昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説「社長、ちょっと待って下さい!」(42)挫折(5)

2017-08-13 03:41:35 | 社長、ちょっと待ってください!
 ボクは各国から集めた資料をぼんやり眺めていた。
 
 猪熊課長のアドバイスで輸入したアメリカL社の超硬チップ付きバンドソーの後が続かないのだ。
 
 このところ景気がよくなり、渡辺商会の関係する金属加工機械関連産業も忙しく、課長以下誰もボクなんかの面倒を見られる情況ではなかった。
 かといってボク自身だけで新製品を開発できるわけがなかった。
 資料や説明書きをいくら見ても、肌で感じる経験がなかった。

「おい司! 何をしているんだ!」
 専務室から出てきた市岡専務に声をかけられた。 
「・・・整理しているんですが。今まで集めた資料を・・・」
 会社の具体的な収益に寄与していないという負い目を抉りだすような専務の口調を感じて、どぎまぎして答えた。
「整理? 何をぼけたことを言っているんだ・・・」
「・・・」
「そんなことは功成り遂げた爺さまがやることだ。まわりの営業の連中の忙しさをどう見ているんだ! そんな年寄りのような仕事をしていて気にならないのか!」
「・・・自分の与えられた商品開発の仕事を・・・」
 ボクは渡辺社長から与えられたプライドを維持しようとして、口ごもった。
「何? だいたいお前は入社して何年経つんだ! 机の上でちまちま頭を使うことよりまず体を動かすことが先決だ!」
「・・・」
「お得意さまの現場を知らなきゃ・・・」
 ついにボクが抵抗する力を失ったとみるや、専務は声を鎮めて言った。
「現場を体験して、現場の悩みを知ることが先決だな。そこからキミのやるべきことの何たるかが見えてくる・・・」
「・・・」
「仕事をやるからやってみろ!」
 専務は出先の営業マンから受けた緊急の仕事をボクに回してきた。

 ─続く─





ジャンル:
小説
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 小説「社長、ちょっと待って... | トップ | 小説「社長、ちょっと待って... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

社長、ちょっと待ってください!」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL