昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

三鷹通信(160)第19回読書ミーティング(4)山崎豊子・大地の子

2016-07-21 05:19:12 | 三鷹通信
 わたしのロングセラー、H氏の推薦本は、山崎豊子「大地の子」
        
 日本人残留孤児のたどる苦難の旅路を、文化革命から日中国交回復に至る時代を背景に描く。文化大革命の嵐の中で、関東軍に置き去りにされた満州開拓団の孤児たちの苦難の道を描いた長編。
 満州事変前、中国に入植した松本家の長男・勝男は、日本の敗戦後、ソ連軍の攻撃などにより祖父と母を失い、妹とも生き別れになってしまう。
 父親は徴兵されており、満州にはいなかった。人買いにつかまるも脱走し、苦学するも日本人であることで冤罪を着せられたりする人生。
 徴兵されていた父との再会が彼の運命を大きく変えることになるのだが・・・。
 ・・・社会派&エンターテイメントであった山崎さんの傑作・・・

 <取材終了直後の山崎さんのコメント>
 「中国大陸のそこここで、自分が日本人であることも分からず、小学校にも行かせてもらえず牛馬の如く酷使されているのが本当の戦争孤児です・・・、私はこれまで色々な取材をしましたが、泣きながら取材したのは初めてです。敗戦で置き去りにされた子どもたちが、その幼い背に大人たちの罪業を一身に背負わされて『小日本鬼子』、日本帝国主義の民といじめられ耐えてきた事実、日本の現在の繁栄は戦争孤児の上に成り立っているものである事を知ってほしい。大地の子だけは私は命を懸けて書いてまいりました」

 <山崎豊子>
 
 旧制女専を卒業後、毎日新聞社に入社。学芸部に勤務し、(上司は当時学芸副部長だった井上靖)勤務のかたわら小説を書き始め、<花のれん>で第39回直木賞受賞。
 
 1963年より連載を始めた『白い巨塔』は大学病院の現実を描いた鋭い社会性で話題を呼び、映画化、数回にわたりテレビドラマ化。
 その後、『不毛地帯』、『二つの祖国』、『大地の子』の戦争3部作の後、日本航空社内の腐敗や日本航空墜落事故を扱った『沈まぬ太陽』を発表した。
 

 ・・・元、山崎豊子担当の新潮社の方に、山崎豊子さんのことを聞いた。・・・
 *1作品段ボール20箱くらい本や資料を集める。インターネットは信じない。
 *綿密に人物取材をする人でしたが、必ず複数の人をモデルにし、何人かのモデルを通じて、自分の理想とする人物像、あるいは日本人像を作り上げた。「節を曲げない、矜持を持つ」という山崎作品の主人公に共通する特徴。
 *編集者に厳しかった。「意見なき者は去れ」という口癖でした。構想段階や取材の時でも、山崎先生は自分の考えを話すと同時に、「あなたはどう思うか」と聞いてくるのが常。そういう時にきちんと意見を言うと喜ばれる。しかし、単に褒めてもあまり喜ばず、「自分が聞きたいのは、どこかつまらないところはないのかだ」と言うんです。
 *冷たい印象だがいい人。
 *「私は頭がよくない」が口癖だが、そのことを逆手にとっている印象。
 *最初に構成を作って、とりあえず話を描き始めて、直しながら進める。


 なお、「大地の子」推薦者H氏からいただいたメモによれば、「中国のこと」「民という漢字の成り立ち」についても語り合われたのでは。
 
 中国の現実は三国志、水滸伝の世界か?
 
 <民>という漢字の意味するところは?
 
 ある意味厳しい現実を突いた言葉ですね。
 早退したことが悔やまれます





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