ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

春、バーニーズで

2016年10月01日 | 文学

   吉田修一の連作短編集、「春、バーニーズで」を読みました。
 モノクロの写真が点々と挿入された、フォトブックのような美しい体裁の本でした。

春、バーニーズで (文春文庫)
吉田 修一
文藝春秋

 構成は、先日読んだオカマの閻魔ちゃんと同棲する若者、筒井の生活を描いた「最後の息子」から10年後の筒井の日常を、さまざまな角度から切り取った短編集になっています。

最後の息子 (文春文庫)
吉田 修一
文藝春秋

 人は若者から中年にさしかかれば、当然、成長します。

 筒井は幼い子を持つ女性、瞳と結婚し、瞳の実家で義母と同居しています。
 平凡な会社員となり、毎日を忙しく暮らしているわけですが、ちょっとした事件は誰にでも、起こるものです。

 新宿のバーニーズで偶然、閻魔ちゃんと再会したり、マクドナルドで相席となった女性とアドレスを交換したり。
 挙句の果てには、突然会社に行くのが嫌になり、日光まで東北道を飛ばしたり。

 筒井という男、いくつになってもどこかモラトリアムというか、学生気分が抜けない男で、私も年相応の貫録がつかないせいか、変に感情移入できるから不思議です。

 実際、理由が必要だった。このまま東京に帰るにしても、会社に戻るにしても、何かしらみんなが納得してくれる理由が必要だった。たかが八時間、いつもと違った行動をしただけで、これまでの人生を、いや、これからの人生を語るくらいの物語をみつけなければ、元の場所には戻れないような気がした。

 「パーキングエリア」で、会社を無断欠勤し、日光へ向かったときの筒井の心情をつづった文章です。

 ズル休みするにしても、会社に電話を入れるのと、無断で休むのは大きな違いです。
 現に私は無断で休んだことはないし、無断で休んだ人は、そのまま退職したり、自殺したりするのがむしろ普通です。
 がんじがらめの日常を生きるサラリーマンの心情を描いて見事です。

 このあたりが、吉田修一という作家の美点なのでしょうねぇ。

 もう若くはなくなった、中年初期の男の日常や心情を描いて見事です。

 ただし、これを読む前に「最後の息子」を読んでおくことをお勧めします。

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グリーン・インフェルノ

2016年10月01日 | ホラー・サスペンス・SF等の映画

  雨の土曜日。
 朝っぱらからグロい映画をDVDで鑑賞しました。

 その名も、「グリーン・インフェルノ」
 直訳すると緑の地獄、ということになりましょうか。

 平たく言えば、ジャングルで繰り広げられる食人映画です。



グリーン・インフェルノ [DVD]
ロレンツァ・イッツォ,アリエル・レビ,カービー・ブリス・ブラントン,マグダ・アパノヴィッチ
ポニーキャニオン

 

グリーン・インフェルノ [Blu-ray]
ロレンツァ・イッツォ,アリエル・レビ,カービー・ブリス・ブラントン,マグダ・アパノヴィッチ
ポニーキャニオン


 私が中学生の頃、「食人族」という、やはりジャングルの未開の部族に白人が食われる、という映画がありました。

 感じはよく似ていますが、「グリーン・インフェルノ」のほうが、社会問題を扱っているというか、説得力があったように思います。

 ジャングルに眠る地下資源を求めて開発を進める業者から未開の村を守ろうと、運動家たちがジャングルに行きながら、未開の部族に囚われて次々と食われ、最後に残った女子大生が結局は作業員を護衛するための軍隊に助けられる、という皮肉な結末や、活動家のリーダーが裏では業者とつながっていて、しかも自分さえ助かれば仲間が食われても構わない、という態度を露骨に示したり、社会の闇や人間の闇が描かれているのですよ。

 食人の風習がある部族は、今は知りませんが、過去には確かに存在していて、部族内部の者を食す族内食人と、主に敵を食らう族外食人とがあるそうです。
 
 族内食人は、死者への愛着から魂を受け継ぐという儀式的意味合いがあるとかで、親族や知人たちが死者を食べることにより、魂や肉体を分割して受け継ぐことができるという考えのようです。

 族外食人は敵に対する憎悪、あるいは敵の力をもらうといった意味があるようです。

 どちらにしても、それを実際に行う人々にとっては、残酷な話ではなく、牛や豚を食うのとさして変わらないでしょう。

 この映画、目玉を生きたままくり抜いてそのまま食っちゃったり、人体をバラバラにしたりといった残酷シーンのせいかR18の指定を受けていますが、それが部族の自然な営みだと思うと、恐怖はつのるものの、残酷ではないのかもしれない、という不思議な感覚を覚えさせられます。 


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