昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説「社長、ちょっと待って下さい!」(13)入社当時(4)

2017-06-15 02:43:30 | 社長、ちょっと待ってください!
 渡辺商会東京本社営業部に配属されたボクは、予定より30分ほど早く会社に着いた。 新築のビルがあたかもボクを待ち望んでいるかのように輝いていた。
 ・・・これがこれからの自分の人生の活躍の場となる城か・・・
 ビルの前の通りを、通勤客を縫うようにして小柄な若い男が腰をかがめて箒と塵取りを手にていねいに掃除している。
「おはようございます・・・」
 挨拶すると、男はゴミをきちんと塵取りにおさめてからゆっくりと向き直り、リスのような目でボクを見て、「ああ、・・・」と言った。          
 ・・・デパートの紳士服売り場のハンガーから外したばかりの、寸分も毛羽なんか出ていない背広を着ている・・・
 ・・・目が細くてのっぺりした顔に薄い唇を真一文字に結んで生真面目な顔をしたこの男は、うわさで聞いている大学出の新人社員だ。屁理屈を言う嫌な奴に違いない・・・
 そんな眼つきでボクをじろじろと見た。

 株式会社渡辺商会と名の入ったスイングドアを開けると玄関ロビーの左手は応接室のようだ。
 男は廊下の突き当りまで行き、引き戸を開けていったん姿を消し、ごみを処理して戻って来た。
 そしてまだそこにたたずんでいたボクを先導するとエレベーターに乗りこんだ。
 手にはまだ箒と塵取りを持ったままだ。
 ・・・この会社では社員に掃除をさせるのか・・・
 そんなボクの思いを察知したのか、男はニヤッと笑みを浮かべた。

 狭い空間から解放され、3階の営業部の部屋に入ると人の姿は見えず、新しいペイントの香りが鼻をつき、会社の歴史に馴染んでいない浮ついた感じがした。

 ─続く─

 <好奇心コーナー>
 
 巨人移籍後、初勝利を挙げた山口俊は、ヒーローインタビューで涙を浮かべた。 昔、川上ジャイアンツの頃ファンだったボクは今では巨人ファンではない。
 そんなボクも6回まで無安打で押さえていたのに交代させられた山口の心情を思いやって、ついつい最後まで見てしまった。よかったね、山口俊くん!
 

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小説
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