交遊歴、すごいですね。
buckyさん (VIVA)
2007-01-12 17:29:44
buckyさんこんにちは。私の文は、大先輩に比べられるもんじゃあございません。神様のような方でございますから。

本当にキーンさん、この本を読むとものすごい活躍ぶりなんですが、どうしてそこまでできるのかはまだ勉強不足でわかりません。また、いろいろ読んで勉強します。
Unknown (milesta)
2007-01-12 20:08:33
>むしろ外国人だということが、作家たちの内輪向けの余計な見栄を捨てさせ、緊張を和らげているのでしょうし

なるほど。面白そうですね。作家の素顔というと遠藤周作さんや北杜夫さんの交友録が思い浮かびます。爆笑ものだけど、ご紹介の本はもう少し知的な感じですね。

自殺した作家といえば、数年前に亡くなられた鷺沢萠さん。十代の時書かれた作品が芥川賞を取っていたら(候補にはなっていた)、違った人生になっていたかもしれないと思ったりします。若い人にも門戸が開かれた感のある今なら簡単に取れたかもしれないのに・・・。
milestaさん (VIVA)
2007-01-12 21:53:20
そうですね。爆笑という書き方ではないんですが実にさまざまなエピソードがあって楽しめますよ。自殺率どこかに出てないですかね。
「ダイセンパイ」から (tani)
2007-01-12 22:37:32
「ダイセンパイ居士」からの遺言をTBしました。
今夜は、少々般若湯頂きすぎましたので、明日推敲いたします。そんでわ。
tani先輩 (VIVA)
2007-01-13 01:41:26
勝手に記事にしました。すみません。

“ほめ殺し”で勝負みたいですね(笑)…

でも、いや、遺言だけは勘弁してください。これから勉強するんですから。

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