たきいの徒然空想日記

2次創作だったり、思いついた何かを書いていきます。どうぞよろしくお願いします!

TRIGGER 2 訂正版

2017-04-21 16:37:12 | 二次創作(マクロス)
TRIGGER 2
☆前回投稿をやや訂正いたしました、ご了承くださいませ。


翌日、ハルトはいつもの如く学校に向かった。しかし普段ほど苦痛ではなかったのは放課後を待ち望んでいたからなのかもしれない。
学校の訓練が終わるや否やすぐに近道の公園へと向かった。それは家に早く帰るためでなく、昨日の少女、ミリアに会うためだ。遊歩道から外れて公園の奥へ、木々を抜けた先にある噴水広場。昨日言っていた通り、ミリアはそこにいた。
白のシャツに黒スカートとブーツ、そして昨日と同じ赤いベレー帽姿でミリアは噴水に腰かけていた。
「…ちわ」
昨日は警報のせいでまともに喋れていなかった事を思い出し、挨拶の声が小さくなる。
そのためかミリアは振り向かない。ハルトに気づいていないようで、よく見るとイヤホンをつけて、端末で何かを聞いていた。
今度は顔を覗き込むように話しかけて見る。
「…こんに、ちわ」
「わ!」
驚いたのかミリアは大きな声をあげた。その勢いで後ろに倒れそうになる。すぐ後ろは噴水だ!
「危ない!」
ハルトは反射的に手を伸ばした。
バジャン。
盛大な音と水しぶきをたてて、なぜかハルトだけが噴水にはまっていた。
「「あ…」」
ミリアを庇おうとしていたはずなのだが、どうやら彼女が落ちる寸前に噴水の縁から跳ね避けていたために勢いを殺せずにハルトが落水したようだ。
まだ人工陽が出ている時間のため体を冷やさないのは良かったが、がっつり制服の下に着ているTシャツまでびっしょりだ。また母に怒られるな、これ…。
「ごめんなさい!私が避けたばっかりに、代わりにハルトくんがビショビショに!」
ミリアはイヤホンを外して頭を下げた。
「いや、いいよ。それよりすごいな、咄嗟にバランス立て直して逃げるなんて」
さすがははぐれとはいえウィンダミア人の血が流れているというだけはある。
しかしハルトの言葉が聞こえているのかいないのか…、ミリアはずっとオロオロとしていた。その姿につい思い浮かんだ。
「…ウサギみたいだな」
「ウ、サギ?何がです?」
「あ、いや…。ミリアはウサギみたいだなって」
「?」
「なんでもないよ」
首をかしげる姿にハルトはまた笑ってしまった。不思議とこの空気感が心地いい。
「むぅ、気になる言い方はよくないですよ」
ミリアは噴水から出たハルトにタオルを差し出しながら頬を膨らませた。
流石に笑いすぎたか…。
「だからなんでもないって。それにしてもその端末、機種古いな?」
濡れた服を絞りながら、ミリアの言葉をはぐらかしハルトは尋ねた。少し気になっていたのだ。
「あぁ、これはお店の人にもらったんです」
「お店?」
ブレザーって吸水性低いはずなのに雑巾ばりに絞れるぞ、これ。
「はい、湾岸地区に祖父母の友人の家系という移住ウィンダミア人の方のレストランがありましてお世話になってるんです。裕福じゃないけどとてもお優しいご家族なんですよ!これは誕生日にオーナーさん達が買ってくれたものです!超時空シンデレラのランカ・リーモデルの端末♡」
そう言ってミリアは端末を優しく抱きしめた。
本当に大切にしているようだ。
そこでふと気づいた。
「そういえば昨日端末は持ってないって言ってなかったっけ?」
「それはですね、昨日買ってもらったからですよ」
なるほど、ハルトと会った後にか…。
ということは、
「昨日が誕生日だったのか!?」
「ええ、これで…17年目みたいです」
「なんだそりゃ…」
『言ってくれれば何か用意したのに』
と言葉の続きを考えたが口にすることはできなかった。さすがに1日しか会っていない者が何か渡すのは馴れ馴れしすぎる気がする。
「そっか…、1日遅いけど誕生日おめでとう」
「ありがとうございます、ハルトくん!」
ミリアは笑顔を向けた。思わず、頰が緩む。
そこでふと思い出した。ミリアに会いたいと思ったのはただ単純に会いたかっただけではない。
「ミリア」
その声にどう思ったのか、悪戯っ子のようにミリアが微笑んだ。
「どうかされましたか?」
先ほどの落ち着く雰囲気とは違う空気が流れているようだ。なんだろう。周囲の温度が数度冷えた気がした。まぁ濡れたシャツの影響ということもあるだろうが…。
「あの、昨日の『旅立ちの、歌』だっけ?…を聞かせてほしいんだ」
「どうしてですか?」
「そ、れは…」
ハルトは思わず口ごもった。
答えるべきかを戸惑ったのか、雰囲気がガラリと変わったミリアに戸惑ったのか、それとも何かを見通すような瞳に戸惑ったのか。言葉をうまく紡げない…。
すると、
「昨日は…」
ミリアは目を伏せて話しだした。
「褒めていただいたから歌おうと思いましたが…怒られちゃったんです。『この歌は門外不出。誰かに聞かれないようにしないといけない』と。だから」
ミリアはハルトを見つめ、スッと人差し指を向けた。
「あなたが聞きたいと望む理由が適切だと判断したら歌いましょう。でも、そうでなければ申し訳ありませんが歌うわけにはいきません」
凛とした声からは強い意志がうかがえた。その表情には決心の色が滲んでいる。
ハルトは戸惑った。
門外不出…。なるほど。だからこそ、ハルトは話せないのか。
言うべき理由はわかっている。でも言うことはできない。ハルトの持つ理由も門外不出の代物かもしれないからだ。それこそ母がヒステリーを起こすほどに…。
ハルトは細く息を吐いた。絡まった緊張の糸を解くように。
それを見てミリアはどう思ったのか。
「…そうですか」
だった。
そして頭を下げ、
「…ごめんなさい、他人に言いにくい事もあるかもしれないのに不躾な言い方をしてしまいましたね」
と眉を寄せて微笑んだ、少し残念そうに。
「いや、そんな事は…。それに俺こそごめん。気安く歌ってくれとかそれこそ不躾だったし…」
「そんな事はありません!私歌うの好きですし!気にしないでください!」
「そうか、それはよかった」
両手で必死に否定するミリアにまた口元が緩む。そこでふと気になった。
「あのさ、ミリア。一つ否定したい事があるんだ」
ミリアはびくりと硬直した。うん、やっぱりウサギみたいだ。
「君は『他人だ』って言ったけど小さな事でも縁ができたからには、俺はもうミリアを友達だと思ってるよ!」
我ながら勝手なもの言いだ。そんな事はわかっている。でも、『他人』という線引きをされた事にハルトはそれなりに怒っているのだ。
それを聞いてミリアは目を丸くしてから吹き出した。
そして、
「ありがとうございます、とても嬉しいです!」
と満面の笑みを見せた。先ほどの凛とした雰囲気はもうなかった。

「そういえば何聴いてたんだ?」
ミリアはハルトに会ってからずっと端末を握りしめている。
すると、彼女は息荒く答えた。
「それはもう!超時空エンジェルのユーシェ=マクワイアのベストアルバムですよ!」
なるほど、ミリアもファンなのか。ハルトは思わず吹き出しそうになった。『幼なじみのファン』、それは無性に嬉しいものなのだ。
するとミリアは端末をスピーカーモードにして曲を流し、そして歌い出した。この曲は…、確かユーシェの新曲『shoot the hart!』だ。
…。
…。
…。
今までも様々な場面でユーシェの歌を歌う者を見た事はあるが、
「うわ…」
ミリアのそれは常人のそれとは大いに違っていた。
常人のそれ以上の力を持っていた。
これは、すごい。上手い。
いや、ただ上手いというよりも強く響く何かがある。ユーシェで歌の上手い下手には聡いと思っていたのだが、彼女は確実な前者だ。ユーシェの力強さのある歌声とは違う、暖かいような、陽だまりのような優しさが強く響く歌声だ。まるでミリアの本質と深く繋がっているようだ。
今は人工陽の日差しさえも彼女のためのスポットライトのように思えた。それほどにミリアはこの場で一番輝いて見えた。
やがてプツッと曲が止まると、ミリアは小さく息を吐いてハルトに向き直った。
「やっぱりユーシェさんの歌は凄いです!歌声を聴いたら元気になれますし、一緒に歌ったらすっごく楽しいです!…ってあれ?ハルトくん?」
ミリアに名前を呼ばれてハッとした。思わず見入ってしまっていたらしい。
「あ、ごめん」
途端、なぜかミリアは目を潤ませた。
「そ、そんなに私の歌、ダメでした!?」
本人は自分の素質に気がついていないのか!?ふるふると震えるミリアにハルトは思わず笑ってしまった。
「なんで笑うんですか?」
「いや、逆なんだよ!すごくうまかったから驚いてさ…」
ミリアは顔を真っ赤にして首を横に振った。わかりやすいやつだ。
「ミリアぐらいうまかったらユシェと並ぶ歌手になれそうだな」
「そ、そ、そ、そんな恐れ多い事を!」
ミリアはさっきよりもさらに激しく首を横に振った。
「そうか?歌手になればいいと思ったのに…」
「そんな、私なんかが歌手だなんて…本当に恐れ多いですよ」
そういうと両手で顔を隠した。その指の隙間から見える頰はまだりんごのように真っ赤だ。
ニヤニヤと様子を見ていたハルトに気づいたのか、
「そ、そんなことよりハルトくん!間違えてましたよ!『ユシェ』さんじゃないですよ!『ユーシェ』さんですよ!!」
ミリアは話を逸らそうと顔をあげた。若干笑顔が引きつっているのはまだ照れているのかもしれない。
単純明快。ハルトは盛大に吹きだした。
「なんで笑うんですか!?あ、馬鹿にしてるんでしょ!」
ミリアはプクっと頰を膨らませた。
「ごめんごめん!ミリアがあまりにも面白いからつい!」
「な!?ヒドイです!」
ミリアはさらに頰を膨らました。突っついてみたい衝動に駆られる。
とりあえず、
「ごめんって。あーおかし…。それはあだ名なんだよ。ユシェの…、ユーシェ=マクワイアとは幼馴染なんだ」
ハルトは笑いを抑えながら話した。
あの『ユーシェ=マクワイア』と幼馴染。さぞ驚くことだろうと思っていたのだが、
「…あー、なるほど」
意外と反応は薄かった。我ながら結構すごい事と思っているのだが…。
「でも、いいですね!ユーシェさんと幼馴染なんて!いっぱい会えるでしょ!私なんか近くで見たいから今回のエリア3のライブのチケット探してるのに全然手に入らないんですよ…」
そう言ってミリアは両手で頰を抑え、ため息を吐いた。
そういえば今週末のここ、エリア3でのランディドームコンサートはユーシェの地元なだけあって倍率が他のエリアよりも格段に高いとソーマが言っていた。
「仕方ないからコンサートの日はお店のシフトに入らないとですよ…」
これは、
「それならさ、チケットあげようか?」
「え?」
ハルトは水没せずに済んだ鞄の中からクリアファイルを取り出し、それをミリアに差し出した。
「俺、ユシェに頼んで、チケットもらってるんだ」
中にはチケットとバックルームパスが二枚ずつ入っている。
「え、え、え!?本当ですか!?」
ミリアは目を白黒させた。彼女からしたら棚からぼた餅どころか靴箱からショートケーキ並みの衝撃だろう。…我ながら例え悪いな。靴箱のショートケーキ…食べたくない。
…このチケットはソーマに頼まれているものなのだが、普段贔屓にしているのだから今回ぐらいは他のやつに譲ってもいいだろう。今ここにいないソーマにハルトは心の中で謝罪した。
「あぁ、昔から仲良くて頼んだらくれるんだよ、だから1日遅れだけど誕生日プレゼントとしてど…」
思わずギョッとした。ミリアの目から大粒の涙が溢れている。昨日も驚いただけで大泣きしていたし、泣き上戸なんだな…。
ミリアはチケットを受け取ると震える手で握りしめ、涙でボロボロになりながら微笑んだ。
「嬉しいです!ハルトくん!」
…とりあえず喜んでもらえたならよかった。
時間はそろそろ人工陽が消灯する頃合い、帰る前に渡せてよかった。
『帰る』…、そこでハルトは思いついた。
「あのさ、バックルーム行くことなかっただろ?迷ったら大変だし…、一緒に行かないか?」
「いいんですか!?」
ミリアは目を見開いた。
「いいよ。じゃあさ端末買ってもらったんだから端末コード教えてよ。連絡取れた方がいいだろ」
ハルトは小さくガッツポーズをし、腕時計型端末を起動した。昨日は持っていないと言われて断られたが、今日なら連絡先をもらえる。昨日の失態を巻き返せる!
防水機能に感謝しながら水の滴るディスプレイを操作し、ハルトは端末コードファイルを開いた。
しかし、
「あの…」
ミリアがゆっくりと手をあげた。
「私、…まだコード持ってないんです」
思わず操作していた指が止まる。
「え?」
「個人端末コードの契約の時にバグが起きたからとかで私、明後日契約することになったんです」
昨日といい、今日といい、無性に恥ずかしい。ハルトは思わず顔を抑えた。
それを見てか、ミリアがカバンから一枚の折りたたまれた紙を差し出した。
「あ、の…これ」
受け取って開いてみるとそれは飲食店の広告だ。
「昨日せっかく親しく話していただいたのに連絡手段がなかったから申し訳なくて…、ここ、私がお世話になってるお店なんです。何かあったら来てください」
なるほど、昨日の事を気にしていたのか。少し虚しかった気持ちが晴れた気がする。
「ありがとう。そうだ、明日もここに来るのか?」
きっと来ると思ったのだが、ミリアは首を横に振った。
「本当は昨日だけのつもりだったのですが今日もお休みにしていただいたので明日からはまたお店のお手伝いをしないといけないんです」
「そうか…」
考えたらそうだ。毎回毎回公園で歌ったりしていたら、近道でよく通るハルトならもっと早くに出会う事が出来たはずである。出会えたのはきっとイレギュラーが重なったからであろう。
にしても、
「今日はわざわざ時間をくれたんだな。ありがとう」
「いっえいえ、私もまたお会いしたいと思っていました、し」
ミリアの頰が少し赤くなったので、ハルトもつられて赤くなる。
「それは…、嬉しいな」
「でもハルトくんにまた会えてよかったです!これからもよろしくお願いしますね!」
ミリアが笑った、それは晴れやかに。やはり彼女の空気感は落ち着く。ハルトの頰も思わず緩んだ。
その時、
「「あ…」」
夕刻の鐘の音が広場に響いた。公園の中央にある時計塔の鐘である。
これが鳴ったということは、
「もう帰らないとですね」
人工陽の消灯時間の合図である。
「…そうだな」
楽しい時間は過ぎるのが早いものだ。
「ハルトくん、チケットありがとうございます!現地集合にされますか?」
「あ、あぁ。そうだな、じゃあライブが始まる1時間前にホール前でよろしく」
次に会うのはライブか…。仕方ない。
そこでふと考えた。
「今日は俺に会うために休んだなら昨日はなんで休んだんだ?」
ハッとした。そんなプライバシーのない質問は失礼だ。
しかし、
「あぁ、それは」
ミリアは少し照れるように、少し懐かしむようにはにかんだ。
「…お姉ちゃんに会うためですよ」
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