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企業における人件費支払能力測定の実務:最終回―K社の中期経営計画の策定―

2017年02月22日 10時19分17秒 | 経営
企業における人件費支払能力測定の実務:最終回
―K社の中期経営計画の策定―
 今回はいよいよ経営計画の検討です。まず5年後の2大目標(付加価値生産性と自己資本比率)を置き、その達成のための各指標の計画を「毎年伸び率一定を原則に」策定するという事で、その第1年度を来年度計画という事にしたいともいます。

 先ず2大目標ですが、付加価値生産性は5年後25パーセント増、9.332千円→11.198千円)年率換算4.6%増、と決めました。自己資本比率は現状すでに73.4%の水準にあり、当面この水準を維持できれば経営基盤は問題ないと判断、現状水準維持としました。
 この年率伸び率を前提に計画を進めてみます。
 <売上高>イメージの湧き易いのは売上高です。まず売り上げの伸びの確保を前提に、付加価値生産性の伸びと同じ、年4.6%増としてみました。
(来年度売上高13232.18百万円)

<付加価値率>製造業の標準と言われる20%を超え20.4%まで来ていますが、さらなる向上(年0.1%ポイント)を目指して初年度20.5%とします。
 (5年後付加価値額3,306.1百万円、5年後付加価値生産性目標11.198百万円で割ると295人(現在277人)の従業員が可能になるので、成長目標はクリア可能です。)

<従業員数>過去5年景気回復で18人増員しましたが、今後は年1人とし、先ず、正規希望の非正規の正規化を優先して考えるとしました。
 (来年度従業員278人、1人当たり売上高47,597千円、付加価値生産性9.757千円)

<有形固定資産:設備投資計画>設備投資の積極化は必須と考え5年後の簿価は30%増、年率5.4%としました。減価償却率は変わらずと考えました。(来年度後有形固定資産2519百万円、減価償却費508.7百万円、設備(資本)生産性1.1円、資本装備率9.1百万円)

<総資本回転率>設備投資は意欲的に考えましたが、金融情勢から企業間信用の圧縮、JIT・リーン生産方式の改善などで、総資本回転率は現状維持(1.55回)で努力することとしました。 (来年度総資本=総資産8536.8百万円)

<自己資本比率>自己資本比率は2大目標の1つで73.4%、現状維持と決めています。資本金は当分現状のままです。
(来年度自己資本6266.0百万円、資本金300百万円、負債2270.8百万円)

<有利子負債、金融費用>総資本と自己資本が出たので負債金額が決まります。有利子負債比率は現状程度(50%)とし、金利水準は、低利融資への借り換えも考え3%程度を予想しました。
(来年度有利子負債1135.4百万円、金融費用は年34.1百万円)

<課税前利益、社外流出>課税前利益は、今前年度自己資本から決算後の社外流出(法人税等、役員賞与、配当)を差し引き、それが、来年度自己資本額に達するにはいくら必要か、という事で算出します。来年度自己資本+今年度社外流出-今年度自己資本です。
役員賞与は2015年度の20百万円を踏襲、配当率は当面15%で据え置くこととします。
決算後社外に流出するのは、法人税等、役員賞与、配当金です。法人税等で課税前利益の40%の負担(社外流出)を見込みます。
(課税前利益は467.0百万円=来年度自己資本-今年度自己資本+今年度社外流出:
今年度社外流出は、役員賞与10百万円、配当45百万円、法人税等91.2百万円)

<賃借料と租税公課>今年度実績を勘案して見込みます。
(賃借料205百万円、租税公課60百万円)
以上で計算は終わりです。
<一覧表>

 経営計画数値表-1が実数値、右側の経営計画数値表-2が比率表で実績値のフォーマットと同じものです。  
計算は計画第1年度、「実数値」、「比率」、それに下の「社外流出」のそれぞれに、当初の推定値と「改定後」と2つあります。

 最初の計画は2大目標に忠実にやりました。ところが問題が発生しました。経営計画数値表-1の人件費と利益のところを見てください。利益が大幅に伸び、人件費は減っています。経営計画数値表-2の方の「労働分配率」(付加価値構成比の人件費の所)を見てください。53%です(今期末は60.8%)。大きく下がっています。
 
 これまでの路線を中心に延長していくと、どうもまずいようです。労働分配率を再検討し引き上げないと労使合意はないでしょう。やはり、円安好況の中で、人件費を抑制気味にしてきたことの見直しが必要のようです。

 そこで、財務体質の上昇路線を一服、労働分配率改善、人件費枠増大を図るために、自己資本比率の目標を抑えめにし、70%台確保で当面善しとし、目標を、今年度の73.4%から、来年度は71%に引き下げたのが「改定後」の数字です。5年後までには73.4%に戻すことを第2年度以降の計画で考えることとしました。
 その結果、労働分配率は60.4%に回復、総額人件費は4.4%の増額が可能になり、1人当たり人件費も4.0%の改善が可能になります。

 これでも課税前利益の伸び率の方が15.0%と大きくなっています。
 勿論、現実が計画数値通りにいくとは限りませんが、全体的な傾向から見て、資本蓄積を多少遅らせ、人件費への配分の時期かもしれません。
 付加価値率向上や、総資本回転率の改善で頑張れば、自己資本比率のさらなる向上も可能でしょう。検討の余地は種々あります。

 こうした「数字をベースにした」総額人件費の策定(労働分配率の決定)についての労使の納得のいく論議が出来れば、その論議の到達点が、わが社の「成長と体質改善が最適値で両立する」人件費支払能力という事になるのでしょう。(この項終わり)
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 この「人件費支払能力測定システムは」付加価値分析を使った「最も簡便な計算」で、目的をはずさない計算ができる方式です。ぜひ試みてください。
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