tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2018春闘も政府主導?

2017年10月27日 14時22分01秒 | 労働
2018春闘も政府主導?
 先週、連合が中央執行委員会で 2018春闘の要求を2%と決めたことは書きましたが、また今年のそれを追いかけるように、政府が3%の賃上げを目指すべきだと言いだしています。

 安倍さんは、これからは「謙虚に」などといっていますが、政府が賃上げに介入するのは謙虚どころか、まさに 「越境発言」です。
 本来、賃金問題は労使の専権事項で、歴史的に見ても、アメリカで嘗てケネディ大統領が鉄鋼労組の無理な賃上げ要求に対し、経済安定のために介入し、世界中で話題になった例ぐらいしかありません。

 賃金を上げろというのだから「みんな喜ぶだろう」と思っての発言なのでしょうが、それなら、勝手に言うのではなくて、政労使の懇談会などを作って、当事者の意見を十分聞き、その上で意見が一致するようにお膳立てをするのが政府の役割でしょう。

 そもそも賃金引き上げが可能になる条件は何かといえば、生産性の上昇です。それも、為替レートの安定を必要条件として、生産性上昇によって産業企業で増えた付加価値(その合計が経済成長)を、それぞれの企業の労使が、分け合った結果が賃上げなのです。

 付加価値は労使が交渉して、賃金と利益に分けるのですが、それを賃金の上げ方だけを政府が勝手に発言するのですから、全く理屈も常識も通らない行動です。

 政府にしてみれば、このところ、見ていると利益の方が増え過ぎているから、もっと賃金を上げろと言ってもいいだろうという事なのでしょうが、それなら去年の様に利益が下がった時は賃金をあまり上げるなというのかと思うとそうではありません。

 多分、賃金を上げれば消費が増えて、景気が良くなるし、物価上昇も2%になるだろうという思惑の結果の発言でしょう。
 しかし、この所の日本経済を見ても、賃上げで消費が増えた形跡はありませんし( 平均消費性向は下がっています)、 物価が2%も上がったら年金生活者も、サラリーマン家庭も困るでしょう。

 今の経済情勢(世界も日本も)を見ていきますと、消費不振の原因は別の所にあるようです。お金があっても、賃金が上がっても、消費者が消費を控えて、貯蓄を増やす原因を、政府は解っていないのでしょうか。

 消費不振の最大の原因は、将来不安でしょう。結婚して子育て不安、年金生活者の年金実質目減り不安、 ゼロ金利で貯蓄が全く増えない現実。その背後には、日本の格差社会化があります。格差社会化は歴史的に見ても消費不振につながっています。

 こうした原因に、国民が納得するような根本政策がなく(今度発表するそうですが、結果は今迄の繰返しでしょう)、その時々の人気取りのパッチワークばかりが目立ちます。

 政府のやるべきことは、こうした日本経済の構造問題を、国民に分かるように「丁寧」に説明して、例え今日苦い薬を飲んでも、明日は日本経済が一層の健康体になるというような本格的な処方箋を、書くことでしょう。

 まあ、政府が出来なくても、今迄の実績を見れば、労使が真面目な努力で、日本経済を健全な方向に育てて来ています。
 政府は自分のやるべきことが出来ないのなら、余計な世話など焼かない方が、民間経済は健全な方向に動くような気がしています。

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