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「涼と誠治」12

2016年10月14日 | T.B.2019年

「鹿を捕らえたのか」

 西一族の村に入ってすぐ。
 通りがかった村長が、涼と誠治に気付く。

「さすが、誠治は血抜きが上手いな」

 村長は獲物を見て、頷く。
 これなら、何家族も分配が出来る、と。

「どうした?」

 何か、ふたりの違和感に気付き、村長は誠治を見る。

「何か、あったのか?」

 誠治が目をそらしたので、村長は涼を見る。

 涼は、誠治を見る。

 誠治は、誰とも目を合わさない。

「何も」

 涼が答える。

「別に、何も」
「そうか」

 村長は、再度、誠治を見る。

「広場にはまだ、道具が出ているはずだ」
「……ああ」
「獲物を捌く人数も足りるだろう」
「判った」

 村長に云われ、誠治は獲物を抱えなおす。
 涼を、ちらりと見る。
 歩き出す。

 その後ろ姿を見送ると、村長は口開く。

「狩りで、何があった?」
「別に」
「山に会ったんだな?」
「…………」
「山と、何を話した?」

 涼は答えない。

 村長は息を吐く。

「お前。まさか、何かしたわけじゃないだろうな?」

 涼は首を振る。

「何も」
「余計なことはするなよ」
 村長が云う。
「山ともめごと起こしても、何もならん」

 涼が訊く。

「もし、誠治の身に危険が及んだら?」
「それは、」
「俺は、誠治を守らなければならない」
「何だ」

 村長が云う。

「お前、仲間意識はあるのか」

 涼は答えない。

「誰が、お前にそうしろと云った?」

 涼が云う。

「仲間は必ず守れと」
「誰が?」
「…………」
「お前の父親か?」
「…………」
「立派な父親だな」

 村長は、涼を見る。
 けれども、涼と目は合わない。

「誠治をよく見てろ」

 その言葉に、涼は目を細める。

「山と接触しないように、見張れと云うことだ」
「それは、」
「それと、山一族のことは誰にも云うな」
「…………」
「同じことを、山一族にも云われたか?」

 村長は、鼻で笑う。

「まあ、とにかく家に帰れ。今日の狩りはおしまいだ」

 涼は村長を見る。

「俺は、お前のことは信用している」

 云いながら、村長は涼の肩を叩く。

「お前の力のこともだ。西一族のために使ってくれる、とな」

 涼は、村長の手を振り払う。
 歩き出す。

「悪いな」

 後ろで、村長がそう呟く。



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