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「水辺ノ夢」187

2017年03月07日 | 物語「水辺ノ夢」

「あまり勝手な事をするな」

村の中心部、広場の近くにある村長の家。
その一室に村長、補佐役、そして悟が居る。

「しばらく様子を見るつもりだったのだが」

村長は詳しくは言わないが
その場にいる皆が
何の事を言っているのか分かっている。

杏子の事。
東一族に通じているかもしれない鳥。
圭と杏子の間に生まれた子どもの事。

「もうそんな時期は過ぎたと
 俺は思っている」

悟は答える。

「もし、あの鳥が東一族に通じていたら、
 これ以上情報が漏れるのはまずい」

「確かにそうだが、
 何も今、西一族と東一族で
 争いが起こるわけではない」

何を焦っているのか、と
村長は問いかける。

「火種ならある。
 東一族の女がこの村に居る。
 それだけで十分だ」

いつ、何のきっかけで
諍いが起こるか分からない。
数十年前の対立も
小さないざこざが続くうちに
ある東一族の男が死んだ事がきっかけだと聞いている。

「捕らえられてすぐに
 返してしまえば良かったんだ」

だが、と補佐役が口を出す。

「あの女は
 西一族を探っているという
 疑いもあった」

「なら、すぐ殺すべきだった。
 あなた達は甘すぎる」

言葉が過ぎると言いかけた補佐役を
村長が制する。

悟は続ける。

「今の西一族は昔とは違う」

「違う?」

「狩りの一族とはいえ
 人を相手にしたことは無い。
 それに加えて、
 水辺を囲う一族の中で唯一魔法を使えない」


「今この水辺で最弱の一族だ」


だから、と悟は言う。

「村長はもう少し
 村を守る決断をするべきだ」

窓の外には、子ども達の遊び場が見える。
年寄り、子ども、狩りが出来ない者、
戦えない者も多い。

もしも、杏子が東一族に通じていて
攻め入られればあっという間だ。

家から出るなと言うのも
村の内情や主要な建物の位置を知るな、と
そう言う事にもなる。

「分かった」

村長はため息をつく。

「この件について何かしらの結論は出す。
 しばらく待て」

村長の言葉に悟は頭を下げる。

「逆に問うが」

去ろうとする悟に
村長は言う。

「もし、情報が洩れているのならば
 それを本人に知らせるのは
 逆効果じゃないか?」

そうだろう、と。

「お前は、猶予を与えてきた様にも
 見えるが」

悟は答えず、再度頭を下げて
その場を立ち去る。

残された補佐役は
村長に言う。

「甘いのはどちらですかね」



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