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同一労働・同一賃金:政府案の不思議

2017年02月23日 15時02分57秒 | 労働
同一労働・同一賃金:政府案の不思議
 安倍政権は、同一労働・同一賃金に大変熱心のようです。同一労働・同一賃金のガイドライン(案)まで作って見せ、早期の実現をと言っているようですが、どうもあの内容では、同一労働・同一賃金でもなんでもない奇妙なものが法律で強制されるようなことになりそうで、心配しています。

 政府の検討会の報告では、まず欧米を参考にして、それを日本に合ったように適用すると書いてありますが、その中身は、「それぞれの企業内で」正社員とパートの待遇を同一労働・同一賃金にするという事で、単に同一企業内だけのことです。

 問題はまず、「隣同士の会社でも会社が違えば、同一労働のパートでも、賃金は違っていい」という考え方です。
 パートの賃金は地域のマーケットで決まります。しかし、正社員の賃金は、同じ地域にあっても、各社各様です。高賃金企業に入って正社員並みの仕事をしているパートには正社員並みに払えというのなら、正社員にするのが本筋でしょう。
 パートの時給は、まさに地域別の同一労働・同一賃金です。どちらが本来の同一労働・同一賃金なのでしょうか。

 ガイドライン(案)では、賃金(基本給)の決め方について、経験・能力で決める、成果で決める、勤続で決める、の3つのケースを上げて、それぞれにOKのケース、ダメのケースを例示していますが、日本企業は殆ど皆、これらの混合で決めています。ガイドライン(案)は現実に役に立つような指針になりうるのでしょうか。

 政府の検討会では、同一労働・同一賃金に取り組むことで、非正規をなくし、すべて社員にする必要があるといっています。戦後の日本の経営者は、確かに戦前からの身分制を廃し、社員1本にして労働者の生活の安定に配慮しました。
 十分な食糧もない時代、これは素晴らしい発想だったと思います。戦後日本の経済復興から成長のプロセスに大きな役割を果たしたと思っています。

 しかし今、日本は豊かな社会です。食うために仕事がすべて、収入のためなら長時間労働も、過酷な労働も厭わずといった時代ではありません。
 労働時間は短縮しよう、生活を楽しもう、ワーク・ライフバランスは各人各様という社会です。
 正社員で会社に縛られたくない、働きたい時だけ、自由に働きたいという人は増えています。今後ますます増加する高齢者の多くもそうでしょう。

 正規を望まず、非正規で良しとする労働力は現状でも2割を超えるでしょう(もちろん非正規37%は問題です)。
 非正規で働くことを望む人たちには、地域の労働市場をより良いものにしていくことで対応すべきでしょう。

 日本は、伝統的に、企業内賃金と、市場賃金を適切に使い分けることで、雇用の安定発展を実現し、世界最低の失業率水準を実現してきた国です。
 本当に必要な事は「正規を希望する人は教育訓練をし正規雇用にする」という労使の取り組み努力に任せる事でしょう。これは、労使に立派にやってもらいましょう。

 どう考えても合理性も納得性もない、中身も異様な「同一労働・同一賃金」を政府が労使を押しのけ、法律でやろうなどと言う発想がどうして出てくるのか不思議でなません。

 因みに、今春闘向けの経団連の「経労委報告」、連合の「連合白書」は、非正規の正規化は重要課題として取り上げていますが、同一労働・同一賃金は取り上げていません。
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