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『なぜ教育論争は不毛なのかー学力論争を超えて』 苅谷剛彦

2007年04月25日 | 教育関連書籍


なぜ教育論争は不毛なのか.jpg


全国230万人以上の小6・中3の生徒たちが参加した、昨日の全国一斉学力テスト、数で言えばセンター試験の4倍近くですね。このテストに関しては、以前のコラム 『学力テストに関して:新しい教科書問題』 で書きました。


端的に言えば、生徒の基礎学力を上げてやりたい、進路指導をしたいと思う先生方と、まじめに勉強していても、塾に通っていない生徒たちに正確な情報を与えるためには、(問題も見ておりませんので)今回のやり方がベストかどうかはともかく、テストは絶対に必要だということです。

そもそも実態がわからないままでは、議論すらかみあいません。

ついこの前発表された、国立教育政策研究所の実施した学力テストの結果では、危惧したとおり、英語・数学などの科目ではっきりと二極化している様子がわかります。点数分布で山が二つできてしまいました。

  ⇒ 調査集計結果 (国立教育政策研究所)



そしてこの学力格差の広がりを、ゆとり教育の論争以前からいち早く指摘していたのが本書の著者、苅谷剛彦氏です。これまで、氏の著作や共著のもので、『教育改革の幻想』、大村はま先生との 『教えることの復権』、橘木俊詔斉藤貴男氏らとの 『封印される不平等』 を取り上げました。


今回のテスト、やはりあいかわらず、新聞、特に地方紙には “ランク付け” だの “序列化” “過当競争” といった否定的意見が載っていました。確かにテスト結果の使い方には慎重を要すると思いますが、テストをしなければますます格差は見えにくくなってしまいますし、社会の階層化にすらつながりかねないと思うのです。

NEWS23の報道では、広島県の学力向上を公約にした街と、唯一今回のテストに参加しなかった愛知県犬山市の、ある勉強が苦手な一人の生徒だけを取り上げて、全国テストを論じていました。とにかく基礎学力を測るのに、“印象論”や政治を持ち込んで欲しくないなぁというのが本音です。


日本を滅ぼす教育論議』で岡本薫氏がいうように、また『授業の復権』で森口朗氏が指摘するように、学校の役割を整理して議論して欲しいと思っています。

義務教育というかたちで、学習の“機会の平等”を与えれば、“結果の不平等”は当然出てきます。序列化とはまったく別の問題です。スポーツでも音楽でもあるでしょう。


それを検証もしないまま、ゆとり教育だの、総合的学習だのと次々と現場を混乱させ、結局格差は開く一方で、気が付いてみると、苅谷氏が指摘するように、東大に入る生徒は所得の高い家庭ばかりという状況になっています。すでに機会の平等すらあやしくなっているというように認識しています。


以前、苅谷氏がNHKの教育テレビで、ゆとり問題を論じているのを見ていたのですが、単に客観的な数字や状況を紹介しているだけのような冷たい印象(笑)を持っていましたが、本書を読んでその意図が分かりました。

不毛な論争に巻き込まれたくなかったのですね。本書ではご自分の言葉で、明確な主張をしています。学力論争は決着済みであるから、きちんと政策評価や資産の再分配ができるしくみにしようということです。


以下が目次です。


序 教育の論じ方を変える

第1部 学力低下論争の次に来るもの(もう、学力論争は終わった;一九九九年風は「ゆとり教育」のほうに吹いていた ほか)

第2部 なぜ教育論争は不毛なのか―メディア篇(独立行政法人化報道に欠ける「そもそも論」;消費される「動機理解」の事件報道 ほか)

第3部 なぜ教育論争は不毛なのか―行政・政治篇(「学習指導要領」の方針大転換;教育改革国民会議を読み解く ほか)

終章 隠された「新しい対立軸」をあぶり出す(なぜ「階層化」が問題だったのか;なぜ「子ども中心主義」教育が問題なのか ほか)


「ゆとり」か「詰め込み」かなど、左右対立の図式の観念論をやめて、正確なデータに基づく教育政策をぜひ実行して欲しいと願います。 “熱い教育論” を闘わせるよりも、まずは、さまざまな資料を分析し、現状の共通認識を作り上げるのに、今回のテストが大いに役立つと良いのですが。


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なぜ教育論争は不毛なのか―学力論争を超えて

中央公論新社

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8 コメント

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参考になるのでしょうか? (すず)
2007-04-25 15:47:46
 長男はテストを受けて「思っていたよりも簡単だった」と言っていたのですが、今朝の新聞に載っていた問題を見て、私もそうと思いました。正解の回答者数等が、のちほど発表になるそうですが、これで参考になるのかしら?と疑問に思いました。
先生の話・・・ (bucky)
2007-04-25 15:52:09
昨日、タイムリーなのか学校の個人面談がありました。一番最後だったのでかなり時間オーバー。
全国一斉学力テストの話が出ました。「B問題(記述の)になると面倒くさくなっちゃって正直言うと”寝てる子”もいたりしましたよ。本当に、クラスの勉強という意味での環境がそれぞれにあまりに違いすぎて・・・。」
難しいのだな、と思いました。
でも、「気持ちの上で、躾というかそういったものはきちんと伝えないと、と思っているし、受験はしないけど塾で勉強したい、という子もいてそれはそれで悪いことではないし。」とも。
ベテランの先生ですが、どのように共通のテーマを見つけやっていくか苦心されているようでした。

「息子さん、ちょっと生意気ね、最近。」とかも言われて、学校でのことは”当然”きちんとやるようにときつく言い渡した次第。

ちょっとした報告です。
すずさん (VIVA)
2007-04-25 17:42:12
これはどう判断するか、難しいところですね。というのは、レベル的にとても易しいのは確かだと思いますが、問題が表現力とか生活での思考力を試すようなものです。

塾ではあまりやらないようなものも含まれていて、生徒たちは苦手ですから、案外点数は低い可能性も捨て切れませんね。特にB問題。

なぜ、こんな問題になったのか、やはりPISA、例の国別の順位が出る国際比較のテストですが、それに傾向が似ていて、強く意識しているのではないかということです。もう少し、情報を集めてみますね。
buckyさん (VIVA)
2007-04-25 17:54:17
真剣に学力を上げたいとか、クラスをまとめたいと思っている先生には、現在の学校は本当にやりにくいでしょうね。

私なんぞは、小学生は基礎練習が明らかに足りないので、たくさん宿題を出してもらいたいと思うのですが、親によっては塾でやるからいらないというし、居残りで補習をすれば、感謝されるどころか、文句をいわれることも珍しくないようですから。


少し生意気ぐらいが良いじゃないですか。人に迷惑をかけたり、先生に乱暴な言葉遣いをしているのでなければ、No Problemでしょう。

最近の男の子は元気がないのが気になるくらいですよ。個人的には。
お知らせ (ysbee)
2007-04-25 20:00:21
元気な女の子です!……半世紀前の
(VIVAさんの「げっ」という声が聞こえる)

子どもはどんどん変わりますから、
好きな事を思い切りやれる環境を与えてあげれば「御」の字じゃないでしょうか。
(「恩」の字? 最近日本語がアブナイ!)

ところで、お知らせです。
ブッシュが北朝鮮に警告を発しました。
イランへの攻撃が国内で猛反対に会ってかなわないので、
矛先を北へ向けるつもりでしょうか?
安倍さんの訪米前の露払い、の感もなきにしもあらず。

ちょっと気になるニュースなので、即アップしてお知らせにきました。
帰宅途中にでもお立ち寄りください。(焼き鳥屋じゃないんですが……)
ysbeeさん (VIVA)
2007-04-25 21:36:55
大人の女性はさらに元気です。拙ブログでも●●さんと△△さんとか■■さんなんか、特に□□さんなど、とても私はかないません(笑)。

ありがたいことです。それはともかく、どういう意図なんでしょうね。つい先日まで、ブッシュ政権は逆に北朝鮮なんか構ってられないという雰囲気で報道されていました。

とにかく北朝鮮かイランのどっちかと戦わなければ気がすまない政権だとしたら、とんでもない構造というか、思想ですね。安倍訪米に何か関係しているようには思いますけど…。後から勉強しにまいります。

“はつ”と“レバ”を塩で、あっあと、ねぎまをタレで…。
学力テスト実施という政治性 (yo)
2007-04-29 10:54:58
苅谷さんは今回の悉皆の学テに反対されていますね。

私は、実施に際して、やはり吟味が足りないという意見も当然だと思っていますが、それ以前に、どういう経過を踏んで実施されたかを見て行くと恣意的かつ政治的な思惑を感じざるを得ないというのが私の印象です。

現実問題として、自治体で行われている学テの各学校でのフィードバックの仕方も、東京都足立区の例を出すまでもなく、いろいろな場所でおかしな現象を生んでいます。
(学テ対策に傾注する学校。学テ対策で成績不審者を欠席させる。などなど例はいくらもあります。)

私自身も悉皆のメリットよりもデメリットの方が多いと感じています。
でも、こういった議論は、特に格差上層の人には全然伝わらないのです。
yoさん (VIVA)
2007-04-29 18:35:47
おっしゃるとおりです。苅谷氏は反対していらっしゃいます。悉皆でなく抽出が良いのだというのもごもっともだと思います。政治的な駆け引きがあることも確かでしょう。

私の意見は拙ブログで述べたとおりです。中学生の進路指導の資料を先生と生徒に渡したいということです。

大変貴重な意見をいただき、ありがとうございます。現役の学校の先生方と意見交換できることは大変勉強になります。

特に、ご自分のブログを持っている方ですとなおさらです。できましたら、時々コメントしていただけるとありがたいです。

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