第2審も、本人は出廷しないまま 死刑の判決が出ました。
さみしい社会です。
きのう、小さな工場を営む方のお話を一時間ほどお聞きする機会がありました。
勤め人では 全く分からないようなことですが、大企業から下請け、二次受け、三次受け…経費の削減だけが求められると。
人を大切にする社会のありようとはなんだろうと考えた一時間でした。
人との結びつき世に問うた 中島准教授が語る秋葉原事件
事件が投げかけたものとは何だったのか。一審公判のほとんどを傍聴し、被告の友人や職場の同僚などに取材して「秋葉原事件―加藤智大の軌跡」(朝日新聞出版)を著した中島岳志・北海道大公共政策大学院准教授に聞いた。
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事件は、毎年3万人以上が自殺する社会に一直線でつながっていると思う。暴力が自らにではなく外に向かい、無差別殺人を起こした。「特異な人物による事件」とは思えない。
手記には「孤立」という言葉が度々出てくる。仕事があり、居候できるほどの友達もいたが、彼は孤立感にとらわれていた。建前でない「本当の人間関係」への欲望は誰にでもある。彼はそれをネットで実現しようとしたが、失敗した。自らの存在そのものが失われたように感じてしまった。
手記には「誰かのために何かをさせてほしい」と思っていたとある。派遣労働で「お前の代わりはいくらでもいる」と突きつけられ続けた。部屋と職場を往復し、コンビニと牛丼屋に寄るだけの毎日。誰かのために存在しているという「かけがえのなさ」はなかった。
彼は事件前に自殺しようとした後、車を止めた駐車場の管理人に「料金は年末まででいい」と言われ、働いて返すのが生きる目的になったと振り返っている。ちょっとした人とのつながりが、彼にとって「ミラクル(奇跡)」だったのだ。
利害関係だけではない人との結びつきを、どれだけ社会につくれるか。これが事件が投げかけた問いだ。彼に似た思いを抱えた人は誰の身の回りにもきっといる。私たちは彼らに声をかけ、関係をつくろうとしているだろうか。
あれだけ騒がれた事件だが、もう誰も被告を見ていない。それでは事件の意味は生かされない。
彼は死刑が執行される時も、後悔しないだろう。社会に希望はないと思っているからだ。5分だけでも彼に会い、「君が死ぬのを悔やむような社会を僕はつくりたい」と言いたい。(聞き手・根岸拓朗)
秋葉原事件―加藤智大の軌跡 | |
中島 岳志 | |
朝日新聞出版 |