昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説「社長、ちょっと待って下さい!」(38)挫折(1)

2017-08-09 05:26:32 | 社長、ちょっと待ってください!
 今まで幸せだったからといって、明日も幸せが自然に訪れると思ってはならない。
 ボクには社長というバックが付いていて、英語ができるし性格もいいと評価された時期はあっという間に終焉を迎えた。
  遺産と同じでそんなものはすり減っていくものだ。
 与えられた好意や配慮には、自身の力でちゃんとお返しをしなければ、遠からず請求書が送られてくることをボクは知っていなくてはならなかった。 

「マロには酷ですよ。いきなり訪問セールスなんて!」
 川田が偉そうに腰に手を置いて、クマ課長を見下すようにしゃべっている。
 一見、ボクのことを心配して言っているようだが、本心はあくまで自分のために主張しているのだ。 
 先ず、川田の下で下働きさせて教育するのが先だ、と言っているのだ。

 クマ課長から言われて、アメリカからサンプル購入した新製品、超硬チップ付きバンドソーは、岩壁のオヤジの紹介で通産省、金属材料試験所でテストした結果、従来のハイス(高速度鋼)の鋸刃では歯が立たない難削材にも有効であることが分かった。
 切削速度も上げられるというデータも得られた。
 直ちに航空機用エンジンのメーカーにサンプル納入した。難削材、インコネルだって切断できるのだ。
 評判を聞きつけた国内最大の鋸刃メーカーA社からは購入依頼が入るなど、期待の持てる滑り出しだった。
 すべて、猪熊課長や岩壁社長のアドバイスによるものだったが、ボクの初仕事ができたのだ。

 もう、川田たちから「あいつが新製品開発? 冗談じゃないよ。そんなの出来るわけがないじゃない!」
「いつまでも遊んでいるんじゃないよ!」などと言われなくても済む。
 ・・・むしろ、みんなから注目の的になるはずだ。・・・
 ボクは張り切った。

 ─続く─
        



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