手も足も出る技術士「平ねぎ」の無為徒食日記

心にうつりゆく由なし事を綴っています。

上下動による破壊メカニズム(3)

2017-07-12 08:46:29 | 耐震構造

上下動による破壊メカニズム(2)の続きです。

■ 上下動破壊

兵庫県南部地震は破壊のデパートのようであり、さまざまな破壊形態が見られました。
中でも上下動の寄与と思われる破壊が多発したのはショッキングなできごとでした。
従来の耐震設計では上下動の作用を無視してきたからです。
この地震をきっかけに「上下動をまじめに考えよう」という機運が興り上下動に関する論文が数多く書かれました。
しかし、そのうねりも長く続くことなく2~3年で廃れてしまいました。
なぜ廃れたか?といえば、二つ理由があると思います。
まず第一に、上下動は水平動に比べ取り扱いが格段に難しいことが挙げられます。
上下動は高周波の現象であるため実験しにくく、
また、高周波成分を含む観測データは既設地震計では得られないことから、地震応答解析の適用も困難です。
第二に、耐震基準を作ってきた主流派たちが快く思わなかったことも大きいと思われます。
主流派とは、土木の分野では土研グループ(川島学派)です。
彼らは上下動の寄与を絶対に認めません。
彼らが行ってきた仕事が否定されることになるので認めたくないのでしょう。
そのようなわけで上下動は今ではすっかり忘れ去られています。

学会では無視されているけれど上下動は耐震設計上重要な問題であると以前から思っていたことと、
波動論で説明できることに最近気づいたので、
論文にして土木学会で発表した次第です。

 ■ 二つのアプローチ

上下動を考えるとき二つのアプローチがあります。
「振動論的アプローチ」と「波動論的アプローチ」です。
振動論的アプローチとは、例えばつぎのようなものです。

図1は重錘を供試体の上に載せて下から突き上げる実験装置です。
1質点系の加振実験であり、通常の水平加振を鉛直に置き換えただけです。
これでは上下動の本質に迫ることはできないと思います。

■ 上下動の本質とはなにか?

一言で言えば「上下動は高周波現象である」に尽きると思います。
振動論的アプローチでは高周波現象を正しく評価できません。
大雑把に言うと、上下動の破壊は1000Hzを超える周波数領域における現象です。
この周波数領域では振動論の適用は無理です。
振動論の適用可能範囲はせいぜい数10Hzまでです。
また、既設地震計では0.01sでサンプリングされているため100Hz以上の高周波成分は記録できません。

■ 波動論的アプローチ

波動論的アプローチでなければ正しい説明ができないのですが、
既往の論文には現象を明快に説明したものが見当たりません。
私が参考にした文献は、物理学者戸田盛和先生のソリトンに関する論文1)です。
参考文献の10~11頁に非線形波動による構造物破壊の可能性が示唆されています。 

■ 反射が重要 

上下動が原因であるにしても、なぜ段落し部で破壊するのでしょう?
段落しより上側が同じ配筋であればどこで壊れてもよいはずです。
なぜ段落し部が選択的に壊れるのか?それは偶然なのか?
これを説明するのが反射です。
海の波が防波堤にぶつかると波が立って壁面で波高が高くなります。
固体の応力波においても同じことが言えます。
引張下降波について考えると、段落し部ではインピーダンス比は1.0より大きくなります。
引張応力は鉄筋を媒質として伝播するので、段落し部では鉄筋が下向きに増加し、インピーダンスが1.0より大きくなるのです。
そのため、引張下降波と反射した引張上昇波は同位相で足し算され、局所的に引張応力が大きくなります。
そして、合成波が鉄筋の降伏応力を超えていれば降伏し塑性変形し、コンクリートは破断し水平破断面ができます。
反射を考えればうまく説明できます。

■ 断面積が変化する場合

断面積が変化するときの反射率はつぎのようになります。 

断面積が変化する箇所では、インピーダンス比が1.0であっても反射が起きます。
下図では、橋脚の横梁の位置で断面積が急増しているので、s=1.0、p>1.0となり、同位相の反射が生じます。
地下から上昇してきた圧縮応力波と断面変化位置で生じた反射波が合成され局所的に大きな圧縮応力になって、
それがコンクリートを圧壊させた、と考えられます。

【参考文献】

1) 戸田盛和:ソリトンとは-付・非線形の破壊現象-,数理科学No.260,1985,2

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