tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

格差社会化と所得税の累進税率

2017年07月04日 15時34分41秒 | 社会
格差社会化と所得税の累進税率
 福祉社会とか福祉国家という概念は、本来次のようなものです。
・経済活動を成り行きに任せれば、金持ちは金の力で益々金持ちになり、貧富の差がはなはだしい格差社会になっていくことが分かってきた。

・その結果は富の偏在で経済活動が巧く循環しなくなり恐慌が起きたり、場合によっては、暴動や革命が起き資本主義は破綻する。

・ならば、国の力で富の偏在を是正するようなシステムを作り、「自由な経済活動」と「平等な所得分配」の間の適切な所得配分を実現し、より良い社会にしよう。

 つまりこのシリーズの当初に置いた前提、対立する「自由」と「平等」の中間のどこかにある「正義」(justice)を国の介入で実現しようというのが「福祉社会」の原点です。

 これに対して、経済活動を自由にしておいても、いわゆる「トリクルダウン仮説」で金持ちの富は下の層に「滴り落ちていく」という考え方があります。
 中国でも「大人宴を張れば、その徳、犬猫に及ぶ」というのがあるそうで、大宴会の余った食い物は犬や猫にまで振る舞われるというものです。

 然し最近の経済実態の中で、「トリクルダウン仮説」は否定されたようです。食べ物は余れば誰かの口に入るかもしれませんが、マネーは「多々ますます弁ず」で余らないからでしょうか。

 いずれにしても、資本主義が社会主義にすり寄る形の「福祉社会」化で資本主義が生き延びているのが現実でしょう。

 そのための手段の主要なものが、「所得税の累進課税」と「相続税」でしょう。という事で、ここではちょっと我が国の所得税の累進課税の在り方が、どんな具合に変化してきているか見てみましょう。
 財務省の発表している資料からです。ここでは、最も解り易い最高税率(所得税と住民税を合わせた最高税率)の推移を見てみました。
1984年  88%
1987年  78%
1988年  76%
1989年  65%
1999年  50%
2015年  55%

 随分と最高税率は下がってきています。松下幸之助さんが、「私は収入も多いけど、9割は税金で払ってますよ」なとと言っていたのは昔の話、アメリカでスタグフレーション脱出のために行われたレーガン税制(法人税、所得税の大幅引き下げ)に倣ったそうですが、(アメリカは70%→50%)、レーガン税制の経済効果には否定的な検証が多いようです。

 日本では今また所得税累進税率の再検討(最高税率の引き上げ)の意見が出てきていますが、格差社会を嫌う日本です。税制の在り方にも議論の余地はありそうです。

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