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『グレート・ギャツビー』 スコット・フィッツジェラルド著 村上春樹 訳

2007年04月16日 | 小説


グレート・ギャツビー.jpg



マスターピース、あるいはクラシックという呼び名が似合う名作 『グレート・ギャツビー』。アメリカ文学史上、最高の小説だという人もいます。私にとっても非常に印象深い一冊です。


著者のスコット・フィッツジェラルド自身が天才的な名文家として名高いのですが、人気作家の村上春樹氏がそれを翻訳したということで、話題になり、再読してみました。

村上氏のあとがきによると、氏は本書とドストエフスキーカラマーゾフの兄弟』 そして レイモンド・チャンドラーの『ロング・グッドバイ』 を自身の人生でめぐり合った重要な3冊としてあげ、その中でもベスト1は『グレイト・ギャツビー』 だと述べています。


第一次世界大戦が終わり、空前の好景気、その後、世界恐慌(1929年)前の1925年に出版されました。物語の舞台は1922年のアメリカ東部。戦争から戻ったあとに、事業を興し、成功させ莫大な富を手に入れたギャツビーという30歳くらいの若手実業家とデイジーという女性の物語です。

そして、その恋愛の成り行きを、偶然ギャツビーの隣の家に住んでいて、デイジーとも遠いつながりのあるニック・キャラウェイという青年が一人称で語るという形で、物語が進んでいきます。


ひたすら上流階級にあこがれ、自分の過去を消してまで、あらゆるものを利用しながら、無一文からのし上がり、今や不可能なものなどないのだという日の出の勢いのギャツビー。ある場所に豪邸を構え、夜毎、多くの著名人を集めた大パーティーを開きます。

究極の成り上がり者ですが、どんな仕事をしているのか、過去はどんなものなのか、いろいろな噂が飛び交うのも気にせず、社交界で頂点に近付いていきます。すべてがミステリアスなのですが、その目的は案外素朴なところにあります。

最後は、夢かなわぬまま、寂しくこの世を去ってしまうのですが、何度読んでも感動を味わうことのできる一冊。むしろ、一度目より二度目の方が深い感動があるというような、名作に共通する力のある本です。


力と富に対する飽くなき執着、ある段階でいやおうなしに浮かび上がる空虚感、それを埋めるために立ち止まりたくても、常に前進していなければ、後ろから追い越されてしまったり、見放されてしまう厳しい現実。そうしたことが予想外の展開と、他の人々の人生を通じて語られます。いかにもアメリカ的なサクセスストーリーとその顛末です。


そして、グレート・ギャツビーを読むとどうしても思い出さずにはいられないのが、だいぶ前にご紹介した、同じく上流階級を扱ったカズオイシグロの『日の名残り』です。こちらはイギリスが舞台。『グレート・ギャツビー』の中でも、彼の学歴がイギリスのオックスフォード大学になっていることについて何度も話題にのぼります。


『日の名残り』 では、きっとギャツビーならあこがれていたであろう、伝統と格式のある名家、その執事が主人公で、1930年代の思い出と50年代を描きます。時代が変わって、その豪邸の持ち主がイギリス人からアメリカ人に代わるのが象徴的です。


『日の名残り』に出てくる新しいアメリカ人家主は、ギャツビーのような人物ではないのですが、イギリスから見たアメリカをそれとなく感じます。また『グレート・ギャツビー』ではアメリカから見たイギリスが背景にありますね。


まぁ、いずれの作品も私があれこれ書くよりも、多くの専門家によるすばらしいレビューがあるでしょうから、この辺にして…。


せっかくですから、フィッツジェラルドの名文と村上春樹氏の訳を少し紹介しておきましょう。ほんの数行だけ取り出して比較しても、あまり意味はないのですが、生徒たちに訳の違いがあるということ知ってもらうために、終盤の名場面の一部を抜き出してみます。

ギャツビーが亡くなった後に、ニックが家主のいなくなった豪邸を前にして、語る部分です。“夢が過去のものであった” と語る、本書の中でも特に名文として名高い一部分です。高3・浪人クラスの生徒たちには和訳を宿題にしようかな(笑)。


村上春樹氏の訳が上、下は上岡伸雄氏(大学教授:翻訳家)の訳です。


 And as I sat there, brooding on the old unknown world, I thought of Gatsby's wonder when he first picked out the green light at the end of Daisy's dock. He had come a long way to this blue lawn and his dream must have seemed so close that he could hardly fail to grasp it. He did not know that it was already behind him, somewhere back in that vast obscurity beyond the city, where the dark fields of the republic rolled on under the night.


 Gatsby believed in the green light, the orgastic future that year by year recedes before us. It eluded us then, but that's no matter --tomorrow we will run faster, stretch out our arms farther.... And one fine morning --

  So we beat on, boats against the current, borne back ceaselessly into the past.


 そこに座って、知られざる旧き世界について思いを馳せながら、デイジーの桟橋の先端に緑色の灯火を見つけたときのギャツビーの驚きを、僕は想像した。彼は長い道のりをたどって、この青々とした芝生にようやくたどり着いたのだ。夢はすぐ手の届くところまで近づいているように見えたし、それをつかみ損ねるかもしれないなんて、思いも寄らなかったはずだ。その夢がもう彼の背後に、あの都市の枠外に広がる茫漠たる人知れぬ場所に -----共和国の平野が夜の帳の下でどこまでも黒々と連なり行くあたりへと---- 移ろい去ってしまったことが、ギャツビーにはわからなかったのだ。 

 ギャツビーは緑の灯火を信じていた。年を追うごとに我々の前からどんどん遠のいていく、陶酔に満ちた未来を。それはあのとき我々の手からすり抜けていった。でもまだ大丈夫。明日はもっと速く走ろう。両腕をもっと先まで差し出そう。・・・・そうすればある晴れた朝に…
 だからこそ我々は、前へ前へと進み続けるのだ。流れに立ち向かうボートのように、絶え間なく過去へと押し戻されながらも。




 そして私はそこに座り、いにしえの未知の世界に思いを馳せながら、ギャツビーの驚嘆について考えていた。彼はデイジーの船着場の突端にある緑の灯りを捜し当てて、さぞかし驚いただろう。長い旅路の果てにこの青い芝生までたどり着き、自分の夢がすぐ近くに感じられて、それをつかみ損ねることなどあり得ないと思ったに違いない。彼は知らなかったのだ。自分の夢がすでに自分の背後のものだということを。それはニューヨーク市の彼方にぼんやりと広がる広大な地域、共和国の暗い原野が闇夜の下に広がっている地域にあったのだ。

 ギャツビーは緑の灯りを信じた。私たちから年々遠のいていく狂騒の未来を。その未来は私たちをすり抜けてしまったが、それはたいしたことではない。明日、私たちはもっと速く走り、もっと先まで手を伸ばそう・・・・そうすれば、ある晴れた朝に-----。
 こうして私たちは進み続ける。流れに逆らって進むボートのように、果てしなく過去へと押し返されながらも。




「青空文庫」で別の訳も読めます。興味のある方はどうぞ


⇒ グレートギャツビー




グレート・ギャツビー

中央公論新社

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グレート・ギャツビー ペンギン・ミューズ・コレクション 原書で楽しむ英米文学シリーズ

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日の名残り

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『グレート・ギャツビー』 スコット・フィッツジェラルド著 村上春樹 訳
中央公論新社:356P:861円


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14 コメント

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グレート・ギャツビー (風竜胆)
2007-04-16 19:10:57
『グレート・ギャツビー』、(大)昔「華麗なるギャツビー」というタイトルで、映画にもなっていましたね。
実は、大学で教養の英語のテキストがこの原本でした。
内容は、ほぼ記憶から消えていますが、懐かしいですね。
懐かしき学生時代 (Dan)
2007-04-16 21:07:38
大学では英文科でしたので、勿論(?)英語で読みました。読んだはずなのに、あまり記憶にないのは・・・なぜ?
原書をどんどん読まされたのですが、(自分から読んだと言うより、教授に読まされたと言った方が正確です)意味がわからないときには、必死で探しました、和訳された本を。
懐かしい思い出ですね。
今ではもう、原書で長い文章を読もうという気がなくなってしまい、もっぱら日本語の本ばかり読んでいます。
英語とは、かけ離れた生活をしているので、たまに大学生に戻って、もっと真面目に勉強したいと思うこともあります。でも、さすがに試験前の徹夜はできないですね。体がついていけません。
風竜胆さん (VIVA)
2007-04-16 23:21:22
京都大学では、(大)昔、一般教養で扱っていたんですね。何年くらい前なのか知りたいですが(笑)。

おっしゃるように訳書も「華麗なるギャツビー」や「偉大なるギャツビー」というのも出ていましたし、映画も4・5本出ていたようですね。

Danさん (VIVA)
2007-04-16 23:27:39
そうでしたか、英文科ですか。変な英語の記事、書けないですね(笑)。

私は、勉強した本の名前すら忘れてしまったので、とてもDanさんのコメントに突っ込めません。^_^;
Unknown (milesta)
2007-04-16 23:56:33
そんな良い本だったのですか。私は中学か高校の頃テレビの洋画劇場で観て、何となく退廃的な雰囲気が好きでなくて、原作を読もうという気にはなれませんでした。でもVIVAさんの記事を読んでみると、奥の深い内容のようで、今なら面白く読めるかもしれないと思いました。

訳の比較おもしろいですね。村上春樹さんは文学的で言葉の選び方や言い回しが上手、上岡伸雄さんは歯切れが良く男性的な感じですね。
うーーーむ。 (ふる)
2007-04-17 00:40:37
小説は1回しか読んでないですが、
映画なら何度も見てます。
原作の雰囲気を壊してない、稀有な例ではないかと。

追伸:実は上岡先生は恩師であるので、訳文についてはコメントを控えさせていただきます(苦笑)
「祝祭」もお勧めです (山ちゃん)
2007-04-17 01:21:53
「The Great Gatsby」のラストを出題するなんて・・・。ずるい>VIVAさん(^o^) (アメリカ文学史上に残る名文ですよ!)

「The Great Gatsby」は冒頭の「In my younger and more vulnerable years my father gave me some advice that I've been turning over in my mind ever since.」も凄いのです。

さて、フィッツジェラルドといえばヘミングウェイ、村上さんによると「The Great Gatsby」より一ランク落ちるらしいのですが、彼の処女長編「Fiesta: The Sun Also Rises」も素晴らしいです。(私に言わせると同じレベル)
#ヘミングウェイの「Fiesta: The Sun Also Rises」はヨーロッパと本国のアメリカで題名が違います。ヨーロッパでの題名は「Fiesta(スペイン語で、祝祭という意味)」、アメリカでの題名が「The Sun Also Rises(日はまた昇る)」です。

ヘミングウェイの最高傑作は短編集である「In Our Time」ですが、フィッツジェラルドも負けていません。フィッツジェラルドには「Babylon Revisited and Other Stories」という素晴らしい短編集があります。これらの短編も村上春樹訳で読めます。
milestaさん (VIVA)
2007-04-17 10:13:57
比べて読んでいただけてありがたいです。長いのを写したかいがありました(笑)。男性っぽい話しかなとも感じますが、おもしろいと思いますよ、機会があればぜひ。村上春樹さんが好きな方は、文句なしでしょうが、私はどちらかというと上岡さんかな(笑)。
ふるさん (VIVA)
2007-04-17 10:16:34
えっ、そうなんですか。上岡さんが恩師ですか。どんな先生か今度教えて下さい。

映画は確か、アカデミー賞の何かを取ったはずですよね。何度も見たということはおもしろいということですよね。今度レンタルしてみます。
山ちゃんさん (VIVA)
2007-04-17 10:28:23
ずるいですか(笑)?

そうですね、冒頭の部分の方が生徒たちにも訳しやすいと思ったし、村上氏も冒頭の訳に力を入れたと書いてありましたが、どうも“名文”というふうに感じられるかどうかあやしかったので、最後にしておきました。

村上氏は、不朽の名作はあり得ても、不朽の名訳というのはないと書いていました。難しいところだな~と思った次第です。

ご紹介の本、いずれ読んでみます。ありがとうございました。
>VIVAさん (milesta)
2007-04-17 14:56:07
>私はどちらかというと上岡さんかな(笑)。

そうだったんですか。実は、コメント欄で「上岡さんの方が読みやすい。」と書こうかどうしようか迷ったんです。私、あまりに文学的な作品は苦手で、村上春樹さんの小説もよく理解できないんです。上の訳も確かにうまい!という表現があるけど、私にはちょっとまどろっこしく感じました。
村上訳の世間の評判は良いみたいなので先ほどは書かなかったのですが、VIVAさんのコメントに安心して書いちゃいました。
milestaさん (VIVA)
2007-04-17 17:35:01
村上春樹さんのファンは世界中にいるらしいですね。ハルキストという言葉もあるくらいですから。私は好きなものとそうでないものがあります。村上龍さんよりは合います(笑)。体質ですから、どうしようもないです。

上で取り上げた部分だけでは上岡さんの方が読みやすくて好きですが、本書は、全体として違和感はありませんでした。よろしければどうぞ。
村上春樹訳 (山ちゃん)
2007-04-17 20:18:37
村上さんの訳は、それまでの定訳だった野崎さんの訳(新潮文庫)や大貫さんの訳(角川文庫)に比べると、言葉がかなり過剰という面がありました。特に前半。



ただ、後半、のオリジナルと同様に、ナレーターであるニックの物語としても立ち上がってくるところが見事でした。(他の訳者のはギャツビーの印象が色濃く、ニックの印象は薄いのです)
山ちゃんさん (VIVA)
2007-04-18 10:38:42
そう、言葉が過剰、そんな感じです。そこが良いという人もいるでしょうけど(笑)。

ギャツビーに惚れすぎている、力が入っているとでも言いましょうか。私は全部英文と照らし合わせているわけではないので、偉そうに申せませんが…。

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