『下流社会』 が大ヒットし、『かまやつ女の時代』 もそれなりにおもしろかった三浦展氏ですが、その二冊よりもずっと体系立った専門的な一冊で、郊外を論じたのが本書。少子化問題の分析にも役立ちそうな、大変勉強になった一冊です。
氏が本書の数年前に書いた 「家族と郊外の社会学」 が日本ではじめての、“郊外論” だそうですが、本書はそれに“郊外史” を付け加えたような内容です。
ある年代以上の方は、次の歌をご存知でしょう。小坂明子のヒット曲 “あなた”
♪もしもわたしが家を建てたなら、小さな家をたてたでしょう♪
また、吉田拓郎のヒット曲 “結婚しようよ”
♪僕の髪が肩まで伸びて、君と同じになったら、約束どおり町の教会で、結婚しようよ Mmmm♪
前者が1974年で、後者は1971年で、両方ともビッグヒットですから、その世相が何となくわかる気がします。
筆者はこのところから始まり、当時、日本に住宅ブームあるいは結婚ブームが起こったことを指摘します。すなわち都会に出て、結婚をし、団地に住むのがあこがれであったというように。団地というのは核家族化の象徴ですが、2DKの団地にあこがれるほどそれまでの住環境は劣悪だったわけですね。
そしてそのブームの背景は、すなわちその理想とするところはアメリカの豊かな郊外の生活です。自分の車に乗り、電気製品がたくさんあり、専業主婦で子供が二人というような家庭です。この頃実際に日本で流行った“三種の神器”は、カラーテレビ・クーラー・カー(車)の3Cでしたね。
そのアメリカですが、アメリカも自然にその形になったのではなく、そういう理想像を普及させたい政治的思惑があったというのです。一つには対ソビエトの冷戦構造と、もうひとつは、言ってみれば、秩序だった消費社会、消費主体を作リ出すこと。
つまり、“労働者” を “消費者” という見方に変えていくわけですが、確かに自分の車や家を持ってしまった人は共産主義者にはなりにくいでしょう。今、まさに中国がその状態ですね。そのあたりは『東アジア「反日」トライアングル(古田博司)』でも痛切に感じました。
そして、その理想が日本に伝わってくる様子も紹介するのですが、その理想であったはずのアメリカの郊外の生活では予想していなかった反乱が起こります。不満をつのらせたのは、郊外の生活レベルに達しない黒人などのマイノリティーだけではなかったのです。
まずは女性たちのムーブメント(ウーマンリブ:女性解放)が、次に若者たち(ヒッピーなど)が理想や規格に閉じ込められた生活に反発をするわけで、それぞれ社会問題化します。
筆者の見るところ、時期を遅らせて、日本もそれに続きます。いったい郊外の核家族に何があったのか、どうして問題が出てきたのか、郊外生活の特徴や問題点を分析します。
こう見てきますと、戦後の高度成長社会ではものを大量生産すると同時に、多くの核家族を生産してきたというわけです。極端に言うと、家族ができたから、家電を買おうというのではなく、家電や車を買えば家族らしくなれたという指摘です。
今はその時代よりさらにずっと豊かですから、独身でも車や家電は買えるわけで、あえて家族になろうとする必要もない。ブームも起きません。大変おもしろく読めました。やはり目次を紹介しておきましょう。
第1章 マイホームという神話
第2章 ニューヨーク万博と郊外・家族
第3章 レヴィットタウンとアメリカの夢
第4章 冷たい戦争と暖かい家族
第5章 郊外への反乱
第6章 55年体制の中の郊外
第7章 郊外という問題
第8章 郊外を超えて
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の頃は、幼稚園。
♪もしも~、私が~、家を~
の頃は、小学生。
テレビは、白黒テレビでしたねぇ。
カラーテレビは、お座敷に鎮座しておりまして、
滅多な事では見せてもらえませんでした。
あ、でも、特別に「ゲバゲバ90分」だけは、
父の膝の上で見せてもらった記憶があります。
♪おらは死んじまっただ~
なんて、よく歌っていました。
懐かしい!
そう言えば、幼少の頃、父のマイカーの後部座席に座っていて、信号待ちから発車して走り出した車の鍵を開け、その拍子にドアまで開け、車から転げ落ちました・・・スタントマンみたいに・・・
普通の子だったら、その場で泣いただけなんでしょうけど、なんと私は立ち上がり、泣きながら車を追いかけたそうです。
いや~、懐かしいなぁ~。
昨日はご訪問くださり、またコメントをいただき、ありがとうございました、近頃はどうも文章が長くなってしまい、いかに素人と言うのはまとめ方が下手だと思っています、少し勉強をしなければいけませんね。多くの方からコメントをいただくものですから返事が出来なく困っています、以前はお一人お一人にコメントをしていたのですが思うように行きません、したがって今日はVivaさんのコメント欄をお借りし、感謝の意をさせていただきました。
今後ともよろしくお願いいたします。
さて、私の小さいころはまだ街頭テレビでした、父に誘われ、8時から始まるプロレスを見に行きました、今でもあのタイツ姿の力道山とシャープ兄弟の試合が目に浮かびます、でもみんなが貧乏でしたけど本当に楽しい思い出がいっぱいです、あのころの日本のほうが今より、ずっと心があっていいのではないかと思っています、人間って物が豊富になり、わがままになってしまうとろくなことはないですね。やはり昔の言葉で言えば人間にとって贅沢は敵なのかも知れません。
これからもよろしくご指導、ご鞭撻をお願い申し上げます。
そして人の手で何かを押し付けていくと、やっぱり反発って生まれるものなんですね。
その本は読んでいませんが、レビューを読んだだけでも面白いです。
カウンターは今299280です。あと少しですね!
そのスタントマンばりのかけっこもまた、別の映画を見ているようですね。いずれにしてもとても懐かしく感じているのは、歳をとった証拠ですね(笑)。
みなさん涙無しでは読めない、日本とオランダの美しいエピソードがkazuさんの記事がありますので、ぜひご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/kazu4502/e/1a49077e467e7d3f25e3ab2565b00ded
こちらこそよろしくお願いします。
重松さんの本は、数冊しか読んでいませんので、偉そうなことは申せませんが、そう指摘されて考えてみますと、確かに重松ファンは郊外に住んでいる人が多い気がしてきました。なるほど、気になります。
場違いなコメントですが、迷惑でしたら、消去してください。
アメリカのビジネス書というのか、メルヘンっぽくもあるのですが、「ウサギはなぜ嘘を許せないのか?」マリアン・M・ジェニングス著、あの、「さおだけ屋…」の山田真哉監修、もう読まれましたか。
ビジネス界において、正直に生きるということは、どういうことか、を御伽噺のように噛み砕いて書いています。
既読で、VIVAさん、紹介済みですか?
生き馬の目を抜くと想像しているアメリカのビジネス界が、コンプライアンスを大切にという書を評価している、ひとって、やっぱりいいなーと、思わせてもらえました。
場違いなコメントを書いてごめんなさい。
ご紹介の本、書名だけは知っておりましたが、未読です。他ならぬ街中の案山子さんがせっかくお知らせいただいたので、チェックしておきます。
いつになるか分かりませんが、必ず記事にしますので、そうしたらTBでもしてお知らせします。
これからもよろしければ時々お付き合い下さい。コメントありがとうございました。