1942年に刊行された、いわずと知れた世界的名著です。私が高校生くらいの時に読んだはずなのですが、あまり印象に残っていませんでした。しかし、最近読んだ別の本の中で数多く、「異邦人」 から引用されている部分が気になって、もう一度手にとってみました。
40歳を超えて再読してみますと…、
『 きょうママン(母)が死んだ。もしかすると、昨日かも知れないが、私にはわからない。』
この一文から始まる話しの中に、生と死、神、人間の情や非合理性などがぎっしり詰まっていたことに、やっと気付きました。
母の死の翌日に女と遊び、コメディー映画を見に行き、「太陽のせい」 で仲間のために殺人を犯してしまい、神による救いを拒絶し、大勢の前で処刑されることを望む主人公、ムルソー。
平和で高度成長のさなか、希望ばかりがあふれていた時代に育ち、とりあえずは勉強さえすればよかった高校生、世の中の表だけを見ていた当時の私にとっては、こういう精神世界は理解不能だったのでしょう。今の高校生ならわかるのでしょうか。
“30歳で死んでも、70歳で死んでも大して変わりはない”、 という命題、一つの考え方ではあっても、共感を持つことはできません。まして他人に主張などしませんが、実際にそう考える人の生き方もあるし、それを魅力的に主張する人や集団もきっといるでしょう。外から見ていて、行き過ぎだとされると、“カルト” と呼ばれたりします。
今、自殺に意味を見出そうとする生徒や校長先生もいるし、それが連鎖を呼ぶという現象が起こっています。もちろん当人たちはいたってまじめですね。
“いじめ” 、“自殺” はいけない、母親の葬式には悲しむもの、当たり前じゃないかと言いたいのですが、そうでない人間がいる。人間の本性は、きれいごとばかりではありませんし、それを明確に認識してしまった人々は、美しいスローガンには嫌悪感を示します。自分をだまそうとしていると感じるのではないでしょうか。
みんなで仲良くしましょう、で事が済むのなら教育は易しい。自分の “本心を知ってしまった” 人間には、学校教育は無力だと、最近特に感じます。
ムルソーは、自分の本能に忠実に生きる、自分の心に、ある意味では“正直”に生きています。
しかし、読者は逆に、そういう生き方に意味があるのかと考えざるをえないでしょう。“建前なしで生きる” ことは、本当に立派なことなのか、あるいは美しい生きざまなのかと。
中学で習う、“万人の万人に対する闘争” のホッブズ、ロック、ルソーなどの思想、社会契約論 を考えても、近代の教育というのは、人間の本能を抑えさせるためのもの、建前を教えるもの、とも定義できそうです。
日本でも動機不明と思われるような事件はいくらでもあります。頭がおかしい、というのは簡単ですが、人の思考というものは、自分が冷静に正しく考えているつもりでも、客観的に見れば、教育や時代や文化によって、すでにかなり制限されていますよね。
まったく別世界の人から見れば、誰でもみな多少“異常”な部分を自分に持っているのだと思います。教育をする側は、その相手の思考や感情を察するだけの思いやりや洞察力が必要だなぁと、私は感じながら読んだのですが…、
サルトル はじめ、世界中の専門家による“異邦人”の名書評があるそうですから、これ以上偉そうなことを言うのは控えます(笑)。
異邦人 新潮社 詳 細 |
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(2位です。初の1位の半分へ) (現在1位です。ありがとうございます)
『異邦人』カミュ 窪田啓作
新潮社:146P:420円
カフカ 『変身』、も生徒に読んでは欲しいので、取り上げましたが、本当に紹介が難しいし恥ずかしい。できれば検索でもして、たくさんの書評を参考にして下さいね。はい、弱気です(笑)。
ムルソーにとって母の価値観?真理?はムルソー自身を支配していたなかなと。
【これはまたママンの考え方で、ママンガよく口にしていたものだが、人間はどんなことにも慣れてしまうものなのだ。】
【私は驚かされることがきらいだった。何かが起こるときは身構えていたい。】
【人間は全く不幸になることはない、とママンはよくいっていた。】
第二部からはなるほどと・・と、最後の司祭とムルソーのやりとり、司祭の滑稽さに(不適切な言葉だったらごめんなさい)笑えました。
もしかしたら・・私はこの本の読み方がチョット違うのかもしれませんね↓の文章を見つけてホッとしてしまいました。
<これはまたママンの考えで方で、ママンはよく口にしていたものだが、人間はどんな事にも慣れてしまうものなのだ。>
<私は驚かされることが嫌いだった。何かが起こるときには、身構えていたい。>
<人間は全く不幸になることはない、とママンはよくいっていた。>
★★★ WELCOME! ★★★
でもリンク貼ってないし…(笑)。
どうぞくつろいで、お茶でも。( ^^) _旦~~
本書は、不条理の文学だそうですから、おもしろくてどんどんページを繰るということにはなかなかなりませんよね。最後までなんなんだろうと思って読み終えて、これが名作?って感じがあって、でも心に残ってします。忘れられない、そんな本って時々ありますね。するといつか読み返したくなったりします。
コメント本当にありがとうございました。遠慮なく、リンク貼って下さいね。
昨日、早速「異邦人」買いました。そして、読みました。・・・5ページ。早くも挫折しそうです 笑
私も
>希望ばかりがあふれていた時代に育ち
>世の中の表だけを見ていた
・・でした。でも、
VIVAさんの書評を読んで、今なら、ムルソーの精神世界に共感や本当の意味での理解は出来ないと思いますが、なんとなくわからないでもない・・と、少しは思えるかもしれません。
きちんと最後まで読みますから~。
コメントありがとうございました。
ぜひ早く読んで、この記事があるうちにコメント下さい。
せかすようで、申し訳ないのですが、新しい方とつながりができるのは大変うれしいことでして…。
コメントありがとうございました。
(ちゃんと聞こえましたよ。「ブッシュ陣営負けろー!」って)
こちらでは、政治ブログはオピニオンブログと呼ばれて、昨今のブログ文化の土壌を築いた名門(?)ブログが多いです。そのトップ2がNew-New Left の牙城「Move On」と私の所属する「Daily Kos」です。特にDaily Kos はフツーの口語体というか、俗語の羅列が多く、悪名高い『米語』をお勉強するには最適の場所=sphereでもあります。
2004年から参加している私は、ここ2年間で5000人から60万人にふくれあがったメンバーの中では古参になってしまいました。あと、アメリカの学生にヒーロー的人気のキース・オルバーマンというニュースキャスターの親衛隊としても、一部で有名です。(いい年こいて、なのですが、先陣を切ったのでやめられまへ~ん)
アメリカでは、ブッシュ以降の政治は一種のエンタメと化しているので、学生がサークルでワイワイ盛り上がるように、ブログ界も発展してきたのでしょう。ブッシュがいなくなると「こきおろし」の対象がなくなるので、少し寂しくなるかも?
今日のURLは、そのへんのいきさつを書いたページです。(アホさ加減がばれる)((^o^))Y
中学?高校?時代、この本を読んで『不条理もまた真なり』か・・なんて想ったものです(笑
【まったく別世界の人から見れば、誰でもみな多少“異常”な部分を自分に持っているのだと思います。教育をする側は、その相手の思考や感情を察するだけの思いやりや洞察力が必要だなぁと、私は感じながら読んだのですが…、】
↑同じような事ですが豊かな想像力が必要かなぁ‥な~んて^^
今日また、あったかい お言葉感謝感謝です。これからもガンガンやりますよ。ありがとうございました。
ysbeeさんところも、ハッカーに狙われるということは、一流の証明みたいなもんでしょう。許せないでしょうが、有名税ですね。
へこたれるようなysbeeさんじゃないでしょうし、きっとセキュリティーもレベルアップされるんでしょうから、どんどん活躍してくださいね!
VIVAさんに、清き1票を。
実は選挙運動妨害のハッカーにやられて、わが愛機Macのネット関係のソフトがすべてダウン!インターネットとメールが使えないと、現代人は死人も同然。必死で原因解明を試みましたが、おとといあきらめてオール・インストールし直しました。
まあ、民主党の圧勝に終わったので、元気だけは良いんですが。
6年ぶりの心の青空。晴ればれーっ! ?((^o^))/
ご無沙汰中の記事もこれから下降して読むところ。
今日のカミュは、高校時代にカフカやビュトールと一緒に夢中になって読んだ、思い出多き本です。ちょうどフランス映画のヌーベルバーグが全開だった時代で、ジャン・リュック・ゴダールなどの映画は、多分このカミュやサルトルからの影響も大だったはずです。カミュの著作はけっこう映画化されてますよね。映画から本へ戻って読む方法も、理解しやすいかも知れない。
こういう「20世紀の古典」を、これからもどんどん紹介していってください、先生!(いきなり……選挙ボケです ##((@o@))%%)